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公衆衛生学の専門家から学ぶ「コロナ対策ケーススタディ」

 コロナ禍において、子どもたちの成長機会である体験活動を再開するためのヒントを探るオンライントークイベントが開催されました。このイベントは、おかやま親子応援プロジェクトの一環として開催され、岡山大学土居弘幸教授による新型コロナウイルスの現状についての説明や、岡山県で子どもたちに体験活動の場を提供しているYMCAせとうち、岡山市子どもセンター、だっぴの3団体からコロナ禍での実施事例の共有を行いました。

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公衆衛生学の専門家から学ぶ「コロナ対策ケーススタディ」

イベント概要


おかやま親子応援プロジェクト
公衆衛生学の専門家から学ぶ「コロナ対策ケーススタディ」
 主催:おかやま親子応援プロジェクト 
 日時:2020年10月5日(月)15時〜17時
 会場:ハッシュタグ、YouTube Live配信
 講師:土居弘幸教授(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 特命教授)
 司会:サンサポートおかやま ボウズ満恵

新型コロナウイルス感染動向


 ジョンズ・ホプキンズ大学の発表によると2020年8月2日には全世界で計1800万人、10月5日に3500万人の感染者が観測されました。新型コロナウイルスの大きな特徴として、感染力がとても強く、発症後症状が強く現れる時期よりも発症前後の感染力が高いことがあげられます。つまり無症状感染者も気づかぬうちに強い感染力を持っているということです。
 
 屋外では2m離れると飛沫感染はしないとされていますが、密室では30分程度飛沫の感染力が保持されます。また5分間の会話は、1度の咳と同じ飛沫量に相当するため、3密を避けることが飛沫感染対策につながります。私たちができる具体的な感染対策は以下の通りです。
・マスクをつける
・アルコール、石鹸での手指の消毒と洗浄
・次亜塩素酸ナトリウム(ハイターなどの塩素系漂白剤)で物の消毒
・換気を行う。窓が少ない場合は扇風機やサーキュレーターを活用して、空気の流れを作ることで効率的に換気ができる。

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ワクチン開発の現状


 世界各国でワクチンの開発が急がれており、特にアメリカやイギリスでは完成に近づいています。しかしながらそれらのワクチンがどの程度の効力や毒性を持つのかはまだ定かではありません。
 既に日本ではコロナが流行し、感染を抑えるための知見が集まってきたにも関わらず、クライシスマネジメント(どのようにこの危機を対処するかの計画や対応)がうまくできていません。きちんとしたリスクコミュニケーション(社会を取り巻くリスクに関する正確な情報を、行政、専門家、企業、市民などのステークホルダーである関係主体間で共有し、相互に意思疎通を図ること)をとり、効果的な感染対策を行っていくが肝要だと考えます。

事例報告①公益財団法人YMCAせとうち:野外活動

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低学年野外活動友の会 担当 白鳥雅人さん
 YMCAせとうちではキャンプや野外活動などのアクティビティの開催を通じ、五感を通じた様々な自然体験の機会を提供しています。2020年度は計15回(日帰り11、宿泊1、ファミリー3)のキャンプを実施し、合計550人の方々に参加していただきました。コロナの状況を鑑みて、例年よりも日帰りキャンプに重きを置いて開催しました。
 キャンプ開催に当たってYMCAせとうちが留意した事柄は以下の通りです。
・宿泊キャンプでは10人部屋に4人で宿泊
・ファミリーキャンプは家族でバンガローに宿泊
・基本的にはマスクを着用し(就寝時も)屋外で活動
・手洗いうがい
・健康状態が良好な場合のみ参加できる
・バス乗車の際は検温と換気を行い、90分ごとに下車して休憩を取る
・食事のたびに検温(既存ルール)
・加湿器の設置

土居教授からのコメント
もし感染者がいた場合、これらを全て守ったとしても必ず感染しないわけではありません。リスクを低くすることはできるが、0にすることは不可能です。現在(10月5日)の岡山の感染状況であれば、これらのことに留意しキャンプ開催を頑張って欲しいと思います。
もし参加者に感染者が出た場合は全ての参加者に連絡し、保健所に相談するなどの対処が必要です。

事例報告②NPO法人岡山市子どもセンター:舞台芸術鑑賞

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代表理事 美咲美佐子さん
 岡山市子どもセンターでは、子どもに喜びと新しい発見を与えたいという想いから親子での舞台芸術鑑賞会を行っています。
 公益社団法人全国公立文化施設協会や岡山市民会館の感染予防ガイドラインを参考に、2020年2月から休止していた定例鑑賞会を2020年9月に再開しました。感染予防対策の内容を事前に共有し、スタッフのみならず来場者も含め全員で協力し対策を行いました。
具体的な感染予防対策の内容(一部)は以下の通りです。
・検温や手指消毒
・定員の縮小
・換気
・演者と観客の距離を取る

今後の課題としては、大きな会場でより多くの来場者がいる公演での対策、コロナ感染の疑いや感染が確認された時のマニュアルづくりが挙げられました。

土居教授からのコメント
このルールやガイドラインをどれだけ遵守できるかが重要になります。加えて常時スタッフ同士で話し合いを重ね、ルールや工夫を改善し続けていくことも大事です。
入退場時は人の流れが滞らないよう、動線の指示を行うとよいでしょう。

事例報告③NPO法人だっぴ:ワークショップ

事務局長 森分志学さん (役職はイベント当時のものです)

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 だっぴは自分の生き方について考える若者と、既に岡山で自分の在り方を見つけて 魅力的に生きている人との出会いを提供し、様々な価値観や選択肢があることを若者に知ってもらう活動を行っています。コロナ禍によりオンラインでの開催をしていましたが、2020年8月頃より様々な工夫をしながら対面でワークショップを開催してきました。だっぴのワークショップは行政、学校と協力して行うことが主のため、3者の合意のもと開催時の留意事項を以下の通り定めました。
・グループの人数を減らす
・椅子の間隔を空ける
・密集しないよう会場をいくつかに分散
・換気、消毒を行う
・学校外からの大人の参加者にチェックシートの提出(発熱していないか、14日以内に感染者が多い地域に行っていないか等)を義務化
・60代以上の方のご参加をできるだけ避ける
・マスクの着用

冬場に体育館でワークショップを開催する場合は寒さが厳しいため、換気は難しいのではないかと懸念しています。

土居教授からのコメント
感染者の報告がない地域で、その地域の方のみの参加に限ればかなりリスクを下げることができます。換気の代替案はなかなか存在しないため、換気が厳しいようであれば別の季節に開催することも検討できるとよいでしょう。


質疑応答


Q. 学校で感染者が出た場合、差別やいじめを起こさない教育のヒントはありますか?
A. あまり事例が共有されていないので、共有制度ができるように教育委員会を通し文科省に要望を出してみてはどうでしょう。教員に差別意識がないことを生徒に態度で伝えていってください。

Q. 寒い時期に特に有効な対策はありますか?
A. 外した後のマスクの管理、消毒と手洗い、インフルエンザワクチンを接種することです。

Q. 感染の疑いがあった場合のファーストアクションは何をすればよいですか?
A. かかりつけ医、保健所に相談しましょう。

Q. 理想的な行政の対策にはどんなものがありますか?
A. 現在は各患者の医療情報が分散されています。行政、別々の医師も同じデータにアクセスできるような情報改革が行われれば理想的だと考えます。

閉会挨拶


NPO法人岡山NPOセンター 代表理事 石原達也 

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 感染者一人一人の個人情報、人権への配慮と、地域全体を守るための情報共有を同時に行うことが肝要であると感じました。これからもコロナ禍が続きそうなのでリアルとオンラインをうまく使いながら活動を続けていきます。対面活動の場合は、感染対策内容への理解と協力を全員に求めることも大事だと感じました。

画像は全ておかやま親子応援プロジェクトYouTubeチャンネルから引用
引用元:https://youtu.be/JFShsGFiM5A