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「住まい支援システム」を考える研修会が行われました

3月5日(火)に「北九州市における『住まい支援システム』を考える研修会」が抱樸の主催で行われました。

抱樸では、2022年11月より、厚生労働省受託事業として、「地域共生づくりのための『住まい支援システム』構築に関する調査研究事業に係る北九州市における『住まい支援システム』モデル事業」を行っています。

住まい支援システムとは?
近年、孤立・孤独を背景として複合的な課題を抱える生活困窮者等への対応が課題となっています。
例えば、社会構造の変化により、単身世帯が増加する中で、「住まい」に課題を抱える独居の生活困窮者や高齢者が増えています。また、2040年には「団塊ジュニア世代」が65歳以上になることから、独居困窮者・高齢者はさらに増加することが見込まれます。

このような対象者については、単に「住む場所」を提供するだけでなく、行政の関係部局・民間の福祉サービス事業者・不動産事業者などが連携し、「社会とつながりながら、安心して生活を営むことができる住まい」の提供を目指すことが必要です。

「住まい支援システム」とは、住まいに課題を抱える者が、個々の状況に応じ必要な見守りなど地域との関わりを持ちながら、地域の中で安心して暮らしていけるような「地域とつながりのある住まい」を確保する仕組みのことをいいます。

住まい支援システムの現状
今回の研修会では、大月敏雄教授(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻)による「包括的な居住支援体制」についての基調講演と、抱樸による「北九州市における住まい支援センターの取り組み」の報告会にあわせて、岩橋ひろし氏(北九州市居住支援法人 連絡協議会 副会長・一般社団法人 家財整理相談窓口 理事)と田邊裕則氏(ナップ賃貸保証会社 常務取締役)と藤原一行氏(公益社団法人 福岡県宅地建物取引業協会 北九州支部 支部長)による「多業種連携における居住支援の仕組み」についてのパネルディスカッションも行われました。

大月教授は基調講演にて「超高齢化社会において、居住支援は誰にとっても他人事じゃない」と指摘したうえで、制度の隙間におちた住宅確保用配慮者について、包括的に支援していく必要性を訴えました。また、居住支援における公営住宅の空き家などの活用の可能性を示唆しました。

抱樸による報告会では、住まい支援の対象者が高齢者に限らず多世代にわたることが明らかになりました。また、相談者の主訴は「住まいの相談」であるが、その背景に経済的困窮や病気など複数の課題や特性があり、住まいの安定のためには居住支援に限らず包括的な支援が必要なことが明らかにな
りました。

パネルディスカッションでは多業種連携の実例として、岩橋氏による家財整理業者の居住支援の報告と、田邊氏による賃貸保証会社の居住支援の報告がありました。パネルディスカッションを受けて、藤原氏からは「現在、賃貸の申し込みは書類だけで審査しているが、本当は直接面談して、その人が抱える問題を解決する方法をみんなで考えられるようにしたい」という前向きなご意見をいただきました。

住まい支援システムのこれから
今回の研修を通じて、大月教授は「昔も今も(住宅確保要配慮者の問題は)住宅さえあれば解決する問題じゃない。賃貸保証をつけたり、見守りをつけたりすることで、家を借りられるようになることもある。住宅に社会資源をどう絡ませるかが大事」と多機関が連携して、住まいシステムを調整することの必要性を訴えました。

また、奥田理事長は「かつては、定年する時に持ち家などある程度の資産があるはずだった。年金など日本の社会保障制度はそれを前提としているが、その前提が崩れている。『(本人は)安心して入居できる。(貸主は)安心して貸せる』仕組みが必要である」と述べました。

「住まい支援システム」はまだモデル事業の段階ではありますが、不動産事業者や大家さんのニーズを把握し、支援事例や支援策を適切に情報発信していくことで、今後より多くの自治体で活用されるように多機関と連携しながら励んでまいります。


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