見出し画像

支援付き住宅の全国展開 認定NPO法人釜ヶ崎支援機構の状況

「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援を」から始まり、その後もコロナ緊急事業から生活困窮者全般への支援と発展していった「支援付き住宅の全国展開」。各地で担っていくパートナー団体の一つであり、秋田県を中心に活動する、認定NPO法人釜ヶ崎支援機構

の小林さんにお話しをお伺いしました。


ーそれではまず認定NPO法人釜ヶ崎支援機構がどのような支援事業をしていらっしゃるか教えていただけますか?

小林:認定NPO法人釜ヶ崎支援機構はざっくりと言いますと生活困窮状態の方・生活保護を受けてらっしゃる方・ホームレス状態の方への支援活動をしています。活動内容に関しましては、主に就労支援・生活支援・またホームレス状態の方には生活保護に繋ぐ自立支援などを中心に展開しています。
私個人としましては、2019年度より始まった大阪市西成区の委託事業の「サービスハブ事業」の相談員としても活動しております。私たちが呼ぶサービスハブ事業は学術的な意味合いでのサービスハブと違って、釜ヶ崎で活動しているいろんな支援団体同士と連携して相談者を適切な支援団体へ速やかに繋げるという意味でのハブ、また生活保護を受けた方のその後の生活をサポートし自立生活へ繋げるハブという意味で定義しています。
野宿生活を経て生活保護に繋がり居宅での生活が始まったとしても、その後の生活がなかなかうまくいかない方が多くいらっしゃいます。私が釜ヶ崎支援機構に入る以前、別の団体でホームレス支援をしていた時に生活保護に繋がった後に関係性が切れてしまい、気付いたら自宅の中で亡くなって見つかることなどが数度あり、福祉とはその人が幸せに生きていくための制度のはずが、生活保護を受け住まいを得るだけではなかなか幸せを感じにくかったりつかみにくいものだったりするので、その後押しをしています。


ー現在何部屋の支援付き住宅を運営されているのでしょうか?またどういった状況の方が利用されているのでしょうか?


小林:釜ヶ崎支援機構では西成区内に22室運営していて、現在17部屋が稼働しています。大阪では生活保護を受けることが可能な部屋はたくさん余っているので、入居者の特徴に関しては多分他の地域・団体さんと違って少し特殊かもしれません。
住まいがなくて大阪にたどり着いても、西成にはいわゆるゼロゼロ物件と呼ばれる敷金礼金なし、保証人・保証会社不要の物件がたくさんありますので、生活保護を前提で部屋を探すことは意外と誰でも簡単にできます。ですが、その上でなぜ私たちが支援付き住宅事業を始めたのかといいますと、まず特に西成の中にある生活保護の方向けの住まいというのは、いわゆる元々簡易宿所をやっていたところが多いんです。そういった場所は狭小な部屋で、大体3、4畳くらいで、が共同だったりします。今の50代・60代以上の方と比べて今の30代くらいまでの方は、核家族化が進んだ時代に生まれ育ったため共同生活の経験が浅い方が多く、プライバシーを重要視する方が多い印象だったので、そういった方へ向けて今回分けていただいたお金で部屋の中に風呂・トイレ・台所があるワンルームアパートを借り上げました。


ー支援付き住宅を運営してよかったことや、気づいたことなどありましたら教えてください。


小林:今までなかなか答えられなかった若者のニーズに応えられるようになったことと、私たちは課題をお持ちで一人暮らしを維持するのが難しい方へ向けて「見守り」として訪問を実施していますが、サブリースという形式上、賃借人は入居者さんではなく私たちになりますので、有事の際はすぐに部屋の中まで入ることができるなど緊急時の対応がしやすくなったことは支援付き住宅の利点だと思います。
また私たちの団体では生活保護を受けたくない方へ向けて最大4ヶ月間家賃無料で、その間の就職活動を応援する就労支援プランを作りました。4ヶ月間必要な食料を支給し家賃・光熱費もこちらで補償して、就職活動に必要な交通費なども実費支給します。さらに仕事が決まった場合は給料が入るまでの間、交通費と昼食代を現金支給しています。
ワンルームにリソースを割いたことで新しい課題が見つかることもありました。現在私たちの支援付き住宅では若年層を中心に利用してもらっていますが、平均寿命で考えてあと4、50年生きると前提すると、社会と上手に付き合っていくスキルを身につけていかないとこの先また苦労してしまうのではと考え、釜ヶ崎支援機構で初めて建物を買ってシェアハウスを始めました。やはり他人との繋がりがない方がワンルームで単身生活すると塞ぎ込んでしまうこともあるので、私たちはそういった方へ向けて新たなる試みを始めています。



ー支援付き住宅を含めた釜ヶ崎支援機構の支援の現場や当事者さんにコロナ禍の影響はどのようにありましたか?


小林:2020年の3月から6月にかけて特にコロナの影響は大きかったと思っています。それ以降も一定の影響はあったと思うのですが、過去のリーマンショックやバブルの崩壊の頃と比べると意外と想定したような影響はなかったという感覚です。
コロナの影響で失業された方はほぼいらっしゃらなかったのですが、非正規雇用でギリギリの生活をしていた方がコロナに感染してしまい、しばらく仕事を休まないといけなくなって崩れる、というような方は一定数いらっしゃいます。またコロナ禍で気が滅入るような情報があふれた社会でいろいろな我慢をしながら生活していかなければならず、その緊張感の中でギリギリご自分で生活を維持してたけども、その社会のムードが緩まったところで緊張の糸が切れてしまったかのように、メンタルを崩してしまい生活が維持できなくなり失業に繋がった方やご自分で退職された方が多くいらっしゃいました。ですから直接的にコロナで退職というよりは、コロナによっていろんな歯車が狂ってしまって私たちのところへたどり着く方が多かったと思います。


ー最後に支援活動を通じて何かを伝えたいことや、寄付者の方へ向けてメッセージがありましたらお願いします。


小林:西成では生活保護を受けるための部屋が見つけやすいと言いましたが、それでも課題が多くて部屋選びが難しい方はいらっしゃるので、支援付き住宅を始めたことでそういった方が私たちの支援に繋がりやすくなったことに大きな意義を感じています。また本来の使い方ではないのですが、例えば釜ヶ崎で活動する他の団体の職員とその同居されている方などがコロナの陽性者になったり濃厚接触者になった場合の緊急的な隔離シェルターとして使ってもらうことや、生活保護を受けることができない外国籍の方へのシェルター的な使い方など、有事の際や支援制度に漏れてしまう方への受け皿として機能する拡張性のある事業だと感じています。
西成にはコロナ関係なくいつだって困窮してる人がいるのが現状ですが、社会がコロナ禍を経験していく中で「自分が頑張っていないから困窮している」という自己責任論ではなく、「いざ苦しい時には助けを求めていいんだ」というような報道がたくさんあったので、今後また何か有事の際に困窮する方々にとっての啓発活動みたいな機能があったと思います。
コロナ禍に加え円安や物価・燃料費高騰で日本の未来が心配だというような空気感が漂っていますが、もしそうなると日本の社会保障制度の締め付けがまた厳しくなってきてしまうだろうと思っています。でもそういった時に苦しい人を支えるセーフティネットがあり、支援を受けた結果、またその人の笑顔が増えて幸せになっていくお手伝いをしていきたいと思いますし、この活動がもっと社会に知られてほしいと願っています。これからも引き続き抱樸さんをはじめ支援に取り組む全国の団体へのお力添えをお願い申し上げます。


ー本日はお忙しい中、貴重なお話どうもありがとうございました。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。