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支援付き住宅 大阪釜ヶ崎の状況(釜ヶ崎支援機構)

抱樸が初のクラウドファンディングに挑戦した「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援」の中心事業「支援付き住宅の全国展開」において、各地で担っていくパートナー団体の一つであり、大阪府大阪市釜ヶ崎で活動をする NPO法人釜ヶ崎支援機構の松本さん、小林さんにお話を伺いました。

釜ヶ崎での住居付き支援の現状

松本:
釜ヶ崎では元々、保証人や敷金礼金なしで入れるアパートが結構あるんです。だから、今回の支援付き住宅のプロジェクトでは、特に就労支援も同時に行うということに、私たちは力を入れています。現在のところ、22室のうち、16人の方が入居していて、6割の方が生活保護を活用しない形で居住支援を受けています。

利用者の特徴として、長く野宿生活をしていたというよりも、簡易宿所(格安の宿泊施設)を利用しながら派遣などの仕事を続けてきた方が多いです。つまり、今までギリギリのところでご自身で住居を確保していたけれど、年末年始や緊急事態宣言期間でいよいよ仕事もなくなり、ついに宿代を払えなくなったというような方々です。

それぞれの事情、それぞれの努力、コロナ禍の厳しさ

小林:
釜ヶ崎には外国から来て働いてらっしゃる方が多いという状況もあります。例えば、ベトナムからの方がいました。その方は最初は留学生として日本に来て、その後、実家への仕送りのために少しオーバーステイで仕事をしていたんです。しかし、この間技能実習生が劣悪な労働環境に置かれているというのが話題になったことで、入国管理局の締め付けが厳しくなったり、雇用者側も簡単に雇わなくなってしまったんです。そこに新型コロナがきて、帰りたくても帰れない状況になってしまった。結局、その方は二カ月間公園で野宿をしていて、私たちの支援とつながりました。その方に関してはまず、オーバーステイ状態なので一旦短期滞在の許可を申請しに行ったんですが、オーバーステイが長すぎるのと、居住実態がないということで2回ほどはねられました。そこで、今回のクラウドファンディングで始まった支援付き住宅に一度入ってもらいました。最終的に、その方は難民支援団体など様々な方々からの支援も受けて、先日ついに帰国が実現しました。

松本:
50代前半で元々港湾で働いていたけれども、コロナでぱったりと荷役の仕事が途切れて職を失ったという方もいます。この方の場合、はじめは貯金や特別給付金などを使ってサウナ暮らしをしていたんです。一時は新しい職も得たんですが、なかなかうまくいかずに困窮してしまった。この人のように、一生懸命自分なりに居住や次の仕事のことをやりくりして耐えていた方が、長引くコロナの影響により、もうどうしようもなくなるということが出てきてしまっています。

さらに、支援付き住宅に入居して、せっかく仕事についてもコロナの影響で安定しないということもあります。例えば、3月にスーパーに就職した方がおられますが、5月にもう人員削減で終わりですということになりました。仕事を得て、これからというところでした。なかなか厳しいのが現状です。

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コロナ禍で困窮者からの相談は増えたのか?

松本:
釜ヶ崎支援機構の相談支援窓口では例年の3割増しぐらいですね。2008年のリーマンショック、派遣切りの時は本当に3ヵ月ぐらいに集中して相談件数が一気に跳ね上がったんですけど、今回は少し異なっていて、3割増しのような状況がずっと続いている感じです。

小林:
去年(2020年)の4月、5月、7月に他の団体とも連携して相談会をやりましたが、そこでもコロナの影響でという人はいたので、やはり増えてはいると思います。ただ、困窮した方からの相談が激増してパンクみたいなところまではいかなかった。もっと影響があるんじゃないかなとずっと思っていたんですが、実際にはそこまで劇的に増加しなかったんです。これはおそらく二つの理由が考えられます。ひとつは、社協の貸付が結構使われているということです。もうひとつは、支援団体を通さずにダイレクトに生活保護申請をする方が増えている可能性があります。リーマンショックの時は全国から西成に困窮者がどっと押し寄せて、そこから支援団体を通して生活保護に移行という流れがありました。だから、生活保護の申請件数は西成区が突出していたんです。一方、昨年度は大阪24区全体で増加傾向にあったとされています。もしかすると、以前よりも生活保護が取りやすくなったのかもしれません。そこには、全世界がコロナで困っているということで、申請する心理的ハードルが下がったり、申請しても生活保護が許される、理解してもらえるといったような状況になっている可能性もあります。

住居付き支援の力

小林:
住居付き支援を受けられる方は、最初、「ほんまにいいんですか?」と驚きみたいなものを持つ方が多いです。それぐらい、全国でも今までに例のない事業です。また、生活保護の場合、どこまでも「もらっている側」という意識が付きまとうんですが、住居があって就労支援もできることで、職を得たらやっぱり自尊心の回復も早いんです。もうひとつ、生活保護を受けておられる方でも人それぞれで、本当に多種多様な障害や生きづらさを抱えておられて、しかも健康面、精神面、人間関係、社会的な抑圧など一人で何重にも苦しんでおられる方がいます。実は、生活保護の申請をしても家具まで全部揃った家に住むことは難しいんです。そうした時に、すでに家具までまるっとあって、しかも衣食住から就労まで様々な支援が受けられるというのがこの事業のすごいところです。ある方からは、「自分は様々な困難があって一人暮らしはできない、かといって施設にも入れないなかで、いろんなことを相談できるというのはとても有難い」という声も頂きました。

松本:
今回全国的な展開でクラウドファンディングをやり、全国10の支援団体が連携してこの住居付き支援事業をやっていることはとても面白いと思います。困っている方を助けたいという動きは昔からありました。しかし、今回抱樸さんが声かけをして、全国各地の支援団体も一緒にやらなくちゃとなった。それも、単にやりましょうというのではなくて、まず基盤となる資金をいただいて、そこからは各団体で進めていく。こうすることで、お互いに活動を評価しあえますし、各団体の連携によってホームレス支援を社会化できるというのは大事なことだと思います。

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ご寄付下さった皆様へ―「できない」が「できる」に変わるということ

小林:
今回の住宅付き支援事業は本当にすごい事業だと思っています。この事業によって、今まではできなかったことができるようになっているんです。例えば、この前、同棲していた相手からハラスメントを受けて出ていかざるを得なくなり、所持金もまったくない、実家にも帰れないという20代女性の支援の依頼が他団体からありました。この方は、4月から就職はもう決まっていたんですが、給料が入るのは5月中旬になると。だからそこまでの間、この事業の住居に入ってもらうことによって、生活を崩さずに、本人の仕事を応援できました。これは今までだとできなかったことで、今回ご寄付いただいたからこそ、できた支援です。まだ僕らにも力不足のとこをはありますが、期待して、温かく見守っていただければと思っています。ありがとうございます。

松本:
今回クラウドファンディングを始めた当初は、正直なところ、集まるのかなと思っていた部分もありました。でも、たくさんの方に応援していただいて、本当に心が温まるというか、いやなんかもっとこう、内臓からくるウォーミング感というかで、泣き泣きでやっていて、ほんまに感謝しかありません。公的な制度だけでは支援が届ききらない場合に、今回頂いたお金を活用できるということで、皆さんのご寄付というのは本当に有難いものだということを声を大にして言いたいです。ご寄付いただいたことへの責任ということで、この日本社会でなかなか息苦しいところ、辛いところを少しでもずらしていけるような活動を今後も頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

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