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支援付き住宅 千葉県市川の状況(ガンバの会)

抱樸が初のクラウドファンディングに挑戦した「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援」の中心事業「支援付き住宅の全国展開」において、各地で担っていくパートナー団体の一つである、千葉県市川市で活動をする NPO生活困窮・ホームレス自立支援ガンバの会 (ガンバの会)の副田一朗理事長にお話を伺いました。

御礼

まず初めに今回のクラウドファンディングにより、家具付きですぐに入居できる10室の部屋を確保する事ができました。本当にありがとうございました。また、当団体で独自に実施したクラウドファンディングと併せて合計20室を確保し、サブリースによる差額(等)で新しく1名雇用もできました。現在では、すべての部屋は埋まり、コロナ禍における厳しい状況ではありますが、支援体制も強化しながら活動しています。

市川での支援、困窮者の状況

私たちは夜、市川市内を巡回し路上生活者の方サポート、炊き出し、お弁当を渡したりをしております。私たちが把握している限り、おおよそ25名ほどの方が市川で路上生活をされています。最盛期は250名くらいいました。最近では路上生活者からの相談だけでなく、生活困窮の相談が多くなっております。

今年、メール等々での相談で対応させていただいているのがおよそ200人ぐらいです。今年はまだ統計が終わっていませんが、だいたい昨年の同時期と比べますと、相談件数が7割ほど増えています。電話やメールの相談は、千葉県だけでなく全国から寄せられます。遠方ですと、福岡からも相談が寄せられることがありました。遠方であるからといって断ることは当然なく、相談ごとを聴き取りながら、それぞれの地域の団体等や自治体の生活困窮窓口に繋いでいったりしています。

昨年(2019年)のシェルターの年間利用者数は57人でした。しかし今年(2020年)は1月の段階で78人になっています。住まいを失った人の相談が大変多くなっていることを実感します。10月の段階では少し落ち着いていたのですが、11月に入って徐々に増加してきました。

住まいを失った理由として、雇い止めにより派遣の寮を追い出されてしまった、同様の理由からネットカフェ代も払えなくなったというケースが最も多く、次にアパート生活をしていたけれど、家賃が払えなくなり、住まいを失ってから相談に来られる方も多いです。そしてアパートの家賃滞納等が始まって困窮状況に陥ってる人。大方のケースで皆さん離職、雇い止めされているという状況です。

派遣で働いている多くの方には雇用保険にも加入しておらず、失業保険の適用がありません。ハローワークの発表で離職者数が8万人を超えたなど、いろんなデータが出てきていますが、ハローワークも掴んでいないような日雇い、日払いの派遣のスポット契約みたいな形もあるのではないでしょうか。要するに、社会保障や雇用保険などに加入しなければいけないのに、ついてないような派遣が首都圏にはやっぱり多くあるんです。まともなところは就職の際に住民票を提出するなど、本人確認などの手続きをしていると思いますが、本人確認を回避しながら働ける派遣会社があるわけです。当然その方々は社会保障に入っていない状態で働いています。

自治体の生活困窮窓口や福祉事務所から、住まいがない人たちの対応をお願いされることもあります。シェルターに入ってもらったりしますが、ガンバが用意できるにはシェルター用の部屋数は多くはありません。直接福祉事務所に相談に行く今日の住まいに困った人たちの多くは無料低額宿泊所が紹介されることが多いのですが、中には当団体に相談案件が振られてくることもあります。しかしながら、ガンバの会が支援している方々は直接当団体に相談してきていただいた方が圧倒的に多いのが現状です。

やはり役所の相談窓口の敷居は相当に高い、と思われているのではないでしょうか。もう電話があっても通じなくなっている人もたくさんいるので、ネットカフェなどからメールでの相談が多くなっています。相談されてくる方の中にはネットカフェ代がなくなって路上を数日経験している人もいらっしゃいます。Wi-Fiがつながれば、ガンバの会のHPを調べたり、LINEなどできるので。

「お金、家、人間関係」この3つがないことが相談者の特徴ではないかと思います。最近では、親子で相談者ということもありますが、2人世帯以上はまれで、ほとんどが単身です。地方から仕事で東京・千葉に来られて、もう親類縁者とも遠く、親類縁者がいないわけではないですが、縁の切れた状態の人がほとんどであるということです。

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市川ガンバの会 コロナ前の状況

ガンバの会としては、新型コロナ以前からとりあえず本人が希望すれば、まずシェルターを提供するというスタイルでした。新型コロナ前は、男性が6室、女性が2室、相部屋設定ありでやっていました。新型コロナ後は2室増やして、男性が8室、女性が2室、すべて個室の体制になっています。

シェルターで生活を立て直してから、住みこみ就労にまた行きたいという人もいましたし、アパートを契約するまでシェルターで生活を立て直す方もいらっしゃいました。或いは、高齢の相談者の中には一部年金を受給されている方もいるので、シェルターに住んでいる間に貯金を貯めていただき、アパートに自費入居する場合もあります。また、私たちの法人の貸付金制度を利用して、その貸付でアパートに入るという人もいます。しかしながら、生活保護をシェルターから申請をして、入居費用も出していただいて、アパート移行するという人が一番多いです。

2020年6月以降、相談者がすごくて、シェルターの数を増やしたにも関わらず、あっという間に満室になってしまいました。しかし、満室だからごめんねって、やっぱり私どもはなかなか言えないのです。ほぼ満室状態の中、新たに今日の住まいがないと相談に来られたときに、また相部屋を認めてしまいました。クラスターが発生しないことだけを願いつつ、昨年の7月、8月は、ほとんどの部屋が相部屋状態になってしまっていました。だいたい生活保護利用の場合は、1ヶ月から1ヶ月半でアパート移行ができます。だから本当に短期だけ、ということで今までは相部屋もありでやっていました。相部屋の場合、6畳に2人なんですが、利用者の方には迷惑かけた部分もあります。市川市内でもクラスター発生し、陽性者が増えているのですが、幸運なことにシェルター内で新型コロナになる方はいらっしゃらなかったので、ちょっとほっとしているところであります。

シェルターを増やしましたが、一方そうなると、費用がかかります。借り上げの費用、布団や家電。維持費として水、光熱費もかかれば食糧費も必要となります。シェルターを増設しなくてはということで、実を言うと、寄付をもうすでに集めていました。何百万円もの寄付が集まり数部屋は何とかなりました。そしてその直後、支援付き住宅の全国展開パートナー団体としてのお話を抱樸よりいただきました。

先程も申し上げた通り、相談者はシェルターに一時的に入ってもらってから地域のアパートへ移行していくという形になっていました。なのでサブリース型(当団体で借り上げてそれをサブリースするという形)になると法人としても助かるわけです。伴走型と言われる継続支援ですから、人件費も増えていく。そこで幾ばくかの人件費をサブリースの中から生み出すことができるというのは大変魅力的でした。新しく雇用も1人だけですが増やすことができました。

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困っていることと言えば、条件に合い、安く借りられるアパートが市川には多くはないということです。現在のところサブリース型、支援付き住宅ということで新しく20室借り上げました。だいたい4万円ぐらいで借り上げて、家具や様々なものを用意し、担当相談員を付けて、生活保護基準4万6000円で貸しましょうという形になっています。1部屋平均で6000円ぐらいを人件費に割り当てることができます。そうすると20室確保して12万円で、実際は人件費1人分もいかないんですね。今のところ25室を目標にしております。あと5室をなんとかあちこちの不動産会社に頼んでいるのですが、なかなかよい物件が見つかりません。同じ建物に12室借りることができているのですが、その他は点在型なんです。地理的にはある程度固まってはいますけれども、やはり点在していると見守り、相談、巡回などが大変な面があります。逆に物件数で言うと、今20件までよく確保できたなというのが本音で、ほっとしています。

サポートとしては、入所当初はもちろん訪問もいたします。そして皆さんさん不安もありますでしょうから、うちの事務所で最初の金銭管理を短期で行うこともあります。アパート自体が久しぶりという人もいますので。それから、事務所にも来ていただくという方法をとっております。歩いて来る方もいます。15分20分かかりますけれども。それ以外にも電車で一駅とかね、その程度です。うちは駅から近いところにありますので、交通機関使ってくる人もおります。電話を持つことを優先しておりまして、レンタル携帯なんかを持つ人もいます。事務所から電話でサポートすることもあります。必要な方には通院の同行をしたりしています。コロナで相談に来る人の中には、精神的に病んでいたり、心に傷を負っている方が多数見受けられることに気づきました。眠れない状態に陥ってる人が精神科に通ったり、メンタルクリニックに通ってる人も数名おります。

昨年ガンバの会が関わった方で合計19人の方のお葬式をあげました。こうやって出会った方々とは死ぬまでの付き合いになります。ガンバの会はアパート支援を始めてから20年は経ちます。10年前入居した人は10歳とってるわけですから、亡くなる方も多いです。2020年も9人の方が亡くなられました。

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現在(2月末)は全10室あるシェルターにはすこし余裕があります。10月ぐらいまでは全く余裕がない状態が続いていました。一方、サブリースの20件は、全てに入居されています。シェルターから移行した人もいます。しかし順次借り上げなので、やっぱりシェルターで待機していただくということが続きました。借り上げのサブリースに入るも、他の賃貸アパートに入るのもご本人たちの自由なのですが、多くの方は借り上げの方を希望されます。借り上げの場合はタイミングなどもありますし、場所は限られます。他の物件を地域の不動産会社で紹介していただいてもいいよということは言うんですけれども、借り上げを希望される方が多いように思います。やはり家具・家電がついてることも大きいのではないでしょうか。


今後このサブリース型、借り上げのアパートの部屋数を25部屋までに増やしたいということを既に申し上げました。市川の課題として、高い家賃の中、住宅をいかに確保していくか、ということがあります。市川の生活保護の住宅基準は4万6000円という千葉県の中で最も高額な家賃なんです。隣の船橋市になると4万3000円。政令指定都市の千葉市では4万1000円までしか出ない。市川というのは東京にも近く人気の場所で、どうやって条件に合う物件を確保していくのかが課題です。また、借り上げた家賃から無理のない程度で人件費などを工面しなくてはいけないので、いろんな工夫を考えていかなければいけないとも考えています。

ガンバの会がクラウドファンディングを始めた時に皆さんにお伝えしたことなのですが、相談者の中には自分は死を覚悟したっていう人がたくさんいました。そういう人たちにとってシェルターではなく、今日ここから再出発できる、というような場所があることは非常に大きいと思います。新型コロナというのは命も奪うし、生きる希望も奪う。こういう状況において、いやいや、こういうところがあるんだよ、ここから頑張ろうよ、と言えることがすごいことだと思います。

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