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同志 #740a00

生ぬるい君の裏側がひっくり返って。
しゅうしゅう白い蒸気をたてて。
ゆるくまとわりつく血液。
軽く外れない辟易。
それでも君が好き。
それだから君が好き。

一つ一つがそれぞれのベクトルを向いてる。一つ一つの意志が未来へと思いを描いている。そうなんだけど。みんなの幸福はここを目指さないといけないんだよ。あたしはわかるんだよ。特別な訓練と経験をもとに大きな力を手に入れている。みんなもあたしの言う通りにすればきっとうまくいくから。ありがちなんだけど。うまうまであまあまな形容詞であんたたちは簡単に堕ちちゃう。楽勝だよ。ボリューム上げて声出した人の勝ち。勝った人の言葉が価値を持ってる。私はこうやってお金儲けた。痩せた。増毛した。若返った。合格した。。。クソだよねって思っても人は簡単に堕ちる。

人は死ぬ。いろんな定義って死ぬほどあるんだけれど。100パー。誤差とかなしでこの世界でみんなが認識してる現実ってこれだよね。みんなって誰なのって?そういうのは今は置いといての話で進めるけれど。とりあえず。どんだけ金稼ごうと、世界の100万人とコネ作りまくっても。あたしもあんたも彼も彼女もいつかは死ぬんだよ。ね。そう思ってるのあたしだけなのかな?。ノーと言う人もいるのかもしれないし。ノーと言うのは人じゃないのかもしれないし、だいたい、人って何?。と言う疑問もフツフツだもの。もしかしたら、人って死なないで済むこともあるのかしら?。なんかしょぼい世界しか知らないから、もしかしたあるのかな?。グジュグジュ肉の塊が崩れて、頭の中も故障だらけになってエラーエラー連発。廃棄するにもこんなにコストかかんのかよ!!。みたいのが実はあたしでした。みたいな結論。超悪夢?。いやいやここに来てる現実。人は死ぬ。それを絶対にしたら。人は死ぬの前提置いたら、今あたしが人を死に導くこと。ラフに言うと私が人を殺すこと?。だめ?。OK?。人は必ず死ぬ。その原因は様々だけれど。でも結果オーライ。私があなたの未来閉じてもいいんだよね?。お返しにさ。私の未来も削除してもいいんだよ。WINWINってこう言う時に使う言葉だよね?。一方的、押しつけ屁理屈だけど。やっちゃうよ速攻!。せっかちなので思ったら逡巡する時間待たずに身体動かす。後々のくそめんどくさいことは誰かさんに丸投げ????って???。誰かさん?。何その三人称?。誰かさん。どこの誰か?。いったいどこの誰とも???そんな誰かにね、全てを拾ってもらうということで。やっちゃうよ。スパスパ切れ刃渡りなんとかの刃物手にしてる。行くよ!!CO出してよ!!。コバルト出してどうする?。というか GO出すのは私なんだけどね。世界の息吹が私の背中に吹き付ける風。風に乗ってあたしはターゲットにまっしぐらに突き進み躊躇なく腹部に刃物突き立てる。

このうじゃうじゃ密集状態の船の中には秩序が必要なのは明白でしょ。
一人でも多く生き残るためにはこれ以上人間増やしちゃいけないのよ。

それまではちゃんと一方的にでも目の前に敵視する対象が存在してた。我々の妄想で作り上げた帝国主義。ここのどこに皇帝がいる?。って考えたこともないけど。人民を抑圧する憎むべき対象。だからみんなも自分のうまくいかないことやモヤモヤしてること。全部、あいつらのせいにして気分爽快憂さ+晴らし。バラし。時にバラす行為にエクスタシー。昇華。自分をそんなことで整えていた。大きく振れるエッジギリギリの右から左、上から下、そこからニュートラルに戻す行為を繰り返して。た。そりゃもう、やりたい放題。どうだい?。し放題!!。ということにはならない。ならないよね?。なりません。相手もやられっ放しじゃいないわけで。そもそも、あいつらの方が圧倒的多数。ちょっと日常に不意に現れるゴキブリみたいな不愉快で世界に存在してはいけないもの。それが我々。スリッパで叩き潰すって選択以外皆無の存在。ともかく身辺数メートル以内に蠢いているという気配すら、生理的にゼッタイ無理!!。と、ギャーギャーやかましく正論を正義という暴力にすり替えて、新聞紙丸めたのやハエ叩きやスリッパかざしてゴキブリ退治をおっぱじめたということです。あたしたちのメタファーとされているゴキブリは神出鬼没で圧倒的なスピードを持っているけれど。逃げ回ること、キャラ的にはそれだけでしょ。ゴキブリサイエンティストじゃないから、きっぱり断言するのは本意じゃないんだけどね。でもね、我々には攻撃するというアクションがあったの。そして、我々以外は全て敵なんで、あいつらにとってはなんの罪もない一般市民であっても我々は善良で無害な対象としては捉えていないんだ。安穏に生活。既得権益に執着。それこそがギルティー。攻撃の対象の枠のど真ん中。それが向こうにとっては弱点みたいで、ウルトラマイノリティーの我々にちょっと手を焼いていたってわけ。それでも時が進めばあいつらの学習能力もどんどんついてくる。今まで造作もなく通り抜けられていた難局もそうそううまくかいくぐれなくなってくる。じわじわゴキブリ退治の包囲網が迫ってくる。マジョリティーがのぺーっと広がる安穏の世界を逆恨みしたアブノーマルな未熟なソルジャー。ロジックかます前にパニック起こす。。。みたいな状態、醜態、もうおしまい???。じゃ、ダメじゃん。攻撃の手法を逃亡にギヤチェンジ。どこを漂っているかもわからないこの船。帝国主義の断頭台で露と消える一歩手前でたんまり食料も水も蓄えたこの船ジャックして同志たちで逃げ出した。我々は自由を手に入れた。手に入れた?。抵抗する対象の帝国主義もなくなったし、我々を叩き潰そうとしてるあいつらからからも逃れた。そういう結論のはず!。
はず?。??。かな???。逃亡って敗北なのに、全然反対方向の勝利の恍惚感となって。現状の認識を見誤っていた。これから自由だなんて。船員もキャプテンも出港後あっさり始末しちゃったし。あたしたちは幽霊船に幽閉されて海流に未来を握られている囚人じゃないの。何が自由?。むしろ自分たちからあいつらよりももっとタチの悪い運命に身を投げちゃったのかもしれない。同志とか讃えあってた肉の塊同士が必要以上にひしめきあってる日常が徐々に熱量蓄える。そのうちに臨界点を迎えるようなそんな不穏な予感をみんなが抱えている。
鯨の鳴き声のような音or声が聞こえてくる。外からの空気の震えではない。あたしのからだに直に響いてくる。この船の中で朽ちていくのを待っているだけのような同志たちも同じ音or声が届いているようだ。あたしは美_kuniが発する生命の息吹を止めたつもりだったんだけど、彼女の実態は肉体に縛り付けられているわけじゃなかった。

どうしたのサマリー?。自分の行動まで総括してるの?。

美_kuniの声が身体の中で囁く。あたしの現前にはいないはずなのにどこかでちゃんと存在感を放っている。いつも美_kuniはあたしの中に居座っている。もしかしたら他のみんなの中にもいるのかもしれない。海の中にゆらゆらと沈んでいったはずの美_kuni。サラサラ長髪で重火器構えて。敵陣に砲弾ぶちかましていたフォトジェニックな美_kuniより、船倉で微動たりともしないで、もの思いにふけっていた哲学者然とした美_kuniより、内側から撫でられるような親密で綿密な感触で近づいてくる。そうよね。こんな批評家の総括のような真っ当な反省文並べてるなんて可笑しいよね。あたしじゃない。考えることとか反省することなんて無意味。その前にダイブ。って感じでずっとやってきたんだし。そこまで他人事的に俯瞰してもの言えるんだったら、こんな悪夢のようなオーシャンクルーズしてないわね。もう船が陸地を結ぶ海の交通手段だなんて概念もほとんど忘れかけてる。ただ水平線を延々と見せてくれるパノラマ装置。時々背景にノイズ的な雨やら体感震える揺さぶりサービスも実装されている。いらないんだけどこんなサービス。でも時々やってくるボアダムを燃やせ!!の叫びを抑える効果大!!だったりもするわけ。あたしたちは退屈ってのが一番の苦手。いつもいつも目前にプロブレムをぶら下げていないと生きていけないんだもん。そういえば美_kuniの行動にためらいというかためというものがなかった。敵が美_kuniの次の動作を読もうとしても、その瞬間に打ちのめされている。流れる長い髪の向こうの瞳には表情や感情は一切映っていない。息を吐いたようなちょっとした隙間時間にふと見せる笑顔。えくぼなんて見せちゃってさ、幼ささえ感じさせるそのギャップにみんながやられちゃう。一度も口聞いたことなんてない同志たちだって美_kuniは絶対なんだ。スピーチが上手だとか、行動力が半端ないとか、専門的知識に長けているとか、判断が早くて正確だとか、とか、とか、とか、とか、とか。。。そんなの無意味。無意味?ではないか。でも、かわいさにはかなわない。かわいさは正義。あたしは美_kuniにはなれないし。。。それでも、美_kuniみたいになりたかった。「嫉妬」と「憧憬」。ありがちだよね。でもそんな対義語のコンポジションがあたしの中でちょっとずつ増幅していった。かわいいなんて媚びた概念が正義の味方になんてなれるもんか!というアンチキュートの苛立ちと無意識に美_kuniの振る舞いをなぞっているあたしが平気で共存している。もしかしたら。maybe。someday。サムデー。ある日。真逆のベクトルにあたしは引き裂かれてしまうかもしれない。煙霧のような判然としない心持ちはフロントガラスにワイパーを作動させてもスッキリクリアにリフレッシュできない居心地の悪さを抱え続けていた。あたしの瞳には怒りで燃えていたし、あたしの身体は朱殷の色に満たされていた。美_kuniの瞳の中にはいつも何も映っていなかった。どんな色の光が彼女をスキャンしても何も映らないだろう。でもそれは空虚ってことじゃないんだよね。空っぽで虚しいってことじゃないってこと。逆に全てを反映させる可能性を秘めている。あたしの怒りの朱殷の色も、この幽霊船に蠢く同志たちの絶望の漆黒も、風に煽られ轟く波の音も、容赦無く降り注ぐ灼熱の太陽の光も、インターフェースを通してランダムに掬い取るように一場面一場面を記憶装置に蓄えているように見える。そしてその記憶はあたしたちやそれぞれの風景の記憶と共振して、過去だけではなく、現在や未来までも映し出す。あたしたちはその気配に絶対的な安堵と絶望に支配されていたのだけれど、それを払拭することはできなかった。

ピコピコうすっぺら軽い電子音と実態が感じられないビームで展開されているバトルフィールド。クソ重たそうなオイル感満点のマシンandアナログ重火器で切り込むリーダーと美_kuniと我々エリートフォース。。。と、妄想上ではね。実のところは重火器なんて持てるご身分ではありませんし、我々の帝国にはそもそも重火器なんて目に見えるところには存在しておりません。数本の猟銃やエアライフル。戦闘用ではなく娯楽用の代物とやっとの事で手に入れた手榴弾を各自親の形見とばかりに大事に懐に秘めて停泊中の船に逃げ込んだ。たまたまなんだけど。食料、燃料、たんまり積み込まれてて、キャプテン以下、スタンバイOK!!。の出航寸前。誠に都合がいい展開。待ってましたのようなシチュエーション。派遣会社の同業者リフレーション。キャプテンとりあえず船出してちょうだい!。追手から命からがら逃げ回るのはいつもの展開。逃げ切ったと束の間の安堵感→そして、新たな追手が登場。連綿と続く逃走劇。あーあ、またかよ(~_~;)と悲嘆に暮れつつも、安定の茶番のルーティン。牛乳パックのぬるま湯の数風寒風。でも、今回ばかりは帝国の地べたから離れることができるのだから、この逃走劇の顛末も終劇となるのではないのか。と期待できるのではないのか?。帝国との戦いと旗立ててその気になっている我々。実際のところはこんな風にちょこまか逃げ回っているだけのrats。しかし、千載一遇のこの機会をものにできたなら、これまでの局面を一旦棚上げして別の展開に持っていけるかもしれないよ。今度こそ、文字通りの帝国との「闘争」の実現に向けて準備に勤しもう。。。なんてデリュージョン繰り広げてる時か?。帝国の追手が船内になだれ込んでくるよ。自由へのかけがえのないツールは我々を袋のネズミにするデッドエンドでもあるわけで。ここではもはや逃げることはできない。窮鼠猫を嚙む。火事場のくそ力。カウンターアタック。反撃に打って出る!!!そんなガッツ我々にあるの???。だいたい、自立した一人称代名詞の「私」とか「僕」にセリフを言わせられない若輩ジュニアメンバーの集団の「我々」。そうこうしている我々。構想しかできない抗争それぞれ。思考は撹乱。行きつ戻りつ。活性化で我々は勝てませんは名場面。あれこれ火刑法廷誰のせい。などなど韻ふみふみ。引き伸ばし逡巡くりかえし先延ばし超得意技でごまかし作戦発動中。観念上では概念こねくり回して微々とでも先に進めているように錯覚しているけど、リアルは遅々として膠着したままなんだ。各人それぞれが思い思いの観念の参謀気取りなんだけど、判断と実行は他人任せ。それが我々。我々?。わ?。れ?。わ??。れ??。われわれわれわれわれわれわれわ。いい加減にしたいわよね。あたしはあんたじゃないし。あんただってあたしじゃない。リーダーが追手をぶら下げるように引き寄せながら船の手前まで来ている。ずっとリーダーの気配を見失わないように影のように見守っている美_kuni。彼に近づく美_kuni。彼らだけは、「我々」に値する同志なのかしら。その中にあたしはいない。あんたたちもいない。いつでも、どこでも、なんでも、代わりがきくエキストラ。あたしは「我々」から降りるわ。今からあたしは「あたし」。総括担当のあたしはミスサマリー。サマリーはあたしの中の「我々」を総括した。ブリストルの闇音楽があたしの中で地底の振動のようにリズムを刻み始めた。呼吸深くゆっくり。ヴォルフガング普通人。リーダーは美_kuniから手榴弾を受け取った。美_kuniはすぐにリーダーから離れ船の乗り込み口から船内に滑り込みドアをロックアウト。

美_kuniー「100年後の一秒先で君を待ってる」

リーダーと美_kuniのラストシーン。これからの未来に延々と続いていくであろうレジェンド。そのストーリーにあたしはいない。残ったリーダーに追手が次々に追いつく。彼らの表情にかすかな安堵とささやかな達成感が見て取れる。彼らの瞳には、甲板でこのありさまをお口あんぐりで眺めているあたしたちのような雑魚たちはエキストラどころか書き割りの背景にもなっていない。追手たちがリーダーに銃口を向けてにじり寄る。リーダーの顔には感情というものが一切浮かんでいない。船内に紛れ込んだ美_kuniも壁にもたれてゆっくり息を整えている。彼女の表情も同じだ。過去を振り返っているのか?。未来に思いを馳せているのか?。それとも今の現状を劇的に覆そうとしているのか?。リーダーの運命はいかに!!。緊張が極限に達している。テンションマックス。

「delete!」

自分と美_kuniから受け取ったの二つの手榴弾のピンを抜くリーダー。刹那。時間が凍結したように止まってしまったようにも思えた。。。が、そんなわけない。時間は動いている。人は死んで動かなくなっても時間は進んでいく。未来はあたしたちを残し進んでいく。交響曲の大団円を飾る激しいティンパニの打撃音の如き爆音、ハングオンでスーパーアンギュロン、Uターン爆音。バク、ラフランス、バク爆音。オールサイドに飛び散る朱殷(#740a00)。リーダー以下たくさんの人間の魂が肉の塊から解放された。

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