弾丸で上高地へ。徳沢で山菜そばを食べる。
2024/5/27
圏央道から八王子ジャンクションで中央道。久々に暗闇に吸い込まれていく恐怖感。もう初夏で日の出も早くなってきているとは言っても、まだ3時過ぎたところ。まだ早朝というよりも夜。こんな早朝どこに行く?。上高地へ!!。決まってる。松本までの中央道。久々だな。冬は終わったということだ。というより、春も終わってるよ。時が過ぎるのは早い。八王子から大月、勝沼と走って行っても、季節には追いつけない。時間を遡ることは不可能。でも、甲府から南アルプス、八ヶ岳、諏訪湖、塩尻、松本そして上高地と進んで行けば遡った季節に追いつけるような気持ちになるかもしれない。風景もまだまだ緑が登場したばかりの趣き。まだ桜の季節は終わったばかりといった感じ。そんなことはさておき、松本インターから飛騨、上高地方面に向かうと前方は雲に覆われて風景は白く塗りつぶされている。こりゃ穂高の絶景は絶望かな?。でも上高地は穂高だけじゃないから。梓川とか、ニリンソウ、お猿さん。見所は事欠かない。それに雲もずっと穂高を隠し続けるとも限らない。松本からドンドン車は標高上げて行く。道の険しさ、ちょっと嫌な感じ。早起きの寝ぼけた頭と身体に緊張感が走る。これから先事故ったら、完全に死ぬ。そんな感じ。さらに人身事故だけじゃなくて、猿とか動物にも注意しなくちゃいけない。と思っているうちに猿一頭前方の道を一閃。肝冷やしたぜ。上高地までの道は一瞬も気が抜けない。トンネルも多い。しかも、狭い、曲がってる。風景は圧倒的に壮麗だけど、それは峻険の裏返し。無事に早く沢渡に到着したい。そしたらその後はバスの運転手さんにこの緊張感はバトンタッチだもの。でも、焦っちゃいけない。じっくり一つ一つトンネルやカーブをクリアして着実に進むことにしよう。長いトンネルを過ぎるとなんとなく人の気配が濃厚になってくる。さあ、やっと、沢渡エリアに入ってきたな。やがて、バスターミナルそばの駐車場が見えてくる。ん、7時前だけど、けっこう埋まってる。でも、なんとなく停めることができた。さあ、準備して、バス停へ。ゴールデンウィークか終わったとはいえ、まだまだシーズンは始まったばかり。上高地はごった返してるのかな?。7時過ぎのバス。チケットを買った。すぐに発車っぽい。なんか、すんなりバスの乗客となっている自分。あっけない場面転換。車からバスまで、一瞬外気に触れたが、ちょっと想像以上に寒かった。寒いというのはわかっていても、横浜の現実の体感からしか想像できなくて、考えられる範囲内での軽装でやってきた。諏訪湖サービスエリアではそれは正しい選択だったような気もしたが、上高地では、それは完全に大誤算に思われた。ま、でも、歩き出せば暑くなるし、それに、日が出てくれば状況も変わるさと、バスの中ではお気楽状態。バスは思ったほど混んではいない。座席に腰掛けるとすぐに眠くなる。ああ疲れた。夜行バスのチケット取れたら、岳沢小屋まで登ってみようと思ったけど、弾丸日帰りでの上高地は山登りはちょっとキツ過ぎる。っていうか危険。今回はきれいな景色を写真に納めるということを優先順位の上位に置いた山行にする。沢渡は靄っていなかったけど景観的には0%開けてなかった。しかし釜トンネル通過すると焼岳の威容が雲の合間から臨める。さらに進むと穂高の山々がてっぺんの方は雲がかかっているものの氷の塊のようにピカピカと輝いてそこにある。やっぱりすごいなあ。そして戻ってきたよという実感が込み上げてくる。涙が出そうだよ。今年もよろしくお願いします。大正池のバス停に到着。たくさんの人がここで降りて行く。いってらっしゃい。良い旅を。バスは再びエンジンをかけて走り出す。次は帝国ホテル。庭には積み上げられた雪か山になってる。こんなのを目前にすると、ここはまだ冬が終わったばかりなんだなと感じる。確かにずいぶん季節を遡った。タイムマシンに乗ってきた下界の住人。何度訪れても異世界からやってきたまれびと感は拭えない。何にも関わらないように細心の注意を払って上高地の息吹を享受させてもらう。些細なバランスを損なうことも許されない。さあ、バスのエンジンが再びかかると次はゴールの上高地バスターミナル。着いたー!!。バスを降りる。今日はテント泊とかなしだから。荷物は手持ちの15リッターのリュックだけ。軽やかな足取りでバス停に降り立つ。むむ。沢渡で感じたよりもずっと寒く感じる。氷点下にはいってないと思うけど、一桁代の気温だと思う。体感的にはダウンとかフリースが欲しいところ。ところが、長袖のインナーの上に長袖のTシャツと半袖のTシャツの重ね着の上にレインウェアを兼ねたカッパだよ。横浜出る時はこれでも暑いんじゃないかと思っていたが、とんでもない考え違いしてたみたい。バス停近くのベンチに一旦荷物を置いて、リュックからカメラ出す。今日の主役は君。ちゃんと仕事してしてもらうよ。そして、ペットボトルの水を一口含んだら、ちょっと身をすくめ、ポケットに両手突っ込んで、勢いよく歩き出す。歩けば寒さも凌げるだろう。林抜けて梓川の河岸に到ると、向こうに河童橋が。そしてその向こうには穂高。何度見ても震えるほど荘厳な光景だ。今日の穂高はそれに輪をかけるように白い雲が頂上付近に残って雪の白さと相まって近づきがたさを強調しているようだ。河童橋でお決まりの写真を撮って岳沢の方にちょっと進んで、たまには明神池の方のコース行ってみようかな。とも思ったけど、岳沢の方の前穂高の登山口目指すわけでもないし、今日はなるべく楽して徳沢でお昼ご飯食べて戻ってこようという算段なので再び河童橋を戻って小梨平の方に歩き始めた。明神岳が多分降りたての雪で真っ白。そして近景ではズミの真っ白い花。ここはズミの木かたくさんある。ズミの木の別名は小梨。まさにこの小梨平という地名は小梨が沢山あるところなんだ。北アルプスの玄関口はなんでロマンチックで美しい場所なんだろう!。ズミの花が咲き誇る下にはたくさんのテント。あー、ほんとはここにテント張って、もっとゆっくりしたいな。しかし、しょうがない。今日は弾丸日帰り上高地だ。後ろ髪引かれる隙を微塵も抱かないうちにキャンプ場を通り過ぎる。次第に梓川も遠ざかって森の中。少しずつモノクロの世界が色づいてきて。空気も緩んできたみたいだ。足下にはニリンソウが登場し始める。風に揺られほんとに愛らしい。こりゃカメラ働きっぱなしだな。シャッター切る動作が止まらない。どんなふうにSDカードな写し込まれているのだろう?。確認しようと思えば、すぐにでもできるだけど、やっぱ帰ってからのお楽しみってことにしておこう。ドンドン写真撮りながら進んで行くと、前方に明神の橋が見えてきた。もうすぐ明神に到着だ。ここまではすんなりだな。人がけっこういるけど、ベンチ沢山あるし、ちょっとだけ休んでいこう。リュックを下ろし、水を一口。腰下ろしたけど、すぐに立ち上がってシャッター押しにかかる。しょうがないなあ。でも今回はこれがタスクなのだから。と自分を納得させる。明神にきたら、ニリンソウの群生も本格的ななってきたし、明神岳が迫ってくるような威容に圧倒されるし、カメラを持ってるとやっぱり今まで訪れてきた場所もさらにしっかり見るようになるし、新しい発見もある。その勢いのまま明神を出発。ここから先は微妙な高低差が出てきてスイスイ進んでいる感じはなくなってくる。とはいえ山登りという概念には入っていかない。しかし、歩いているという実感はしっかりと思い出してきた。でも、明神までの道よりさらに緑は濃くなり、風に揺れるニリンソウも見事だ。日も森の中に差し込んできて、朝の寒さはすっかり忘れてしまった。光に照らし出された森はまるでこの世の世界とは思えない輝きを纏って目の前に存在している。鳥の囀りもこの世じゃない感をさらに高める。いい感じに歩いてきたけれど、徐々に疲れてきたかな?。徳沢までどのくらいあるかな?。と山アプリの地図を確認し始めたのが、歩くことが苦痛の域に入ってきた証。森の中をずっと我慢の歩き。そこから梓川の河岸に出て、穂高の山々の勇姿が登場し始めると、視界にちょっと変化が出て。また歩く気力が充填される。まもなくクマベルの設置場所に到着。クマベルの音か響き渡ると徳沢ロッジも間もなく。そんな記憶が蘇ってくる。さらにすぐそこは徳沢までの行程で一番の映えスポットだ。クマベルを一鳴らしした後進むとぐーんと視界が開ける。さっきまでニリンソウと森の近景を彷徨っていた視線が唐突な展開に仰天している。迫りくる北アルプスの超ド迫力。最低ここまでは来ないと北アルプスの真髄に触れた感じにはなれない。ほんのさわりだけど、大正池と河童橋だけじゃもったいなさ過ぎる。あくまでも個人的な気持ち‥。徳沢手前の絶景ポイントを過ぎると再び森の中、間も無く徳沢ロッジが見えてくる。そしてお目当ての徳沢園ももうちょいだよ、そこでお昼にしよう。というよりまだ朝食の時間だよな。徳沢のテント場にはいくつかのテントも貼られている。今日は弾丸ツアーだけど、次はまたここにテント貼ってゆっくりしたいな。でも今日は食事タイムだけ。早速徳沢園の食堂に入って自販機のメニュー眺める。う~ん今日はまだシーズンが始まったばかりなのかメニューがたくさんあるな。本命はカレーだったんだけど、超早起きしてここまでまともに休憩したのはシャトルバスに乗っていた間だけ。というわけで興奮状態がなかなか止まないためかいまいち食欲が湧かない。帰りに河童橋あたりで山賊焼でも食べることにして、山菜そばのボタンを押して席で待つ。食堂の中を見渡す。ここに来たのは昨年の秋以来だ。今ここで座っていると厳しい冬を越したような時間の経過を感じない。いつもこんなふうに穏やかで気持ち良い空気が流れているような錯覚に陥ってしまいそうだけど、自分が知らない時間が圧倒的に多いんだろう。人にとって都合の良い一面だけしか知らないから、こんな風に上高地の空気や景色を一方的に礼賛してるんだと思う。人にとって都合の良い自然。ここだって決して手つかずの自然じゃない。そんなややこしい思惑を頭の中で転がしていると、山菜そば到着。ん、思っていた山菜そばという概念がちょっと覆される。箱根そばとか都会の駅そばみたいなものを想定していたんだけど。そばは黒くて太い。上に乗っている山菜も見慣れないもの。そばとか乗ってる山菜って、いわゆる山菜であって、ちゃんと下処理されて味つけも完了している食品。目の前のそばに乗っているものは個々がちゃんとそれぞれ名前を持った山菜の一種。無知なのでその個々の名前を特定できないのが残念なのだが、その佇まいにグッと心を掴まれる。さあ、いただこう。まず汁をすする。日頃口にする薄味の出汁に比べてガツンとくる味だ。そして肝心のそばは食べ応えがある重みのある歯応え。ちょっと気取った通好みのこぎれいな味とは違う。でもこれだって自分の味覚中枢が拍手している。もしかしたら今まで食べたそばの中で1番美味しいかも。というか、1番は確信。決定!!。まさか、山小屋で1番のそばに出会えるとは。カレーにしてたら、こんな逸品に出会えなかった。ただただ幸福感な包まれそばをすする。カレーも美味しいんだけどね。このそばか食べれただけで、弾丸でここまできた甲斐があったというものだ。この徳沢園のみちくさ食堂は、名前からイメージするゆるい山小屋の食堂という感じじゃなくて、ひとつひとつにこの場所の精魂を生かし切ろうとする意気が満ち満ちているような気がする。おしゃれとかこだわりとかという言葉で語られるうすっぺらな表現ははなから存在していない。なんかもっと普通の凄さというかそんなことだ。ここの環境は俗世界の自分たちにとっては貴い宝物みたいな世界。でもここではこれが日常の世界なんだ。そのありのままの普通を自分たちみたいな俗物の人間に提供してくれているだけなのかもしれない。ややこしいことばっり言ってるけど。素直にありがとうございますという言葉で片付けてしまうよ。美しい景色と美味しい食事をありがとう。できるだけの記憶を総動員して今日のここでの出来事を自身の身体に刻み付けるよ。そしてその刻みつけられた片鱗を手がかりにまたここに舞い戻ってこよう。沢山切ったシャッターで切り取られた風景もその手がかりになってくれるかな?。帰ってから確認しないとわからないけど。大量の収穫になっていて欲しい。さあ、今日は弾丸だよ。これから河童橋に戻ったら、ちょうどお昼ぐらい。そこから沢渡まで戻って車で帰っても、夕方遅くになってしまう。明日もクソ忌々しい仕事だしね。後ろ髪引かれて後ろ髪が伸びるかちぎれそうだけど、今日のところは一旦撤収だ。また近いうちに来ます。山の神様ほんとにありがとうございました。また次もよろしくお願いします。さあここから河童橋までもけっこう歩かなくちゃいけないし。運転も気をつけないとね。自分の部屋に帰り着くまではまだ山行は終わったわけじゃないからさ。また、ここに戻って来れるように。くれぐれもご安全にいきましょう。
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