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Battle royale #ffc0cb

目に映る風景がドンドン小さくなっていく。船倉を照らしていた微かな明かりは小さくなってく。加速があがっていく。風景はもう目が捉えることができないほど。輪郭線は背景に滲むように流れ。記憶の風景との区別さえつかなくなってる。加速。加速。記憶さえも流れはじめている。もっともっと。スピードあがる。臨界点を迎える。私の記憶。ホワイトアウト。自分はどんな様子してた?。どんな歌をうたってた?。どんな人愛してた?。どんな色を纏ってた?。あったかいとか。寒いとか。そんなこと。こんなこと。もう遠くへ。遥か遠くへ。手が届かなくなっていく。そしてここにたどり着いたんだ。臨界点到達。加速停止。急停止。遠心力からも重力からも急に解放され身体は宙ぶらりんの状態でふわりふわり。視界は青い壁面を捉えてる。プルシアンブルーの正六面体の中に宙吊り?。ここが終着点?。ここが君との待ち合わせ場所なのかな?。

黒いフラッグが翻る。乾いた大地が一瞬で湿気を帯びる。ジトジトした空気。しとしと滴る雨。立ち上る蒸気。日が沈む。Ridda Squareに立つのは一体何度目だ?。左手の甲にに#800とマジックで粗雑に書かれている。800番目のボクらしい。夜を切り裂くナイフでその数字の上に正三角形をなぞる。滴る血。滴る。滴る。地に落ちる。堕ちる。
立ち上るミルク色の蒸気に血の赤が混じり合う。あたりの景色は超絶ピンク。最強のイチゴパフェ。かわいい。みたいな好色的色に圧倒的にやられてる。さあこれから何が始まる?。僕が799人続々現れます。自分で自分殺すなんて超ダサいことやらかします。これから。いつからいるのかな。広場を見下ろす大型スクリーンの上に醜い鳥がこっちを見ている。気味が悪い。あいつがボクを見張っているんだろうな。どこまでもどこまでもしつこく追いかけてくる。自意識過剰なのか?。グルーピーに追っかけられてる誇大妄想狂?。パラノイアはシャドーミラー。そもそもあいつに意志なんてあるのか?。ただのツールなのかもしれない。でも誰のツール?。???????????。クエスチョンだらけの事項。集結の運命包囲網。こいつは時折走査信号を発しているのか。ボクの視界にノイズが走る。鬱陶しい。今も左上から右下に閃光のようなノイズが走った。一瞬ここではないどこか?。パラレルワールドにボクはトランスファーされる。

一点の影もない部屋の中央のチェアーに座っている。現前の視界はモニターで覆われている。ボクが体験している世界の全てはこのモニターの中で展開されているんだ。時々夢中になって意識を喪心。パーフェクトあっち側で過ごしてることもありがちなんだけど。身体に接続してるインターフェースでモニターの中の世界の中の自分をコントロールしてる。と思われる。

不意に目の前に現れる#800じゃないディープフラット。やる気満々。殺意に満ち満ちてる。刹那ボクの右手の短銃から白い光が発せられる。ボクじゃないディープフラットはやる気満々のモチベーションの成果を全くあげることもなく。火花と共に宙に散り落ちる。南無~。さて、仕事だ!!。相手始末することより。優先順位が高いのは自分が始末されないようにすること。要は逃げることだ。レディーゴー!!。つま先にスイッチが入った瞬間。同時に#xxxのディープフラットを霧散させて。逃亡劇が始まる。逃げてるくせに結構効率よく#800以外のディープフラットを始末している。こんなに簡単になくなって逝く主体。ここに現れてくる意味があるのか?。そう生まれ落ちてきた意味なんてあるのか?。いやここで意味なんて考えていたら。自分こそが生まれ落ちてきた意味をはがされる。考えるな!。動け!。キーボードを叩くように自分のアバターをクラッシュさせていく。ことが。当面。現前。のタスク。deep flat。薄っぺらで価値のないフラットなものでも800も積み重なればそこに意味が生まれるかもしれない。でも、こうやってその意味をバタバタと倒していく。破壊と快楽。Destruction and pleasure。こうやってフラットは深みを増していく。平面に奥行きが生まれた。ように錯覚。透視図。よくできたテクニック。平面であることに変わらない。巧みでよくできたイリュージョンの中をボクは川底で水流に転げ回される石ころのように翻弄され続ける。目の前に立ちふさがる人型を木っ端微塵にしていく。走る。走る。息がきれるを通り越して筋肉の作動のスピードは加速する。仕事。はかどりまくり。ディープフラットの#番号はどんどん抵抗なく減少傾向。深みを持っていた平面は本来の平面に戻っていく。800の何分の1かわからないけど。10パー以上は消したかな?。このゲームは#800だけが他の主体を消しているわけじゃない。それぞれが消しあっている。だから、実際はこの数字以上の数が消えているはず。そんなこと感じながら。一息。なんてことやってちゃいけないな。速攻で隙をついてくるよ。パーン。一息ついてたかもしれないが、迎撃スイッチは切ってないから。即応戦。OK!。Fire!。あと何度。こういうのリピートしたらパーティーはお開きになるのかな?。

ところで醜い鳥は気味の悪い声をあげながら、まだボクを追ってきている。こいつは船員を歌で惑わせる人魚の肉を喰って永遠の命を授かったとかいうインフォメーションが掲示板に一瞬流れた記憶がある。永遠の命と引き換えに醜い鳥の姿に変えられたやっぱりみにくい屁理屈好きの女のなりの果てとかなんとか。次々と繰り広げられる活劇。滑るようにそのアクションを捉える。醜い鳥の瞳。その向こうにいるはずの視聴者の皆様に楽しんでいただけてるのか?。自分がどんなふうに映されてているのかなんて気を回す余裕なんてないはずなんだけど、ちょっとは気にしている。できるだけ派手に相手を散らすことに。手足の挙動はできるだけ遠くの軌道を描くように。身体の飛沫は目を背けたくなるほどに。Keep in mindに九品官人法。

RunRunRunRunRun。copy and pasteを秒速で繰り返してはdeleteボタンを秒速で叩いていく。モニターの文字列が瞬き揺れる。無音の空間で不穏な作業。コーラを飲みながらゲームしてるボク。800ステージももうすぐゲームオーバー。今回も難なくクリアでした。さて最後の締めに。世界を逆さまに回転させてエスケープ。一瞬の沈黙。の後。おもちゃ箱をひっくり返したような大騒ぎがCape strawberryでアウトブレイク。アンラッキーをざまみろはライトオン。日頃は意志皆無的な主体としての住民が衝動をほとばしらせる。ディープフラットを見つけ出して捕まえろ!!。SN1572追え!!。???。SN1572は追跡能力には長けているけど。捕獲作業なんてオプションついてんだっけ?。

799のディープフラットは消滅した。残存した#800は今度は別の追っ手から逃げ回ることになる。空気を斬るような羽音。不穏な重低音が迫ってくる。砂に足を取られながら遮二無二駆け抜ける。潤いのない乾いたCape strawberryの大地。張力全開を煽り立てる。シンセのベース音が猛り狂ったように響き渡る。この追跡劇には勝てそうもないなとギブアップさせるための演出か?。これがほんとのゲームオーバーなのか?。となりかけた刹那。目の前のピンク色の地面が矢印の形に数メートル抜ける。身体fall out。いやというほど光が溢れた陰影のない風景から一転。闇が支配する森。鏡のように清らかに光る池の傍に立っている。水面をゆっくりと泳いでいる水鳥。蚊柱が光の中を蠢く。生命が満ち満ちている場所。なんとも言えない懐かしい感覚に包まれる。

「800年後の1秒先で待ってる」

一秒なんてほんのわずかな時間。そう思う?。でも一秒先ってことは決して交わらない時間だよ。どうやって追いつけっていうんだい?。君に出会えることは失敗し続けているけどさ。あの不細工な鳥には毎度のことなんだけど、追いつかれちゃうんだよな。こんなに美しい世界では捕獲されたくないんだけどな。今回もゲームオーバーが近づいている。次のステージには行けないんだろうか?。それとも次のステージなんてない?。一秒先の光景には何があるんだい?。ここではないパラレルワールドがあることに薄々感じているんじゃないか?。自分に問いかけている自分。

暗転。
SN1572の視線に捕獲された。
池の水面に倒れる。
ぽちゃ〜ん。
間抜けな音が森に吸い込まれる。
ジ・エンド一辺倒。

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