【続編⑮】第五章〜第二節 「2.歩行チェック方法」 これならできる!運動指導初心者の指南書〜特定保健指導、介護予防指導などで必ず役立つ!
2.歩行チェック方法
歩行のチェックにつきましては、第四章の第二節「ウォーキングのチェック方法」で歩幅、歩行速度、心拍測定についてご案内しましたので、ここでは歩行時の「姿勢」についてお話しします。
第三章で姿勢を調える方法として「マイ・コルセット体操」をご案内しました。加齢と共に体幹の力が弱くなり猫背になりがちとなります。
また腰も丸くなったり(骨盤後傾)、膝や股関節の問題などから上体が左右に傾くこともあります。
しかし、その歪んでしまった姿勢に本人はなかなか気づけません。誰かに指摘されたり、写真やビデオなどで自分の姿を見てハッとする・・・
体重もそうですが、姿勢も一晩で変化すれば気がつけますが、そんなことはありません。事故や怪我を除いて、何ヶ月、何年、何十年の積み重ねの中で体は少しづつ変化していきます。だから自分では気が付かない。
歩行時の姿勢も自分ではなかなか見れませんね。
そこで、簡単に、しかも大勢の皆さんを同時にチェックできる方法をご案内します。
まずはペアーを組んでいただきます。一人が実施者(A)で、もう一人が観察者(B)になります。
前後左右、他のペアーとはなるべく離れてください。特に自分の立ったところから前方には誰もいない方が良いです。
BはAの近くに位置して観察しながら、Aがこのチェック中に誰かと、または何かにぶつかりそうになったら声をかけて中止してください。それまでは黙って寄り添っているだけです。
Aは、全体を仕切るリーダーの手拍子に合わせて、両眼を閉じてその場足踏みを100回行います。始める前に自分の立っている場所の確認をしておきます。立ったところで前方と左右を見て、静止物で確認しておきます。
足踏みは必ず地面から足は離して足踏みします(つま先を地面につけたままの足踏みはNG)。腕は自由に振ってもらって結構です。足踏みは頑張ることなく、リラックスして足踏みしてもらいます。意識として、「自分としてはその場で足踏みをしている」で実施してもらってください。
リーダーは会場全体を歩きながらカウントを声に出しながら100回手拍子を行ってください。全員に聞こえるように大きめの声で実施してください。
100回が終わったところで「はい、目を開けて!」と全員に声をかけます。
すると、大概の人は最初に立った位置から動いてしまっています。多くの場合は前方に移動します。さらに、真っ直ぐではなくて右方向、ないしは左方向に動きます。
加齢と共にこの移動距離が大きくなる傾向があるようです。
まっすぐ前方に進む分にはあまり問題はありませんが、左右に動いた場合は、先ほどの姿勢の問題が絡んでくる場合があります。
例えば、やや右肩が下がっているような姿勢の場合、この100回足踏み後には右方向に移動している可能性があります。あるいは姿勢には問題なくても、右足と左足で筋力差がある場合、強い足の方で蹴り出すので、弱い足の方に進む可能性があります。
左右に動く原因は、姿勢の問題や筋力、柔軟性の左右差など、しかも一つだけではなく、複数の要因が絡むことが多いと思います。
普段、目を閉じて歩くようなことはしません。当然、我々は目で外界の情報を取りながら進むべき方向に歩きます。
しかし、先ほどのチェックで右方向へ動いてしまった人の体は、本当は右に曲がっていった方が体には負担がかからないわけです。でも目を開けて歩く以上はまっすぐ前方に歩かせるわけですね。つまり、この前方に進ませることは体に負担になっているかもしれない・・・
なので、長時間歩いた時に、左右どちらかの足や膝、腰や背中が痛くなるのはそのあたりに原因があるかもしれませんね。
まずは自分の歩行姿勢のクセに気づいておくこと。そしてなるべく左右均等に体が動くようにトレーニングを行なっていくことは大切です。
1年に1回の健康診断が推奨される話はよく聞きますが、私はぜひ1年に1回は、体組成を測定してみたり、体力測定で筋力、柔軟性、バランス、歩行能力を確認していただくをことを推したいと思います!
国保であれば各自治体で、また社保であれば各職場で紹介された医療機関などで健康診断を受けるかと思いますが、この健診の時に合わせて、体組成、ロコモチェック、3分間歩行(歩行距離、心拍)、10歩歩行チェック(歩幅、歩行速度)をぜひとも取り組んでいただきたいです。