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【続編①】第一章〜第二章 「1.3つの気づきワーク」 これならできる!運動指導初心者の指南書〜特定保健指導、介護予防指導などで必ず役立つ!



はじめに

運動指導って難しいとか、自分が運動苦手だから運動指導はうまくいかないとか、そんな声を保健活動を担当されている保健師さんや管理栄養士さん、あるいは介護施設で運動指導を担当されている職員の皆さんからよくお聞きします。

私は、フィットネストレーナーとして約40年、愛知県を中心に活動をさせていただいております株式会社NPFC(通称 名古屋フィジカル・フィットネス・センター)代表取締役の長谷川弘道と申します。

このお仕事、実は私の父が1970年より始めました。半世紀以上にわたって、子供からシニア世代のみなさんまで、あまねく人たちに、いつでもどこでも誰でもできるフィットネス(健康運動)を共に実践し、健康の輪を広げてまいりました。

この半世紀の歴史を振り返ってみますと、開設当初から子供の体育教室、カルチャーセンターなどでのエアロビクス、企業内フィットネス、公民館などでのミドル、シニア体操教室を同時に展開しておりましたが、1990年代に入り、いっときのフィットネスブームが落ち着き、いけいけどんどんの華やかなフィットネスから、ミドル、シニア世代の皆さんが自分の健やかな老後に健康は必要不可欠であり、そのために運動を取り組むようになっていきました。

国も予防医学に国民が関心を持つような施策に力を入れるようになり、超高齢化社会に向けて健康寿命延伸の対策を進めるようにもなりました。

その一環として、各自治体の保健所、保健センター、あるいは介護施設においてもメタボ対策、ロコモ対策、フレイル対策の一環として運動プログラムを積極的に取り入れるようになりました。

当方も各自治体の生涯学習センター、保健センター、また福祉法人の各種施設、介護関連団体より運動指導、講習会、研修会などの講師派遣依頼を多く受けるようになりました。

そうした活動の中で、保健師、管理栄養士、歯科衛生士、介護福祉士といった運動以外の専門職の皆さんとご一緒する機会が増え、チームとしてクライアントの皆さんに保健活動を展開する中で、保健師さんたちがご自身の保健指導、支援の業務において、運動のところが難しくてポイントを教えてほしいというような場面がありました。また愛知県の健保組合さんより保健師を対象とする運動指導の研修会のご依頼もいただくことがありました。

保健師、管理栄養士、歯科衛生士、介護介助などに関わる方は女性の皆さんが多く、どちらかというと運動は苦手の方が多いようにお見受けしておりました。

もちろん、みなさん努力されて、「健康運動指導士」や「健康運動実践指導者」といった運動指導するための資格を習得される方もいらっしゃいますが、資格はなんでもそうですが、取得してからの現場での学びを通してレベルを上げていきます。

保健師さんも管理栄養士さんも、運動が専門家ではありません。機会としてもそう多くは期待できない。でも、特定保健指導の場面においては、集団指導、あるいは個別指導で運動指導をしなくてはならない場面があるわけです。

一般の方を相手に、しかも普段あまり運動を実施していない皆さんの指導になるわけですから、スキル的に難しい運動の指導は必要ないわけですが、クライアントの皆さんにしてみれば、手軽でわかりやすく、しかも効果のある運動のやり方を学びたいわけで、そこに応えることが求められます。

こうした声に、私が40年間現場で培ってまいりましたノウハウでお応えできるのでしたらとても嬉しいですし、一人でも多くの方に“フィットネス”実践の機会を提供いただける専門職の皆さんの一助となれば幸いです。

株式会社NPFC 代表取締役 長谷川弘道


目次

第一章 そもそも運動って、何のためにするんでしょうか・・・?

1.子供たちはなぜ走り回る?
2.我々は動物だった!
3.野生のライオンを想像してみてください
4.動物は無駄には動かない!

第二章 自分の体からの声、聴いていますか?

1.3つの“気付きワーク”
2.自分の体からの声をどうやって聴くの?
3.健康のための運動のポイント

第三章 健康づくりのための運動はこの3つでバッチリ!

1.禅の教え
2.名付けて、“S・K・A”運動
3.【S:姿勢】マイ・コルセット体操
4.【K:呼吸】横隔膜呼吸
5.【A:歩く】肩甲骨歩行

第四章 ウォーキング指導のポイント

1.歩行の3つのポイント
2.ウォーキングのチェック方法
3.タオルウォーキングのすすめ

第五章 体力チェックについて

1.ロコモティブシンドロームのチェック方法
2.歩行チェック方法

第六章 情報“禍”社会にあって健康を考える

1.「自分ごと」になってますか?
2.バランス感覚の重要性
3.「循環」の重要性

最後に

1.「健康になる」ことは目的?
2.粋々健幸ライフを目指して!

第一章 そもそも運動って、何のためにするんでしょうか・・・?

1.子供たちはなぜ走り回る?

 何のために運動はしなくてはならないのでしょうか?と問われたら、皆さんはどう答えられますか?

 血糖値、血圧を下げるため、痩せるため、寝たっきりにならないため、ボケないため、元気に長生きするため・・・、そんな答えがパッと頭に浮かびます。

 ではこんな場面を想像してください。

 ここは広い体育館です。そこに数名の幼稚園児たちが入ってきました。この子供達は何を始めるでしょうか?ちょっと考えてみてください。

 子育てされた方であれば想像つくかと思うのですが、この子たち、体育館に入ってきた途端にやり出すことは・・・

 走り回り出します!

 私は幼児、小学生を対象とした体育教室も長年開催してきました。毎日3歳児から10歳児前後の子どもたちと接していて、この仕事を始めた頃からの素朴な疑問が、「なぜ子どもたちは広い部屋に入ってくると走り回るのかな?」でした。

 その答えを知りたくて、走り回っている子供に聞いてみました。「何で走っているの?」って。そうしたら、子供たち、何と答えたと思いますか?

 答えはありませんでした。質問された子供は私の顔をしばらく見て、何も言わず、また走り始めました。

 質問された子は私に意地悪したわけでも何でもなく、ただ、「そんなのわからない!」ということなんです。

 つまり、子供たちにとって、走り回ることに理由なんてないんですよね。ただ、広い場所があって、なんか走りたくなっちゃうわけですよ。

 これが、体育館を走っている大人の方だったら、「なぜ走っているんですか?」と聞けば、先ほどのような答え、痩せるため、体力つけるためといった返事が返ってくるでしょう。大人は走ること、あるいは運動することには何か理由があるわけです。

 でも子供達が走ることにはそんな理由はないのです。走りたいから、動きたいからやっている、ただそれだけ。

運動というものは本来、この子供たちがやっている通り、「〜のためにやる」ことではないのではないかなと思うのです。

2.我々は動物だった!

 我々は「動物」ですね。「動くもの」です。幸運なことに五体満足な体を持って生まれることができたならば、生まれた直後は寝たままですが、間も無く寝返りを打ち、首が座って座ることができるようになり、概ね1年ほどで立って、自由に歩き走ることができるようになります。起き方も、座り方も、立ち方も、歩き方も、走り方も誰からも教わることなくできるようになりますね。人間、動物として生まれた以上、そうした機能はこの体にインプットされているわけです。

 「動いてナンボ(急に関西弁で失礼します)」の世界なんですね。ですから、年齢とともに足腰が弱り、歩く、立つことができなくなり、座る、寝るようになれば、「動物としての使命は終わりました。ご苦労様でした」ということでお迎えが来るのでしょう。

 我々人間にとって、動くこと、運動することは当たり前ということを改めまして認識していただけましたでしょうか。

 でもここで素朴な疑問が湧いてきませんか? 

 「動くこと、運動することが当たり前のことなら、なぜこんなにも動くことが面倒くさいとか、やりたくない、って思ってしまうのか?」

 そうですよね。動くことが本能の動物なんですから、動くことは本能に従うことで、喜んでやることなのではないかと・・・

3.野生のライオンを想像してみてください

 ではここで、また想像してください。

 ここはアフリカ。広い草原地帯です。あなたはライオンを見つけました。そのライオン、今、何をしていますか?

 寝そべっている姿を想像しますか?それとも、獲物を追いかけているところを想像しますか?多分。このどちらかの姿を想像したのではないでしょうか。

 おそらく、最初の「寝そべっている姿」を想像した方が多いのではないでしょうか。

 ライオンの生態を知りませんので間違っていたら申し訳ありませんが、昼中にライオンを観察したらおそらく獲物を追いかけている時間よりも、寝そべって休んでいる時間の方が圧倒的に長いのではないでしょうか。

 その理由は、ライオンは武器を使って獲物を仕留めるわけではありません。低い姿勢をとり、ゆっくり忍び寄って、一気に飛びかかり、逃げる獲物を全速力で追いかける。それで仕留めることができればラッキーですが、逃げられることもあるわけですから、また全力で走り続けることになります。

 つまり、獲物を狩るということはへとへとになる大仕事。疲れるわけです。筋肉痛だから今日は休むわ、とはならない。だって、食べ物がないということは死を意味するから。自分はもちろん、家族も死に追いやることになるわけです。それは種の絶滅を意味します。生き物は生きようとします。何としても個は生き延びようとし、次期世代に命を繋いでいくことが究極の使命ですから、動物は自分の体を動かし獲物を仕留め、他の命をいただき生きていきます。

4.動物は無駄には動かない!

 動物は動くことなくしては生きていけないけれど、同時にエネルギーを使う場面であり、そのエネルギーが枯渇した時は力尽きるか、その前に他の動物に食べられてしまうということです。

 ですからライオンは無駄に動くことはしません。なるべくエネルギーを温存し、必要な時に、必要な分だけ動いて獲物を仕留めるようにします。

 先程、草原のライオンを想像した時に寝そべっている姿を想像した方は、ライオンはのんべんだらりと生活できていいな、なんて思ったかもしれませんが、動かないのはサボっていたわけではなく、エネルギーを無駄にすることなくいざという時のために準備していたんだとご理解いただけましたでしょうか。

 さて、では現代社会に生きる我々の生活を観てみましょう。

 今朝朝ごはんは食べましたでしょうか?お昼ご飯、夕ご飯は?忙しくて1食くらい抜けることはあるかもしれませんね。でも抜けたらその分しっかり食べますよね。ちなみに、そのご飯、汗水垂らして、全力で走って捕まえた獲物でしたか?そんな人、この日本社会のどこを探してもいませんよね。それどころか、ソファーに座って、指1本で注文すれば、その場所まで食べ物が運ばれてくる世界に我々住んでいますね。せいぜい、ソファーから注文したものが置かれた玄関先までの1往復歩いたことが〝動いた〟ことになりますでしょうか。

 我々人間は先のライオン同様に動物です。ですから、基本的にエネルギーの枯渇、つまりお腹が空くことは本来は死活問題です。逆に、食べてお腹が満たされることは大いなる喜びになるわけです。ここで、野生のライオンであれば、また数日後には全エネルギーを費やして獲物を仕留めなくてはなりませんが、我々人間はまたまた指1本、ほとんど動くことなく食べ物にありつけます。

 ですから、人間も動物であるがゆえに、なるべく動かずエネルギーを蓄える。でも、動かなくてもいつでも食べられる。だから人類史を振り返った時に、その大方の時間は我々人間も野生のライオンのように肉体を使って食べ物を獲得してきたのですが、長い人類史において針の穴程度の時間の中で、機械文明の発達とともに肉体を酷使せずして大量の食べ物を簡単に得ることができるようになってから、その長い歴史の中で動物として培われてきた人間の肉体が、短い時間の中で激変した新たな生活習慣に対応できず、これまでの人類史上ではみられなかった肥満、そして生活習慣病というものが出現したわけです。

 動物にとって動くことは本能であり、生きる(獲物を確保する)ために必須のことではあるけど、なるべく無駄なく動くことが求められるわけです。ですから動きたくない、じっとしていたいと感じることは、動物としてごくごく当たり前のことなのです。でも、野生の動物なら動いて獲物を捉える時にエネルギーを費やし、ここでエネルギーの収支のバランスを取っているのですが、現代人はエネルギーの支出が少ないので肥満という事態を招くわけです。

 運動嫌いとか、三日坊主で続かないとかで苦労されている方々を指導、支援する立場の皆さんには、まずは「運動は大変だ!」と感じることは普通のことで、その理由は動物として致し方もないことなんだというを認識した上で、運動嫌い、運動は苦手という皆さんをお迎えいただきたいのです。

第二章 自分の体からの声、聴いていますか?

1.3つの“気付きワーク”

 突然ですが、今から3つ実験しますのでお付き合いください。

 では一つ目の実験です。

 体の前で腕組み(考える時のポーズ)をしてみてください。何の問題もなくやれましたね。そのままその腕組みを見てください。右腕が上になっていますか?それとも左腕が上ですか?確認ができましたら、上になる腕を左右逆にしてみてください。

 一瞬迷われたかもしれませんね。1周して最初と同じ組み方になってはいませんか?(笑)

 左右逆にした腕組みにすると違和感がありませんか?その逆の組み方は意識するからできましたが、何も考えない、つまり無意識であれば必ず最初にやった時の組み方になっているはずです。

 二つ目の実験です。

 タブレットのガムを一つ、口に入れたと想像してください。噛んでください。最初の一噛みは右の奥歯でしたか?それとも左でしたか?このように聞かれれば、右だ、左だと答えられますが、普段何気に口に放り込んだガムを右奥歯で噛むか、左奥歯で噛むか判断に時間をかけることはしませんよね。

 では最後の実験です。次の文章を読みながら同時に動いてみてください。

 椅子に腰掛けてください。では立ち上がって数歩、歩いてみてください。はい、ストップ!!

 今椅子から立ち上がって歩き出した時、最初の一歩目は右足でしたか?それとも左足?

 「あれ、どっちだったかな?」と思った方も多かったのではないでしょうか。そうですよね。そんなこと、普段の生活でいちいち確認するようなことはしませんからね。

 今、3つの実験にお付き合いいただきましたが、腕組みも、噛むことも、踏み出した1歩目の足も、あまりにも当たり前のことで、生活の中でその動きをいちいち確認することはしませんね。

 そうなんです。我々はほとんど自分の体の動きを普段確認することはしません。というか、意識せずとも自動的に動いている、といった方が正しいでしょうか。

 「自動的」ということは、言い方を変えれば「考えることなく」ということです。「考えることなく」は「判断しない」ともいえます。実はこの「判断する」作業は頭のエネルギーを消耗します。ということは「疲れる」ということです。あるいは「お腹が空く」ということです。

 先にも述べましたが、動物はなるべくエネルギーを枯渇しないように無駄のない行動をとります。ですから、自動的に動いて問題ないことはエネルギーを消耗する「判断」を省いて、合理的に体を動かします。

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