見出し画像

LAMY safari(ラミーサファリ)

LAMY safariのインプレッション

 今回は、リーズナブルな価格でカジュアルながら品質の高い万年筆として人気の高いドイツのLAMY safariのインプレッションをお送りします。

LAMYとは…

 LAMYはドイツ南西部のハイデルベルクを拠点とする筆記具のメーカーで、1930年に同地で家族企業として創業されました。以来、LAMYはその独創的なデザインと質の高さの追求によって、現在では世界中で親しまれるブランドとなっています。

 ハイデルベルクの社屋では400人足らずの従業員が製品に使う素材やパーツ、金型などの95%を生産しています。このようにすべてを自社で一貫生産しているメーカーは少なく、特に5000円前後の価格帯で一貫生産というのは稀だといえます。多くはボディーのみを作りペン先は専業メーカーから仕入れて自社ブランドとして販売したり、人件費の安い国の工場で生産して価格を抑えたりしています。

手作業

 もちろんLAMYも製造工程にはオートメーションは導入されていますが、それでもなお手作業によるウエイトに比較的重きを置いています。さらにLAMYの製品は品質管理の上でも、専門スタッフの目視と機械の両方による厳しいチェックを経て、ようやく工場より出荷されます。

 このように機械に任せる部分は機械に任せ、必要なところには人的リソースを投入するというメリハリの効いた製造方法を採用することにより、生産効率の向上を実現しながら低価格でも高い品質の製品の提供を可能としています。このあたりにもLAMYの合理性を追求する企業姿勢が現れています。

フリーランスのデザイナーとのジョイントプロジェクト

 LAMYのHPには「プロダクトデザインは社内の専門部門で行うべきか? それとも外部のデザイナーに依頼するか? こうした事柄は、LAMYにとってはまったく問題になりません。」とあります。さらには、「LAMY新時代の筆記具は、フリーランスのデザイナーとのジョイントプロジェクトによって生まれています。」と、外部のデザイナーによってデザインされていると明言しています。

 伝統やブランド特有のアイデンティティのようなものを重視する万年筆メーカーが多数を占める中、LAMYは機能を優先していくという路線を打ち出したことが斬新であったといえます。LAMYは1960年代から同業他社との差別化をはかり、「機能によってかたち作られるデザイン」というバウハウス(※)のコンセプトを掲げ、革新的な筆記具メーカーとしての道を歩みだしたことが、LAMY独自の個性の裏付けとなっているといえましょう。

※バウハウス:1919年、ワイマールに開校された造形芸術学校。15年に満たない活動期間ながら、本校で追求された合理的・機能主義的でシンプルな造形理念は、現代では普遍的なものとなっている近代建築や工業製品デザインの確立に大きな影響を与えています。2019年にはLAMYでも「バウハウス創立100周年記念モデル」を限定製作していました。

Wolfgang Fabian

 LAMY safariは1943年生まれの工業デザイナーWolfgang Fabian(ウルフギャング・ファビアン)によってデザインされました。1980年に登場以来、軽快な樹脂素材と斬新なカラーリングで若者をターゲットにした先駆的なデザインは、当時大きな驚きをもって迎えられましたが、現在では「ドイツで最も売れている万年筆」(F.A.Z.誌 2018年)と称されるにとどまらず、永遠の定番として世界中で愛されています。

 LAMY safariは随所に実用的な特徴がみられ、従来の伝統を重んじる「万年筆」のデザインから比べると斬新なデザインとなっています。このことが最大の特徴であり、LAMYの万年筆らしさでもあります。

サファリ1

細部へ迫る

 それではLAMY safariの細部を見ていきたいと思います。使用感や感想はあくまで筆者個人の感想ですが、何らかの参考になればうれしいです。

 まずはキャップに取り付けられている大型のワイヤー製クリップが目につきますが、このクリップがsafariらしさを醸し出している部分にも思えます。これはアウトドア向けにも対応するべく、厚手のポケットなどにでもしっかり差し込んでおけるよう設計されたもので、野外で記録をとるときなどに作業服のポケットから取り出して書き込みをしていく、そんなイメージが似合います。

握りの部分

ボディーの握りの部分は。誰もが正しくペンを握れるようにくぼみが設けられています。ヨーロッパでは、小学校で万年筆を使っての書き方を教わります。正しい持ち方を習慣付けさせる意味もあるそうですが、その扱いやすさもあってそのままずっとリピーターになる人も多く、全世代に多くの愛用者がいます。

ボディー全体

ボディー全体では平面と半円が組み合わさった形状になって机に置いても転がらないようデザインされています。海外のユーザーはキャップを外して筆記することが多数派なため、とても実用的な形状をしているといえましょう。

YouTubeでは…

余談になりますが、試しにYouTubeの万年筆の動画を検索してみますと、日本の投稿ではたいがい外したキャップを軸に差して筆記しているのですが、海外のものだとキャップを外したまま筆記しているものが比較的多く見受けられます。

サファリ2

 カートリッジの部分には小窓が開けられインクの残容量が確認できます。大胆にボディーをくりぬいていますが、とても見やすくコストと機能が優先されたシンプルなデザインとなっています。

コンバーターにも…

 専用のコンバーターには小さな突起があり、差し込むと万年筆側にある溝と合致します。一度差し込むと他のメーカーの万年筆よりコンバーターは外しづらいですが、差し込みが緩くなったり、吸入する時にコンバーターが回転したりするのを防止しています。

最後に

 最後に書き心地ですが、鉄ペンの感触ではありますが、とてもなめらかに書くことができ、持ち方も矯正されるため正しく字を書いているという意識が持てます。

多様なシチュエーションで使ってみたくなる万年筆です。

編集後記 第11回

「編集後記 第10回」の答え画像

P_20210706_170619_vHDR_Auto-補正済


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?