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「万年筆」の重要部分ってどこだと思われますか?

光り輝くペン先

万年筆を象徴する部分として、まずは光り輝くペン先を思い浮かべるのではないかと思います。製品によっては美しい模様が刻まれたりして筆記具の王者の佇まいを醸し出しています。

しかし、万年筆にはもう一つ重要な部品があります。

「ペン芯」

それは光り輝くペン先の裏側についている黒い樹脂の部品「ペン芯」です。

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万年筆で字が書ける重要な部分を担っているのは、この「ペン芯」に備わった仕組みにあるのです。

たくさんの溝

「ペン芯」にはインクを紙に送り続けるためのたくさんの溝があります。
・インクを流す溝。
・ペン先にインクが流れた分だけ空気を取り込むための溝。
・櫛溝とよばれる、インクが出過ぎたときのための調整機能の溝

「毛細管現象」

これらの様々な溝は、仕組みも複雑で繊細な部品ですが、それぞれの溝には「毛細管現象」を利用した役割があるのです。

全体としてなんとなくはわかるのですが、よく万年筆を語る時に使われる「毛細管現象」って?と聞かれても、よくわからないという方は多いのではないでしょうか。

「毛細管現象」の仕組みを詳しく知るには物理や自然科学の知識が必要でとても奥が深いのですが、万年筆について応用できる部分だけ取り出してみます。

※毛細管現象:毛細現象ともいい、液体の中に細い管を立てると、管の中と外で液面の高さに差ができる現象。紙では繊維のすき間がこの細い管と同じ働きをします。(プラチナ万年筆様のホームページより引用)

「毛細管現象」とは

水などの液体は、狭くて細い方へと入りこんでゆく性質があります。

「染み込み」の原理

紙や布などを水面に垂らすと、水面に触れていないところまで染み込んで、濡れた部分がどんどん上がってきます。ざっくりいうと、この「染み込み」の原理である、毛細管現象を利用しているのです。ペン先が下を向いていても、インクが零れ落ちないのはこのためです。

まず、溝の入ったペン芯を通じてインクがペン先に集められます。そして万年筆のペン先に紙を当てた時に、インクはペン先の溝より細かい紙の繊維の方へと引き出されるのです。この時、引き出されたインクの分だけ、空気がインクスペアの中に入り、インクを常に途切らすことなくペン先へと送ります。また、インクが出過ぎた時にも、ペン芯にある櫛溝(くしみぞ)と呼ばれる部分に一時溜められ、ボタリと落ちるのを防いでいるのです。ここの手入れの良しあしで、書き味にも相当な影響が出てきます。

このように、櫛溝、インク溝、さらには書かれる紙にも毛細管作用が働いているのです。

かなり説明が長くなってしまいましたが、万年筆と紙の双方の毛細管現象の利用で文字が書けるということのようです。

筆者お勧め万年筆
「セーラー万年筆 プロフェッサー ブラック」

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保険外交員ルイス・エドソン・ウォーターマン

この仕組みは1884年に、アメリカの保険外交員ルイス・エドソン・ウォーターマンが、万年筆からインクが漏れたことにより大口契約を逃してしまった経験をもとに、改良した「ペン芯」を発明して以来続く技術で、現在の万年筆の基礎となっています。このように、万年筆としての製品の完成度には、長年のメーカーの研究開発の歴史があるのです。

参考
プラチナ万年筆様ホームページ

編集後記





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