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-特集「ガラスペン」-

 今まで9回にわたって、万年筆とインクについて書いてきました。万年筆とインクの関係を振り返ると「つけペン」にたどりつきます。万年筆はつけペンをより機能的に発展させた筆記具なのです。

 つけペンの歴史を振り返ると、鳥の羽根を利用した「羽根ペン」からペン先が金属へと進化し万年筆の原型となり、その後インクの保持機能を持たせた万年筆へと発展してきました。

 しかし逆にインクの保持機能が無いほうがありがたい、よりインクをダイレクトに扱いたいというニーズから、ペン先にガラスを利用したつけペンである「ガラスペン」が注目を集めています。

そこで今回は「ガラスペン」について書いてみます。

インク、どんな色なの?

 多種多様なインクのバリエーションが万年筆の魅力のひとつになっていることは、以前にも何度か述べましたが、実際にインクを選ぼうとなると、はたしてどんな色なのだろう?と、何種類かのインクを比べてあれこれと試したいものです。ただしそのような場合、インクがペン先で混ざらないようにいちいち洗浄するのは手間がかかるものです。またインクによっては、なかなか洗浄しきれない色もあります(赤インクなどはその傾向が強いです)。

ペン先のみがガラスで軸は竹?

 そこで、洗浄の簡単で試し書きに適したペンはないだろうか?ということを模索することになります。そのような時にお薦めしたいのが、つけペンの一種である「ガラスペン」です。その名の通りガラスで出来たペン先のペンです。ペン先のみにガラスが使われ、軸は竹や木、セルロイドの製品もありますが、現在はすべてガラスで一体成型されているものが主流になっています。

 ガラスペンは1902年に風鈴職人の佐々木定次郎氏によって日本で考案されました。当時はペン先のみがガラスで軸は竹でした。その後1989年に佐瀬工業所の佐瀬勇氏によって、ペン先からペン軸まですべてガラスで出来た一体型のガラスペンが作られました。一体型のガラスペンは見た目が美しく、工芸品としても評価されています。

静かなブーム

 従来から、日本のみならずヨーロッパなどのメーカーからも美しさと機能性を追求した製品が出されてきましたが、昨今では「ガラス工芸作家」の方々による作品も発表され、ペン全体の美しさに魅了されてユーザーとなった方も多く、ガラスペンが静かなブームともなっています。

 また、ガラスのペン先は金属製のものよりもインクの取り回しが楽なので、筆者はおもにインクの試し書き用という用途で使っていますが、多様なインクを使いたいという方や、マンガやイラストを描くために使用するなど、実用面からガラスペンを選択する向きもあります。

レビュー

 では、実際にガラスペンとはどのようなものかをレビューしていきます。以前ガラスペンを使用していたことがあったはずなのですが紛失してしまい、改めて購入し直してレビューを行いたいと思います。

 使用するガラスペンは「ピエール・カルダン ガラスペン DUO3」。税込み1,650円とリーズナブルな価格のものです。ガラスペンを製作しているメーカーは多数あり、価格も通信販売で数百円のものから、2~3万円超のものまでありますが、実店舗で販売しているところは少なく、あったとしても1、2社の製品のみを置いている場合がほとんどで、購入に際してはそれなりの情報収集能力が問われるところです。筆者の場合、価格も手頃なものを取り扱っており、製品の質もそれなりに保証されているだろうということで、近くの有名デパートの文具売り場で購入しました。

写真1-2-補正後

 まずペン先にはチューブが付いています。このチューブは捨てずに使用後にまた被せてペン先の保護用に使うことができます。ただ、きつく嵌めてしまうと外す時にペン先を握って折ってしまうこともあるので、切り込みを入れるなど緩めにして使うようにします。
 ほかには紙やすりが一つ付属しています。これはペン先の調整に使用するものです。ガラスペンは一般の万年筆と違い、使用していても成長しないので、ペン先調整に紙やすりを使います。しかし私はまだペン先を調整するまでの域に達していないので未使用のままです。

「ガラスペン」使用時のひと工夫!

 ガラスペンの先端は非常に細く、壊れやすいので、取り扱いには細心の注意が必要です。インクに付けるとき不用意に瓶の底にペン先をぶつけないようにしなくてはなりません。ガラスペンを常用している方の中には瓶底にスポンジを落として、ひと工夫するケースもあるようです。

 またインクをつけ過ぎたとき、瓶の口にペン先を当ててインクを落とすこともNGです。付け過ぎた時はヤレ紙(使用しないで捨てる紙)に少し書くなり、キッチンペーパーなどにペン先を付けてインクを吸い取り調整します。

一回インクでの文字数、文字の太さは?

 インクにつけるとペン先にある溝に毛細管現象によりインクがペン先に吸いつきます。一回インクを付けると、だいたい100文字程度は書けます。ただ、それ以上書くとインクのフローが悪くなりストレスを感じるようになりました。文字の太さはペリカンスーベレーン400細字と同じくらいです。
 また、使い終わった時や、違うインクに替える時にはペン先を水で洗うのですが、インクは簡単に落ちるので、すぐに透明なガラスのペン先に戻ります。

写真2-2-補正後

筆者の感想

 書いてみての感想としては、インクがすぐ垂れてしてしまうとか、すぐ書けなくなってしまうということはなく、長文を書くには向かないにしても、色々な色のインクを使いたいという時はかなり実用的な筆記具だと言えます。
 ガラスペンは、インクを付ける量やペン先を調整すれば、もっと書き心地の良くなる余地はまだまだあると思います。インクの色をダイレクトに楽しみたいというニーズに対してかなり有効なアイテムとなるでしょう。

編集後記 第10回


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