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教養としての近代日本史/NewsPicksアカデミア 猪瀬ゼミ

2018年4月から7月にかけて開講されてきたNewsPicksアカデミア 猪瀬ゼミ。これまで、ゼミの内容についてはあまりオープンになっていませんでしたが、今回は、7月13日(金)に行われた「NewsPicksアカデミア ゼミ対抗プレゼン大会」の模様を中心にその中身について触れていきたいと思います。(小林健介)

猪瀬ゼミでの学びとは

「教養としての日本近代史」というサブタイトルのついた猪瀬ゼミ。猪瀬さんの著作『昭和16年夏の敗戦』、『構造改革とは何か』、『ミカドの肖像』、『土地の神話』、『欲望のメディア』などを題材に日本の近代について深く学んできました。

キーワードを並べてみると、「空虚な中心」、「忖度」、「日本型の縦割り社会」、「御真影」、「Freedom of Press」、「霞ヶ関、永田町、虎ノ門のトライアングル」などなど。

「過去よりも、今とこれからのことのほうが大切だろう」と、そんなふうに考えていた時期が私にもありました。私以外にもそのように思う方も多いのではないかと思います。

日本の近代を学ぶ意義とは何なのか。猪瀬ゼミで学んできたこととは何なのか。

「NewsPickアカデミア ゼミ対抗プレゼン大会」において、ゼミ生を代表してグロービス経営大学院のプロフェッサーである金子浩明さんがアツくプレゼンをしてくれました。以下、その内容を紹介します。

物事を構造的に捉える

現代に生きる我々は、日々いろいろなニュースを目にします。しかしながら、そのニュースに対して、正しく構造を理解していると言えるでしょうか。なんとなく表面的な反応をしてしまってはいないでしょうか。

たとえば、なぜ大手メディアは福田前財務次官のセクハラ問題を自ら告発しなかったのか。なぜ忖度によって問題が起きているのか。

官僚だけでなく、東芝の不正会計問題など民間企業も同様です。

こういった現代に起こっているニュースは、何らかの構造を持っているはずなのに、我々はなかなかその構造を捉えることができず、表面的に捉えがちです。

他にも、ニュースだけではなく、我々の中で常識になってしまっている”当たり前”を疑ったことがあるでしょうか。

なぜ日本では数年に一度免許証の更新が必要なのか。それにより誰が儲けているのか。

なぜあれほど頻繁に車検が義務付けられているのか。日本車は性能がよいので、そこまでしなくても十分走ります。でも車検が必要なのはなぜなのか。

眞子さまの婚約者 小室圭さんは今夏アメリカ留学に旅立ちます。なぜこの2人は今結婚ができないのか。恋愛結婚なのだから自由に結婚すればいいのではないか。我々はどこかで、日本の皇室はイギリスのヘンリー王子のような自由恋愛をしてはいけないと思ってしまっている。そこには何か我々自身の皇室に対する見方がある。

構造がわかっていないと表面的な反応をしてしまいます。

猪瀬ゼミでは、こういった事象を「複眼的に捉えること」を学びました。複眼的というのは、今起こっていることの裏側の構造を捉えること。そして歴史的な流れの中に位置付けることです。

物事を歴史的な流れで捉える

我々は、戦前と戦後で第二次世界大戦を境に全てがガラッと変わったと教わってきました。しかし、必ずしもそうではありません。

たとえば、官僚主導の国家運営というのは戦前戦後ほとんど変わっていないのです。

「法令」と「勅令」というものがあります。法令とは法律、勅令とは君主、つまり天皇が下す命令です。

多くの人は、戦前の日本に対し、今の北朝鮮のような君主制のイメージをもっているように思います。ただ、実際には日本では、戦時中も天皇の勅令というのは基本的に官僚が決めていました。官僚が決めて天皇が認める形です。では、現在の法令はどうか。一見、我々が選挙で選んだ議員が決めているように見えるけれども、実際には議員立法などほとんどありません。つまり官僚が国会を通して作ったものと言えるのです。

どちらも官僚主導です。

福田前次官のセクハラを大手メディアが告発しなかった理由は何なのか。あるいは東京医大の裏口入学もここに通じるかもしれません。このようにニュースの裏側が見えてきます。

西武グループの創始者 堤康次郎は大正時代に軽井沢の土地を買い占め、そこで別荘の分譲を始めました。別荘地の分譲が始まるということは、大衆社会の到来を意味します。さらに彼は、大正から昭和の初期に、大泉学園や国立、小平あたりの宅地開発を行います。この時期にはすでに大衆社会が到来していたことがわかります。

昭和天皇は軽井沢でゴルフをされていました。皇太子さま(※現天皇陛下)と美智子さまとの「テニスコートの恋」も軽井沢でした。

皇太子さまが宿泊されていたのは、旧朝香宮別邸のあった場所に建てられた千ヶ滝プリンスホテル。これにより堤康次郎と皇室との関係が密接になっていきます。プリンスブランドのホテルは、旧皇室の土地に建てられたものなのです。

皇太子さまの恋愛結婚によって、皇室が庶民に降りてきた。戦前と戦後で連続する大衆の時代が読み取れます。

一方で、非連続なものもあります。

明治天皇の御真影はキヨッソーネというイタリア人によって描かれた肖像画です。御真影は複製技術革命によって広まります。また、「富士山」、「松」、「日輪」という風景シンボル群も複製技術の成果です。日本人の心象風景のように思われがちなこのシンボルは、実は明治時代に作られたものなのです。

ここには江戸時代と明治との断絶があります。

平成30年の終わりにあたって、「現在」と「歴史」を複眼的に視る。近代の超克とは何か、日本人の未来はどうなるのか。今後もみなさんと一緒にさらに深く学んでいきたいと思います。

* * * *

各ゼミ趣向を凝らした熱いプレゼンで大いに盛り上がったプレゼン大会でしたが、猪瀬ゼミが接戦を制し優勝することができました。

思えば、猪瀬ゼミの最終回、最後の最後に学んだことは「偶然の必然」というメッセージでした。「その人しかいない」、「自分しかいない」という個人の役割が必要な場面がそれぞれに必ず訪れる。偶然のようでいてそこには必然性があると。

今回、猪瀬ゼミのプレゼンテーションは、映像(この記事の前半にあるもの)+トークという構成。ゼミの中には、映像編集に長けたメンバーがいて、トークに長けたメンバーがいました。熱量高く企画を推し進めた人や、当日参加できなくてもオンラインでアイデアをくれた人、ムードメーカー的に盛り上げてくれた人もいます。

個人の役割が絡み合ってもたらされた結果は、ゼミ最終回で学んだ「偶然の必然」そのものだったように思います。

みんなで勝ち取ったNo.1!

勝利の美酒&居酒屋講義最終章

猪瀬ゼミ集合写真

文:小林健介

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