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「モノからコト」から「コト付きのモノ」へ──『D2C』#4

D2Cは、単なる「中抜き」ではない――。その本質は「顧客との関係性の変化」にこそある。
「ストーリーテリング」×「テクノロジードリブン」
「ビジネスのルールを書き換える2つの潮流をかけ合わせた、今投資家が最も注目するビジネスモデルの全貌と、立ち上げの具体論とは。『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』の一部を、特別に公開します。

私たちNewsPicksパブリッシングは新たな読書体験を通じて、「経済と文化の両利き」を増やし、世界の変革を担っていきます。

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1章 D2C が生んだパラダイムシフト(1/3)

 ここまで D2C ブランドと伝統的なブランドの比較を行ってきたが、より 大きな視点で、長期的な消費トレンドから D2C の位置付けを考えてみたい。

 一般生活者の消費スタイルの変化を表すために「モノからコトへ」という キーワードが喧伝されて久しい。消費者は、自動車、洋服、アクセサリーな ど「モノ」の消費に価値を感じなくなり、旅行、友達との食事、ヨガや読書 など「コト=体験」の消費により大きな価値を感じるようになってきてい る、という説明がよくなされる。

 こうした動きは、様々な統計によっても裏打ちされている。たとえば、日 本でも 30 歳未満の人の 1 ヶ月あたりの洋服の消費は、1999 年から 2014 年の 間に男性は約半減、女性は 4 割程度も減少しているという。また、モノを所 有することが幸せだと感じる人は 4 割しかおらず、得られる経験に対してより多くのお金をかけたいと答える人が 7 割弱にも上る、というデータもあ る。ミレニアル世代以下の読者であれば、データに頼らずともこうしたトレ ンドはいち生活者としての肌感覚とも整合するはずだ。

 Facebook や Instagram を見る限り、高級車やハイブランドのファッショ ンアイテムやアクセサリーなど「高いものを買った」ことを見せびらかすよ うな顕示的消費をする人はとても少なくなった。それよりも、旅行やバーベ キューに行く、ピラティスに行く、楽器を習い始める、などの体験を通して 豊かなライフスタイルを手にすることに価値を見出す投稿が増えている。

 「モノからコト」は、あらゆる業界を飲み込む非常に大きな消費トレンド となっており、「モノ」を扱う業界は、いくつか小さな成功は見受けられる 一方で、総体としてはダウントレンドだ。消費者の価値観の変化に加え、日 本では人口減少の影響もあって、モノだけを扱う業界は必然的にそのサイズ を縮小していく。こうした傾向もあり、「モノ」を扱ってきたメーカーが
「コト」を始める事例がここ最近増えてきた。ここでいう「コト」とは小売、飲食、宿泊、金融、教育、医療、エンターテインメントなど、モノを伴わずに提供できるすべてのサービスを含む。

-トヨタがモビリティーサービス(自動車を移動や輸送の「手段」と
  位置づけるサービス)を始める
-Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)がホテルを始める 
-Appleが音楽配信サービスを始める

 こうした事例はすべて、モノを扱ってきた企業の「コト化」を表している。一方で、D2C ブランドは上記のトレンドに反し、メガネ、スーツケー ス、洋服、スニーカーなど「モノ」を売る会社だ。

 「モノからコトへ」という大きな消費トレンドの中で、D2C の勃興はどの ように解釈したらいいのだろうか。

 結論から言うと、D2C は「モノからコト」から「コト付きのモノ」へと いう新たな流れを作っている。

 スーツケースの D2C ブランドである Away は、「旅」に絡めてポップアッ プのホテルを開き、Casper は「睡眠」に絡めて、25 ドルで 45 分間の仮眠を 取ることができるThe Dreameryというデザイン性の高い睡眠スポットを ニューヨークの中心部で展開している。

 D2C は「モノからコトへ」という消費トレンドの “ シフト ” ではなく「コ ト付きのモノ」という “ 積層 ” によって、新たな価値を提供する。

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 優れた顧客体験を提供する、インターネットサービスであるという「コ ト」的な側面を持ちつつも、リアル店舗を持ち、実質的な「モノ」を核とし ながら世界観を作り込む。顧客との関係性をより深め、紡いでいく。このハ イブリッド性にこそ、D2C の強みがある。

 本章では D2C の「本質」を、事例とともに明らかにした。次章からは、 D2C を既存のブランドと比較したときの大きな特徴となる「世界観」につ いてより深く掘り下げていきたい。

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はじめに
1章 D2C が生んだパラダイムシフト
2章 「機能」ではなく「世界観」を売る
3章 「他人」ではなく「友人」に売る
4章 D2Cの戦略論
5章 D2Cを立ち上げる(スタートアップ・ 大手ブランド・大手小売)
6章 D2Cの先にあるもの
おわりに