家族への感謝を成長の糧に -新事業挑戦への軌跡-

NewSchool 30代社長創出プロジェクトの事業計画書ピッチの中で類いまれな行動力を称賛され、新設された「特別賞」を受賞したのがリクルートのホットペッパービューティ事業の木下直美さん。その行動力の背景には親に対する深い感謝の念があると言う。

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家族から学んだ起業のリアル


仕事に関する意識は両親からの影響が大きい、と木下さんは言う。

木下さんの父親が産業廃棄物回収の事業を行っており、その背中を見て育った。子供の時から会食や打ち合わせ等に同席する機会もしばしばあった。自ら責任を背負い、素早くアクションを取る両親の姿を見て影響を受けたという。

ただ、事業運営は簡単なだけではなかった。同じく自身で事業を行っていた木下さんの親族が事業に失敗。裕福な生活が一転する姿も見ることになった。幼いながらに苦境に陥る家族を見ながら何も出来ない自分が悔しかった。

また、経営に専念する父に迷惑をかけないよう一人で自分を育ててくれた母親にも強い感謝の念があるという。木下さんの母は元々台湾にルーツがあり言語を学びながらの異国での子育てだった。今となってはどれほど大変なこだっただろうかと思うが、木下さんの記憶の中で母親が弱音を吐いた姿は全くなかった。

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両親はやりたいことは全てやらせようとしてくれた、と木下さんは言う。幼い頃、10を超える習い事を受けていたが、あとで親に訊くと木下さん本人がやりたがるものを全て習わせていた結果、それだけの数になったと言う。

だから、両親がやりたいことを叶えられる人間になりたい。そして、そのために必要な成功を果たしたい、と思うようになった。

自分は成長できているのか?

木下さんが一社目に入社したのは財閥系不動産会社の売買仲介業だった。家という人生における一番高い買い物の場で、人に役立つ仕事がしたい。また、財閥のブランドを背負い高価格製品を販売する場で成長したいという想いも強かった。

ただ、性別、年齢により不当な扱いをされることもあった。特に印象に残っているのはある同業者の不動産業者から受けた「あなたは若いから営業に向いていない。辞めるべきだ。若い女性で資格もないあなたに指示されたくない」という言葉だった。悔しい思いをした木下さんは宅建の資格を取り、話し方を徹底的に研究した。そして、最終的に千人を超える営業組織の中で、月間全国3位の結果を出す。

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次に選んだ仕事はホットペッパービューティー。商材を有形商材から無形商材に変えることでのスキルアップを目的にしていた。ここでも、木下さんは、持ち前の行動力で結果を出し、美容業界の経営者から店舗の幅広い経営課題を直接相談されるようになる。全国営業の中で通期TOP10の実績を残し、部下もつくようになった。

様々なものにチャレンジして、それを身に着けていく体験は単純に楽しかった。自ら描いた成功へ向け、一つ一つ素早く行動を回して成長へとつなげていくことは自らに合っていると木下さんは言う。

そんな中、2019年に木下さんは腰の怪我で大きく体調を崩す。一カ月近く動けない中、強く感じたのは悔しさだった。これでは、親へ恩返しをするというゴールへ近づくことが出来ない。悔しくて、涙が出た。事業に失敗した親戚の後ろ姿を見たときに似た、進む先の見えない無力感だった。

時間は有限だと強く感じた。だからこそ、もっと早く成長したい。

そう思った時、自ら事業を立ち上げている仲間や人生の先輩が死に物狂いで努力をし前に進んでいる姿が浮かんだ。様々な人に感謝をしながら、自分の事業を動かしている父親の姿が浮かんだ。

自分も、新規事業をやろう、と木下さんが強く思った瞬間だった。NewSchoolと木下さんが出会ったのはそんな頃だった。

30代社長創出:0⇒1を生み出す場

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NewSchoolに興味を持ったきっかけは現校長の佐々木紀彦さんだった。佐々木さんの講座を受講した際、一人一人に真摯に向き合う姿勢に強い感銘を受けた。ランチ中であってもこまめにメモを取る、講座の内容を考えるために事前に個別面談を行う。本物の顧客志向を感じた木下さんは、New School開校を知り「30代社長創出」「コンテンツプロデュース」の二つの講座を迷うことなく申し込んだ。

木下さんにとって「30代社長創出」は、事業計画書を作りこめる点が魅力だった。すぐにやれる事業はいくつも思いつく。だが、5年10年続くような継続性のあるビジネスモデルとして組み立てることは出来なかった。子供の頃に事業に失敗した親族の姿が脳裏にあり、不用意にマネタイズにリスクのある事業へ飛びつきたくなかった。一方で、やるからには利潤だけでなく顧客を幸せにできる事業を行いたかった。

「30代社長創出」は事業構想を固める上では格好の場だった。同じように事業アイディアを作りたいメンバーが集まり、お互いにフィードバックをしあう。そこで生まれたアイディアを外部にぶつけて更に磨きこむ。木下さんは持ち前の行動力で、講座外のネットワークとの議論、アンケート調査などを繰り返した。

自分のテーマを見つけるためには苦労をした。全てを白紙に戻すこともあった。それでも、外部との議論を続ける中で、最終的に自分が今後追い求めたいテーマを明確にすることが出来た。その過程では「30代社長創出」のメンバー内部の議論がアイディアのコアを深めるためにとても役に立ったという。「明確なアイディアがないと外部と相談も出来ないんですよね。そんな中で、0⇒1でアイディアを産める場がこの講義でした」と木下さんは言う。

今ならばリスクを取ったチャレンジ出来る。

勝負に出る準備は整った、と木下さんは感じている。

行動力の源泉 

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New Schoolは自らを客観視する場にもなった、と木下さんは言う。過去を振り返り、本当に自らを突き動かすモチベーションは何かを探る。その中で改めて浮かんだ自らの原体験は、両親のことだった。

子供の頃、台湾人とのハーフと言うことで虐められていた経験もあった。その時は、自らのルーツを素直に受け入れられない部分もあった。その頃は、自らの環境を素直に受け取ることが出来ずに、両親を悲しませることもあったという。

ただ、大人になった今では、異国の地でも愛を注いで育ててくれた母親への感謝、何百人という従業員を抱えて事業を持続させている父親へ強い尊敬の念を持つようになった。だからこそ、日々成長し、自分のありたい姿に近づき、自ら選んだ道である経営者として成功したい。そして、両親が元気なうちに同じ道で成功した姿を見せて安心させたい。

「30代社長創出」の講座でもその行動力は抜きんでていた。業務後毎日1-2時間、候補顧客や先輩起業家、エンジェル投資家にアポイントを取り、事業計画ブラッシュアップを続ける。NewSchoolのクラスに講師として来場した大企業の社長ともいつの間にかネットワークを持っている。他の参加者は皆驚きを隠せなかった。

その一つ一つの素早いアクションの背景には強い家族への思いがあった。そして、その思いはこれからの事業の成功にきっと繋がるだろう。そう感じさせられるインタビューだった。

(文:竹林 仁)

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