==内側の話==

両親は割合と背が高いのに、私は細くてちっちゃい。
だから年齢よりも下に見られることがほとんど。お母さんたちは「若く見えるねー」とか言いながら(本当か嘘か知らないけれど)喜んでいるけど、私は小学生に見られたって全然嬉しくない。
「何年生?」なんて聞かれると、「もう来年は高校受験だよ!」と、心の中では思いながら「あの、中学生なんです」と、もぞもぞ答えたりしてる。
まあ、でも、この見た目のおかげで、お店に行くと、アメもらったり、キーホルダーもらったりするので。悪いことばかりでもない。
だけど、その度に年齢を訂正するのも面倒なので自然と外に出るのも億劫になってくる。
朝ごはんを食べてから学校に行くまでの少しの隙間が私は大好きで、この時間が私の自由な白い時間だ。
ほかの時間はだめ。昼も夕方も夜も。
いろんな色が塗られてしまっていて、どうも私じゃなくなっている。
だから私は朝の白い時間に色々考えたりする。ベッドで空想したり、外をぽーっと眺めていたり。
朝のその時間、わたしが窓から外を眺めていると1人の女の人が目についた。
背はそんなに高くないけど、なんだか素敵な人でいつも赤いコートを着ている。
なんだか可愛い人だな。と思って見ていた。
だいたいその人は7時10分くらいにうちの前を通り過ぎる、わたしが見えているのかいないのかわからないけど、お姉さんは優しい顔でうちの方を見ながら通り過ぎて行く。イヤホンで音楽を聴いていることもあれば、白いコートの時もある。
ある日ベッドで本をパラパラめくっていて時計を見ると10分になっていた。わたしは慌てて窓の方に行ったら勢いで、カーテンの外に顔が出てしまった。
ちょうどその人はうちの前を通り過ぎるところで、わたしを見ると、ちょっとにっこりして手を振ってくれた。なんだか嬉しくて、次の週はわたしから手を振ってみようって決めたのだけど、少し照れくさくて、窓のくもりを拭くようなふりをしてしまった。
だけど、そこからは毎日その人と挨拶することがわたしの日課になった。
時々寝坊しちゃったりして会えなかったり、お姉さんが来なかった時は少し心配になる。
どんな声なのかなとか、彼はいるのかなとか、いつも何聴いているんだろうとか。多分お姉さんもわたしのことは小学生だと思ってるんだろうから、そこがちょっと面倒くさいんだけど、だけど、いつか、駅前のタコ焼きをいっしょに食べながら、色々お話ししても面白いかな。って思っている。

2017/01/26

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