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新幹線とWBC

日本代表がWBCを制して大賑わいである。私が野球評論したところで価値を生み出せないので、誰も書いていないようなことを執筆してみる。

今回WBCで活躍した選手の一人が吉田正尚選手である。彼の活躍を見て、2014年の3月に北陸新幹線が開通した前後の頃を思い出した。

2013年の高校サッカー選手権の決勝戦は星稜高校(石川県)vs 富山第一高校(富山県)のまさかの北陸ダービーとなり、終盤ラスト5分で2点差を追いつき、延長戦で富山第一高校が勝ち抜くというドラマチックな試合となった。

北陸は基本的にスポーツ不毛の地であり、北陸ダービーで決勝戦を見ることなどこの先数十年ないことであろう。北陸新幹線開業後も、富山県出身のスポーツ選手の躍進が続く。

その代表例が関取の朝乃山とMBAプレイヤーの八村塁である。

朝乃山は太刀山峰右衛門以来の約100年ぶりに現れた大関であり、長らく横綱・大関不在の県であった。

八村に至っては、日本史上最高のバスケットボール選手であろうし、富山県が生んだ史上最高のスポーツ選手であろう。

ひるがえって今回のWBCである。敦賀気比高校出身の吉田選手の活躍を見て、やはり来年3月に敦賀まで延伸開業する北陸新幹線との関係性に着目してしまうのである。ちなみに福井県は敦賀気比高校という強豪校を抱えるがゆえに近年有名プロ野球選手を次々と輩出している、同じくWBCに出場した中村悠平捕手や、ソフトバンクホークスの主力である栗原陵矢選手など良い選手が目白押しである。

新幹線には地域に活力を与える側面があるのだろう。単純に人の往来が活発になれば、スポーツの指導者や観客も行き来しやすくなるだろうし、見聞を広めるきっかけにもなるだろうし、練習試合の遠征もやりやすくなるだろう。

『新幹線とナショナリズム』という興味深い書籍がある。

新幹線については費用対効果の問題が付きまとい、この先は十分な費用対効果を出すことができる整備新幹線は生み出せないであろうとする論もあるし、同じく北陸新幹線では環境アセスメントの問題で新大阪までの開通工事が難航している。

SDGsの観点からすると、今後ますます旗色が悪くなる一方の新幹線であるが、費用対効果や環境問題にかなった形での持続可能な開発という前提付きではあるが、今回の国民的な盛り上がりを見るに、公共交通の開発は重要なのではないかと思うのである。

北陸新幹線開通前後の時期とこれらスポーツ選手が生育された時期で整理するとツッコミどころはあるものの、新幹線の工事はロングスパンで計画されているので人びとの意識を結び付けるという意味では、彼らを生み出すことに北陸新幹線は多少は寄与したであろうと見ることは可能である。

国民的な盛り上がりに乗じて、鉄オタ的偏愛をしたためてしまったことに気が引けつつも、今日の日本代表の勝利を祝福したい。

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