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北陸の雪と哲学

きのうは暴風雪、今日は大雪でてんやわんやの北陸地方からお送りします。

私が住んでいる富山県朝日町は一晩で50cmほど積雪がありました。私は市街地住みですが、山間部では1mほど降ったようです。明日まで大雪とのことでどうなることやら。食材は十分にあるので明日は開き直って除雪せず、引きこもる予定です。

さて、北陸は哲学者や思想家が多く出ている土地なのです。意外に思われるでしょうか。

有名なのは西田幾多郎(1870~1945)です。

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石川県かほく市宇野気の出身です。宇野気には石川県西田幾多郎記念哲学館があります。主著『善の研究』は90刷を超えて今もなお出版され続けています。

鈴木大拙(1870~1966年)は、石川県金沢市の出身で、禅仏教の教えを英語に翻訳して世界中に広めた人です。間接的には、禅仏教に傾倒したスティーブ・ジョブズにも影響を与えたと言ってもいいでしょう。

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金沢市には鈴木大拙館があり、彼の業績を反映してのことか、あるいはコロナ禍前までのインバウンド観光の影響があってのことか、来場者の30%は海外からの観光客であるとのことです。

同じく、金沢市からは三宅雪嶺(1860~1945)という国粋主義の思想家が生まれています。

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彼は日本で初めての哲学科の学生であったが故の独特の思考スタイルや、体制に順応して戦争協力に積極的であったところもあり今では評価されない思想家ですが、戦中までは大きな影響力がありました。

戦後になってからは、狭義の哲学者ではありませんが、富山県上市町から上野千鶴子というフェミニズムの思想家が生まれています。

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70代を超えた今もなお、東京大学入学式の祝辞や、「完全な私怨」の動機でフェミニストになったなど、様々な問題提起をして世を騒がせています。

アテナイにラディカルな問題提起をして世を騒がせたソクラテスのことを思えば、問題提起は哲学の重要な役割とも言え、彼女も広い意味では哲学者としてくくってもいいでしょう。

加賀百万石のストックを活かしたようにも見える戦前の哲学者が多いとはいえ、人口規模で劣位にある北陸からこれだけの名だたる人物を生み出したのには何か理由があるように思います。

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私はその一つが「雪」にあると見ています。北陸は長い冬の間、雪に閉ざされてきました。近年は地球温暖化の影響を受けて積雪量が減っているとはいえ、それでも今年のように降る時は降ります。

雪が降ると、街は外界と閉ざされて人々の行動が抑制されるので、私たちを内省的にしてくれます。その上、雪には吸音効果があるので静かな夜ほど雪が深々と降ります。その静けさが思考を促します。

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その一方で、雪はご近所との連帯を高めてくれます。雪かきは大変な重労働で助け合いの精神がないと成り立ちません。

雪は自動車の運転の大きな妨げになります。雪道でスタックにはまって動けなくなった自動車を、後ろからアシストして出してあげるのは雪国の常識です。私も何度も助けられました。

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内省と連帯をもたらす。これが雪が私たちにもたらす効用です。

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2018年に『富山は日本のスウェーデン』という書籍が出版され、大きな議論を巻き起こしました。もちろん、両者の成立の経緯も国柄も異なりますし、男女平等という点では大きな違いがあるので、安易な同一視はできません。

しかし、内省と連帯という雪がもたらす効用は両者共通しているように見えます。北陸が日本において独特の国柄を持っている理由に「雪」が大きな影響を与えているように思います。

昨年はコロナ禍のためにステイホームが流行語となりました。北陸はある意味ステイホームの先駆者でもあり、北欧同様に住環境が充実しています。それだけ家で過ごす時間が長いということでしょう。

もちろん、屈指の豪雪地帯である東北の日本海側と何が異なるのかというツッコミはあると思いますが、実はそちらからも名だたる思想家が出ています。その点も追々述べていく予定です。

雪かきが連日続いて、嫌になってきた腹いせ交じりでの執筆となりましたが(笑)、夜も深まってまいりましたのでこの辺りで筆を下ろします。

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