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ヘブライズムと超越論的世界観(4)
ヘブライズムと超越論的世界観についてお話を続けています。
1.素朴実在論の否定
2.人間の「主観性」の尊重
3.相対主義
という、ヘブライズムと超越論的世界観から生まれる3つの態度についてお話しており、前回から2.人間の「主観性」の尊重について説明しており、カントの超越論的哲学についてお話しました。
今回は現象学における超越論的世界観を説明していきます。現象学はフッサールという哲学者が創始しました。
フッサールは「超越論的還元」という、原始的な直接経験に立ち返ることの重要性を提唱しています。具体的には下記のイメージです。(『これが現象学だ』(谷徹、講談社現代新書)より引用)
経験というと、心理学的に考えるならば、例えば図1のように、外部から物理的刺激が到来して、それを私が見ることによって、知覚経験が成立するといった図式がなじみのものです。
ところが、フッサールに大きな影響を与えたマッハは図2のような絵を描いきました。これは右目を閉じて左目だけで見たときの光景です。右側に見えるのは、マッハの鼻であり、その上の方に伸びているのは彼の眼孔で、前方には鉛筆をもった右手と、両脚が伸びています。もちろん左手も描かれていて、髭まで見えているのが興味深いです。これがフッサールの言う超越論的還元によって得られる直接経験なのです。
図1のような馴染みやすい科学的認識につられてしまう傾向性にブレーキを掛けること判断停止(エポケー)といいます。エポケーという概念は、社会学や心理学でもしばしば応用されていますので、その背景に哲学的な由来があることを踏まえることが重要です。
「超越論的世界観」とは一言で説明すれば、今ある状況を自明視するのではなく一歩引いたところから見ることと以前に定義しましたが、現象学においても色濃く現れています。
これが自然科学や社会科学に大きな影響を与えたとともに、ニヒリズムにも一定の影響を与えており、その点は今後折を見て説明していきます。
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