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マグナス・フレデリック・クラウゼンさん、アンドレ・ピゲさん、西村有さん、室井悠輔さん「Track, Dash, Stroke」@Goya Curtain

マグナス・フレデリック・クラウゼンさんの作品、細長い画面いっぱいに描かれた時間が、時にシュプールの如く表面を掬い取って描かれ、またある時にはもったりとした絵の具で塗りつけられていて…と、シンプルながら変化に富んでいる。日に一度、1分限りで移ろうデジタルの4桁と、その光景を (おそらく) 百倍以上の時をかけて留めた本作とは在りようが一見異なるけれど、四つの数字それぞれが異なるスピードで変化することの延長に、ある時間を、それ以上の時間をかけて切り取ることがありそうな気がする。正座で向かい合える高さに掛けられているのも、畳敷きのこの空間ならではで好い。

"時計" からふと目線を上げると、アンドレ・ピゲさんの絵が掛けてあって、快晴のような青に浮かぶ葉が、葉脈まで太く力強く象られている一方で、左下に描かれた葡萄の線はやわらかで、"空" に広がる波紋のようなにじみが、実のふくよかさを表すよう。

西村有さんの作品は、窓辺と元押入れ (一見、床の間のようだけれど、上がって見られるユニークな空間) に向かい合うように掛けられている。窓辺の作品は、口許に両手を添え囁く声の響きが輪っかとして刻まれていて、ガラス越しに透ける窓飾りの二つの円が反響のよう。その "呼び声" が、向かい合う作品、黄金色の大地 (床の木材が合っている) で気持ちよさそうに寝そべる人物を、優しく起こそうとしているようにも見える。

二部屋に点在する室井悠輔さんの作品は、オレンジとミントグリーンの "チープ" な色合いと、デコボコしていたり、シワの寄っていたりする肌合いが年季の入った団地や歩道橋を連想させて (白い壁と畳という空間も団地っぽくて懐かしい…)、無邪気に積み上げては無慈悲に崩し去る積み木遊びと、スクラップアンドビルドで "新陳代謝" を図る都市とが重ね合わされたよう。

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