見出し画像

Jung Kook "Standing Next to You" 時代を超えて生き抜く ~日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.110

僕らは 時代を超えて生き抜くよ
約束する 僕は確かに
ここに存在していると

Standing next to you


君と共に立ち向かって

ゆっくり僕を奏でてくれ
この雰囲気を押し上げて
僕に奇跡を与えて欲しい
(君の体にわからせてあげる)
僕自ら 君にわからせる
僕らが どう動くのかは
僕ら自身が決めるのだと
(もうわかっているだろう?)

知っているだろう?
僕らが夜通しこれに夢中なことを
僕は叫びここにある愛を証明する
夜を徹して僕らはこれに群れ集う
僕らは時代を超え生き抜くのだと
僕は叫び 証明する
僕らの愛は打ち消せない
僕らの間は引き裂けない
僕らは 時代を超えて生き抜くよ
約束する 僕は確かに
ここに存在していると

君と共に立ち向かって
炎の中で君と肩を並べ
わかっているだろう?
それが雨など及ばないものだと
それが痛みも及ばないものだと
DNAのように奥深いものだから
何者にも奪われることはない
邪魔するものは 消え失せろ

君と共に立ち向かって
君と共に立ち向かって
君と共に立ち向かって

君の身体に
太陽や月の如き黄金の余韻を残す
(もうわかっているだろう?)

知っているだろう?
僕らが夜通しこれに夢中なことを
僕は叫びここにある愛を証明する
夜を徹して僕らはこれに群れ集う
僕らは時代を超え生き抜くのだと
僕は叫び 証明する
僕らの愛は打ち消せない
僕らの間は引き裂けない
僕らは 時代を超えて生き抜くよ
僕は誓う そう確かに
ここに存在していると

君と共に立ち向かって
炎の中で君と肩を並べ
わかっているだろう?
それが雨など及ばないものだと
それが痛みも及ばないものだと
DNAのように奥深いものだから
何者にも奪われることはない
邪魔するものは 消え失せろ

君と共に立ち向かって
君と共に立ち向かって



英語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/6221238

「Standing Next to You」
作曲・作詞:Andrew Watt , Henry Walter (Cirkut) , Ali Tamposi , Jon Bellion


*******


今回は、2023年11月にリリースされたBTSのJung Kookによる1stソロアルバム「GOLDEN」より、タイトル曲 "Standing Next to You" を意訳・考察していきます。

マイケル・ジャクソンが憑依している。
私がこの楽曲のMVのティーザーを観て最初に得た感想はこれでした。
billboardからMJの名を挙げた記事が出るなど、界隈でも即時話題になったこの楽曲。
キング・オブ・ポップに敬意を表した作品はこの世に数多あるだろうけれど、あの・・気持ちをあらためてここまで掻き立てるものを生み出せた者が果たして今までいただろうか。そんな驚きがありました。

グク曰く、"Seven" の収録後にAndrew Watt氏から「こんな曲もある」と聴かせてもらった際、曲の雄大さに引き込まれ自らパフォーマンスする姿が目に浮かんだ、というこのタイトル曲。
おそらく彼のその第一印象が最大限反映されているのではないかと思われるアレンジ、パフォーマンス、そして歌詞は、彼の表現者としての器の大きさを感じさせる圧倒的なスケール感で、満を持して私たちの元に届けられました。


1.単に '立つ' のではなく

楽曲タイトル "Standing Next to You" は「君の隣に立って」と訳すことができますが、この「立つ」というシンプルな行動を支える感情をどう捉えるかで曲全体の方向性が変わってくると思いました。

参考:動詞standの意味

歌詞全体から私が感じたのは何があっても「立ち向かう」という姿勢。どんな過酷な状況においても、どんな多くの時間が過ぎ去っても決して動じず、進化し続ける魅力を湛えそこに在り続ける気高いジョングクの姿が思い浮かびました。
そしてそんな彼の隣には、共にその困難を乗り越える同志であるYou=ARMYがいる。

ここでは "Closer to You" での読み解きと同様に、「君と僕(You & I)=僕たち(We)ふたりの物語」という世界線とはまた別の「僕(I)=グク、君(You)=ARMY、僕たち(We)=バンタン」という切り口で歌詞を読み進めてみたいと思います。


Standing next to you ※1
(君の隣で立ち向かって)

Play me slow
(ゆっくりと僕を奏でてくれ)
Push up on this funk and give me miracles
(このファンクな雰囲気を押し上げて、僕に奇跡を与えてくれ)
(Let ya body know) ※2
(君の体にわからせてあげる)
Make it known [you] ※3
(僕が自ら君にわからせる)
How we left and right is something [that] we control
(僕らがどうやって左右に動くかは僕らが管理するということを)
(You already know) ※4
(君はもうわかっているでしょ?)

※引用文につけた和訳は直訳(省略されていると思われる語を[]内に補完)
https://m.bugs.co.kr/track/6221238

※1 stand…立ち向かう(参考
※2
・ya…your(参考
・let+目的語+動詞の原型…目的語に~させてあげる(参考
※3 make+目的語+過去分詞…自分主体で相手に「させる」(参考
※4 You know~…~でしょ?、~じゃん?(参考

この段落で注目したいのは、使役動詞の選び方です。
「let」と「make」のニュアンスの違いに目を向けると、主人公の意思の強さがより伝わってくるように思います。
「We(=バンタン)」の方向性は自分たちがコントロールする。そのことを自身の力で(意思を持って強く)君にわからせる。
でも、そんなこと敢えてしなくても「You(=ARMY)」ならもう既にわかってくれているよね?という信頼関係の確かめがここで行われているように感じられました。


You know that all night long we rock to this ※5
(一晩中僕らがこれに盛り上がるのを知ってるでしょ?)
Screaming I testify this lovin' ※6
(僕は叫んでこの正に愛していることを証明する)
All night long we flock to this
(一晩中僕らはこれに群がって)
Screaming I testify that
We'll survive the test of time ※7
(僕は叫んで 僕らが時の試練を生き抜くことを証明する)
They can't deny our love
(彼らは僕らの愛を否定できない)
They can't divide us
(彼らは僕らの間を引き裂くことはできない)
we'll survive
The test of time
(僕らは時の試練を生き抜く)
I promise I'll be right here
(僕は正にここにいるのだと約束する)

※引用文につけた和訳は直訳(和訳の文脈を通すため原詞の改行を一部変更)
https://m.bugs.co.kr/track/6221238

※5 rock【動詞】…(音楽を聴いて)盛り上がる(参考
※6 this loving …loveの現在分詞→「まさしく~している」ニュアンス(参考
※7 the test of time…時の試練
stand the test of time」…時の試練を耐える=長い年月の間賞賛されて後世に残る(参考)(使用例

この「時の試練」のくだりが、「耐える」という意味合いも持つ動詞「stand」の曲中の役割を決定づける最も重要なポイントだと思います。

夜通し寝ないで(人生の全てを懸けて)音楽に時間を捧げ、納得のいく作品を生み出すことに日々夢中である「We(=バンタン)」のことを「You(=ARMY)」ならわかってくれているよね?と、ここでもお互いの認識に齟齬が無いかを確かめているような印象を受けました。

ここで登場する「our」や「us」が指すものは「We(=バンタン)」、または「バンタンとYou(=ARMY)」のことでもあるかもしれません。
音楽とARMYへの今まさにここにある愛情、発表した楽曲、そしてメンバー同士の絆、バンタンとARMYとの絆が、時の試練を耐え抜きいつの世になっても存在し続けることを約束する。この先にどんな試練が待ち受けていようと、メンバー・ARMYと一緒にあらゆる困難に立ち向かい音楽を続けていく、という気持ちを「stand」に重ねることができるのではないかと思います。


Standing next to you
(君の隣に立って)
Standing in the fire next to you
(炎の中で君の隣に立って)
You know it's deeper than the rain
(それが雨より深いことがわかるだろ?)
It's deeper than the pain
(それが苦痛より深いことを)
When it's deep like DNA
(それはDNAのように深いものなので)
Something they can't take away, ay
(彼らは持ち出せない)
Take-take-take-take-take-take off ※8
(消え失せろ)

※引用文につけた和訳は直訳
https://m.bugs.co.kr/track/6221238

※8 take off…(命令形で)消え失せろ(参考

「it(それ)」が表しているのは、前の段落で触れている「愛情」や「楽曲」「絆」を指していると思われます。
「それ」は雨に晒されようが苦痛を強いられようがそれらの影響がとうてい及ばないもの=DNAのように誰にも奪われない深い深い確かなものであるとし、邪魔をしようとしてくるものたち全てに「消え去れ」と強く抵抗し凛として立ち向かう姿がそこに見えてくるようです。


2.黄金の瞬間

そしてここで、アルバムタイトル「GOLDEN」の回収と相成ります。

Afterglow [that]
Leave ya body golden
like the sun and the moon
(太陽や月のような黄金を君の体に残す余韻)
(You already know)
(君はもうわかっているでしょ?)

※引用文につけた和訳は直訳(省略されていると思われる語を[]内に補完)
https://m.bugs.co.kr/track/6221238

こちらのインタビューでは、グク本人がアルバムタイトル決定にまつわるエピソードを記者からの質問に答える形で明かしています。

また、2度目の出演となった슈취타シュチィタの第21回では「黄金マンネ」の名付け親であるナムさんとの当時のVlog映像も交え「GOLDEN」というキーワードに対する気持ちがより率直に語られています。

"Seven" の成功を踏まえ今この時期が己の「ゴールデンタイム」だとしたグクは、その瞬間をこれからも逃さず続けていく意気込みをこのタイトルにこめた、とも話しています。

実力を磨きながら長く人々に愛され続けるものを生み出し続けるということがどれ程難しいことであるか。業界の渦中にいる彼らはそれを当然身をもって理解しているわけで、それでも尚そこで輝くことを望み行動することを選ぶ理由は、もちろん他でもないARMYであることは確かです。

でもそこで、それならARMYが求めてくるものだけを追求し提供すれば良いじゃないかとはならないのが、彼らが自己を表現する者として生きていることの証だと言えるのではないかと私は思います。
与えられたものだけをこなし求められるものだけを無難に返すのではなく、自分たちで選んだ道を意思を持って進むことが大前提なのだという共通意識がチームにあるのではないでしょうか。

How we left and right is something we control

https://m.bugs.co.kr/track/6221238

僕らがどうやって動くかは、僕らが決めることである

決して媚びることなく、それでいて独りよがりでもない。
この姿勢は彼らが、自分たちを信じてくれる人たちのためにまず自分自身の気持ちを大事にしようとしているからこそ成し得るものなのかもしれません。

同じ歌詞が繰り返されるPre-Chorusは、最終行のみ1語だけ異なっています。

「promise(約束する)」/「swear(誓う)」

I swear that I'll be right here
(僕は正にここにいるのだと誓う)

https://m.bugs.co.kr/track/6221238

「GOLDEN」のショーケースが無事開催された直後の2023年11月22日に、RM、Jimin、V、そしてジョングクの兵役履行に向けた準備が開始されたとの案内がWeverseにてありました。2025年のグループ活動再開に向け、ここで本格的に時が動き始めたと言えるのではないかと思います。

彼が大切にあたため、築き、残してくれた黄金に輝く時間の余韻。
そして「BTSのジョングク、ここに在り」と言わんばかりの "Standing Next to You" のパフォーマンス。
圧倒的な技術力・表現力は彼の存在をこの時代に確実に刻み付け、「ここにいる」と交わした約束が必ず果たされること、その誓いが確かなものであることを証明してくれているようです。

揺るぎない心で共に耐え抜いていこう。
ショーケースのディレイ放送を観ながら、あらためてそう強く思ったのでした。



今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。