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BTS "Stay" 君がそこにいること〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.040

この瞬間 僕らは
いつでも どこにいても
君がどこに在ろうとも
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってる

Stay


夢だったのかな…
君を見た気がする
目覚めても また
何も無い部屋
密かに僕は呪文をかけるよ
いつになく 大きく弾む心
この瞬間 僕らは
いつでも どこにいても
一緒だよ どこだって

同じ事の繰り返しも幸せだと思う
僕もわからないよ 僕の胸の内を
君を眺めることはできないかな?
静かに合わせてみるね 両手を
変わらない毎日
狂った様に僕は言い続ける
君がどこに在ろうとも
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってる

あの雲が通り過ぎた場所に
そのままでいて
乾いた唇で君に言うよ
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってるよ

輝かしい今日の
その全ての為に
明けても暮れても
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってるよ

正に今
僕は君を想っている
君がどこに居たのか
それの何が重要なの
僕らは7Gで繋がっている
これは世界の終わりなんかじゃない
真珠のように輝く贈り物
これはいくつかの波動に過ぎないよ
だって僕が君を変えるつもりなんだ

密かに僕は呪文をかけるよ
いつになく輝いて見える星
この瞬間 僕らは
いつでも どこにいても
君がどこに在ろうとも
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってる
あの風が通り過ぎた海に
そのままでいて
堅い唇で君に話をするよ
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってるよ

輝かしい今日の
その全ての為に
明けても暮れても
僕は君がいつも
そこにいるのをわかってるよ

冷たい風が吹いて来る
手を伸ばして
君の息吹を感じるよ
目を閉じた いつしか
僕らは 一緒ってことなんだ


韓国語歌詞はこちら↓ 
https://m.bugs.co.kr/track/32075141

『Stay』
作曲・作詞:Arston , Jung Kook , RM , Jin


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今回は、2020年11月にリリースされたスペシャルアルバム「BE」に収録されている "Stay" を意訳してみました。
この楽曲はJIN、RM、JUNG KOOKの3人によるユニット曲であり、主な作曲者であるグクを含め三人は制作にも携わっています。


YouTubeにアップされている「BE-hind Story」動画シリーズでは、この "Stay" という楽曲が「BE」収録に至るまでの経緯や作業中のエピソードなどがそれぞれの言葉で語られています。
それらをかいつまんでみると、

  • 当初はグクが準備中のミックステープにて最終曲として収録する予定だった。(出典

  • グクは元々トラックのないところからメロディと歌詞を作ってトラックのプロにトスするスタイルだったが、この曲はトラックがあるところから始めて1日で完成した。(出典)

  • 歌い出しの「夢だったのかな」という部分はジンくんの発案で、これまでのことが全て夢であったかのような錯覚に陥った経験を元にしている。(出典

  • 楽曲制作に貢献したいと頑張ってユンギの作業室で約4時間詰めてメロディーを書いたジンくん(「僕がスパルタさせてしまった」SUGA談)だったが、気に入らないものをすぐ消してしまう様子を見てユンギは残念に思っていた。(ユンギ自身は今回「3~4年寝かせておいた」という "잠시" が「BE」に採用されている)(出典

また、Weverse Magazineのソロインタビューにも "Stay" についての言及がありました↓

話し手ジンくん←聴き手グクのインタビュー動画中、ジンくんとグクが自分のスタイルを「単純」と評していたり、気に入らないものは跡形もなく消してしまうなど、ジンくんとグクのコメントには共通項が多く、インタビュー中に意気投合して握手する姿が見られます。

そんな直球勝負で裏のない真っすぐな二人の仕事に、多重的な構造を好んで用いるナムさんが加わることで、楽曲の懐はより広く深いものになっています。

楽曲を包んでいる大きなテーマはずばり「Stay(とどまる・居続ける)」なのですが、「君が居ることをわかっている・知っている」という確信は「目で見て得たもの・手で触れて得たもの」ではないことが歌詞を読んでみるとわかります。※引用文に付けた和訳は直訳

반복도 복인 것 같아(反復も幸せだと思う)
나도 모르겠어 나의 속을(僕もわからない 僕の中を)
널 볼 순 없을까(君を見ることができないかな)
가만히 모아보네 두 손을(静かに合わせてみるね 両手を)
변하지 않는 내일(変化しない毎日)
미친놈처럼 I keep sayin'(狂人のように 僕は言い続ける)
Wherever you are(君がどこに居たって)
I know you always stay(僕はいつも君が居るのをわかっている)

https://music.bugs.co.kr/track/32075141

「君」の手を取る事ができない「僕」の手は自分自身の手と合わせることしかできず、その姿すら視界に収める事すらできない「君」をせめて眺めることだけでもできないものか、と祈っている。
「僕」と「君」の間には姿かたちも温度も感じ取ることができない距離があることがわかります。

「BE」というアルバムは、2020年という「断絶」の年に生まれた、その圧倒的な距離をいかに縮めるか、埋めるか、あるいは無いものにできるか、そういう葛藤にあふれている作品群です。
"Stay" にも「반복도 복인 것 같아(反復も幸せだと思う)」「변하지 않는 내일(変化しない毎日)」など、一変してしまった日常の描写が含まれています。

縮まらない物理的な距離を前に「미친놈처럼(狂人のように)」「君」の存在を肯定し続けることで、心理的な距離をなんとか縮めようとする「僕」の強い意志が歌詞全体にあふれていて、「肉体的な健康を保つ為の食べて寝るだけを繰り返す生活では、精神的な健康を維持することはできない」のだということにあらためて思い至ります。

対面公演が叶わなかった期間、ARMYが変わらずそこに「居る」ことを切実に望んで願った彼らの想いは、彼らが変わらずそこに「居る」ことを支えにそれぞれの「今」を乗り越えようとしているARMYの気持ちと自然と重なります。



最後までお付き合い下さりありがとうございました。

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