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BTS "We Are Bulletproof : the Eternal" 鉄でできた証【後編】〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.007

僕らは7人だけだった
でも今 僕らにはあなた達がいる
7つの冬と春の後に
こうして取り合う手と手の先に

We Are Bulletproof : the Eternal

夢だけしか持ってなかったね
目覚めても ぼやけた朝があるだけ
夜通し踊りながら歌うよ
終わりのない楽譜たち

僕らは派手に叫ぶ
「やれるもんならやってみろ」
世界との初めての闘い

死にたくない でも すごく痛い
泣いて、泣き過ぎて、鈍る刃

僕らは7人だけだった
でも今 僕らにはあなた達がいる
7つの冬と春の後に
こうして取り合う手と手の先に

ああ、僕らは楽園に着いたんだ
僕に石を投げて
僕らに怖いものはない もう何も
僕らは一緒 防弾だ
僕らにはあなた達がいる

また冬が来ても
誰が僕の行手を阻んでも、歩いていく
僕らは永遠に防弾だ
僕らは楽園に着いたんだ


僕らは防弾、防弾だ
ネガティブな視線に立ち向かい
僕らはそれをやり遂げて
悪い記憶も 数々の試練も
全部見事に防ぎ抜いたよ

いつも考えてる
これはまだ夢の中じゃないかって
長かった冬の終わりに訪れたのは
本当の春だろうかって
みんな嘲笑ってた、
一時は恥ずかしかった、名前
それは、鉄でできた証

防弾


僕らは7人だけだった
でも今 僕らにはあなた達がいる
7つの冬と春の後に
こうして取り合った手と手の先に

ああ、僕らは楽園に着いたんだ
僕に石を投げて
僕らに怖いものはない もう何も
僕らは一緒 防弾だ
僕らにはあなた達がいる

また冬が来ても
誰が僕の行手を阻んでも、歩いていく
僕らは永遠に防弾だ
僕らは楽園に着いたんだ

ああ
二度と止まらないよ
ここに僕らが一緒であればこそ

それぞれの物語を聞かせて
なぜ未だ歩く事をやめないのか
なぜ僕らと共に歩いているのか

僕らは楽園に着いたんだ

僕に石を投げて
僕たちに怖いものはない もう何も
僕らは一緒 防弾だ
僕らにはあなた達がいる

また冬が来ても
誰が僕を阻んでも、歩いていく
僕らは永遠に防弾だ
僕らは楽園に着いたんだ
僕らにはあなた達がいる


僕らは7人じゃない あなたと共に
僕らは7人じゃない
あなたと共に


韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/5863196

『We Are Bulletproof : the Eternal』
作曲・作詞:Audien , RM , Henrik Michelsen , Sophie ‘Frances’ Cooke , Etta Zelmani , Cazzi Opeia (Sunshine) , Ellen Berg (Sunshine) , Wille Tannergard , Gusten Dahlqvist , Jordan “DJ Swivel” Young , Candace Nicole Sosa , SUGA , j-hope , Elohim , Antonina Armato , Alexander Magnus Karlsson , Alexei Viktorovitch , July Jones , Amelia Toomey


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"We Are Bulletproof : the Eternal" は2020年2月発表の第4集『MAP OF THE SOUL : 7』に収録されている楽曲です。

タイトル初見で「あ、これきっと泣くやつ」と予感。なんてったって'Eternal'ですからね…ガンダムF91の名曲"ETERNAL WIND"の時代から、'Eternal'ときたら名作と私の中で決まってるんです。エターナル。良き響きです。

『MAP OF THE SOUL : 7』の制作秘話が語られたナムさんのV LIVEがあるとこちらの記事で知り早速視聴しました。(1:28:50~が "the Eternal" の話題)

やはり'Eternal'という言葉には特別な引力があるようです。

ここでは"We Are Bulletproof : the Eternal"の和訳(意訳)を通して、既に周知済み案件である前作"We Are Bulletproof Pt.2"の歌詞との関連性をあらためてなぞりつつ、彼らが見ている景色を想像してみたいと思います。

私が前回行った"We Are Bulletproof Pt.2"の歌詞和訳(意訳)はこちらから


1.鈍る刃

関連記事にもある通り、この"the Eternal"には"Pt.2"の歌詞の引用があるとされています。
単語単位で現れるものや、一文まるごと、というものもあります。
(以下、P2→Pt.2、Et→the Eternal)

■「夢」
P2…난 꿈을 집도하며
(俺のを執刀して)
Et…가진 게 꿈밖에 없었네
(持っているのはしかなかったね)

■「一晩中・ダンス・歌」
P2…밤새 춤을 추고 노래 불렀네
(一晩中ダンスを踊り歌を鍛え上げる)
Et…밤새 춤을 추며 노래해
(一晩中ダンスを踊り歌う)

■「刀(刃)」
P2…칼을 갈아왔던 만큼
(を研いだ分だけ)
Et…무뎌지는 칼날
(鈍る)

■石を投げろ
돌을 던져

■僕らには恐れがない
우린 겁이 없어

…など。


「やれるものならやってみろ(石を投げろ)」「怖いものなどない」と豪語し、命懸けで防弾をし続けてきた彼らの口からもついに「死にたくない」「痛い」と弱音がこぼれ、デビュー前後に自負していた「研ぎ澄まされた刃(重ねた努力の程)」はとうとう「鈍く」なってしまう。

そんな苦しい時代が彼らにあったのかと、PTDから沼入りした私には始めは想像もつきませんでしたが、最近になってMAMAの再放送がCS放送で続いていたので2016〜2020までの授賞式を視聴する事ができ、実際にその翳りの一端を目の当たりにする事ができました。

彼らが壇上で涙を流していたのはこの年ばかりではありませんでしたが、やはり2018年は最も衝撃的ですね。
一体何があったのかなんて野暮な憶測をせずとも、この受賞コメントを聴くだけで様々な思いが伝わってくるようです。
鈍った刃の輝きを取り戻し、手に手を取り合い前に進む事を決めた7人の側にあったのは、紛れもなくARMYさん達だったのですね。

2.7つの冬と春

この歌詞に頻出し、そしてアルバムタイトルにもなっている「7」という数字。
メンバーの人数である「7人」と、
デビューから数えた季節の数「7つ」。
発表タイミングの妙というか、この大切な数字の一致にはときめかざるを得ません。

また、私はここでもう一つ、「seven」と「heaven」の響きの共通性にもぐっときてしまいます。(こっそりチェッカーズの7thアルバム"Seven Heaven"を思い出したりして)

先のV LIVEの中ででナムさんは「天国」というフレーズを「楽園」と言い換えています。
おそらくですが、歌詞中の'heaven'は元は「楽園(utopia)」的な意味だったけれど、語呂を考慮して'heaven'を採用したのでは?と勘繰りました。なので、私は'heaven'を「楽園」と意訳しました。

デビューから7つの冬と春が過ぎた後の世界に、7人で繋いだ手と手のその先に、ARMYさん達がいる。

ここで「우린 겁이 없어(僕らには恐れがない)」の意味が、Pt.2の時とは違う事に気付きました。

Pt.2で彼らは積んだ努力で編み上げた防弾服を身にまとい、恐れすらなくす程の自負(いわゆる「恐いもの知らず」に近いもの)を持っていました。

しかしthe Eternalではその装備が限界を迎え、恐れを知り、傷つき、痛みに悶え苦しんだ過去を赤裸々に明かした上で、今では「自分たちにはARMYがいるから、もう怖いものは何もない」と、まさに「楽園」にたどり着いた心境を吐露しています。

それでもまだ、아직 꿈속인 건 아닐까(まだ夢の中の事じゃないのか?)と늘 생각해(いつも考えている)という…どんだけ謙虚なのこの子たちはと本当に頭が下がる思いです。

3.鉄の証

Pt.2では「名前」にスポットを当てて歌詞を読み解いてみましたが、the Eternalにもスルーできない「名前」に関する大事な表現があります。

모두 비웃던 한땐 부끄럽게 이름
(皆嘲笑った、一時は恥ずかしかった名前)
이건 쇠로 되 증명 'Bulletproof'
(それは鉄の証)

https://m.bugs.co.kr/track/5863196

2018年のナムさんの国連スピーチは"What is your name? Speak Yourself"と締め括られています。全文を読むと「名前」に対するナムさんの考え方の輪郭が見えてきます。

「防弾少年団」という名前は、メンバーそれぞれが自分自身について、そしてグループである事について熟考と理解を深め、更にARMYさん達がその名を何度も熱く呼び続けた事によって鍛錬され、ついに鋼の強さを手に入れた…これが、たった7年の間に起こった出来事とは。
私はそれと同じだけの時間をどう過ごして来ただろうか、と、思わず振り返ってしまいました。

4.永遠に不滅であるということ

私はアニメや漫画を観るのが子供の頃から大好きです。
自分自身も絵を描く事と文を書く事が好きなので、作品を好きになる時の観点も自ずと「こんなの描(書)けたらいいな」という所から始まります。
そんな生活もだいぶ長くなってきたので、大好きな作品に携わっていらっしゃったアニメーターさんや原作者の方、声優さんの中には既に鬼籍に入られた方もたくさんいらっしゃいます。

自分が好きな作品にはいつまでもメジャーであって欲しいという思いと、今はもう新作を待ち望むことが出来なくなってしまった方々への想いとを込めて「作品は不滅」であると宣言したいのですが、ここ数年、特にいい大人になってから好きになった方や作品のこれからについて考えている内に、ひとつの願望が芽生えました。

この人たちが、作品が、これからどんな輝きを魅せてくれるのか、永遠に見守っていたい、と。
いや、そんなの絶対に無理なんですけども、例えばもう、その辺の石ころになってでもいいからリアタイしたい、と。

そういうちょっとマニアックな願望が沸き上がってきて、自分より年下の才能溢れる方を発見する度に「あー、この人の作品を自分はいつまで楽しめるのかな」なんてセンチメンタルになったりするんです。
私はアンチエイジングとか全く興味がないのですが、年は取りたくない、死にたくないと、この時ばかりは切実に思います。

この曲は「永遠」という言葉が持つ「永遠ではない」ものへの切なさにも寄り添っているのではないかとひそかに思っています。
月日が経って、年を取って、すべてが少しずつ変化して。
それでもずっとみんなで一緒に歩いて行こう、という理想に対して、最も強い不安や絶望を感じているのはきっと本人たちでしょうから…

普通が普通ではなくなってしまった昨今、この「永遠」を渇望する気持ちをどう大切にし、どう実行していくかを、一層深く考えさせてくれた一曲でした。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

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