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BTS "Trivia 起 : Just Dance" ただ、踊り続けたい 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.081

一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ

Trivia 起 : Just Dance



僕が あの瞬間を例えるならば
それは 明るく降り注ぐ陽の光
あの 感触を言い表すとしたら
当然の如くこの目を突いた一撃

その雰囲気の中 音楽をかけて
各々のストレッチ
緊張はほぐれるよ
今 僕の心を
隠したならば後悔しただろう
君との終わりを

一緒に踊ってよ
どんなバウンスでも構わない
僕と踊ってよ
どこから来て…なぜ踊って…
ナチュラルな会話をしてよ
可笑しいな
良く合い過ぎているせいで
何だって上手くいくようだ
でも君は僕のトモダチ
ただの トモダチ


一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ

音楽のリズムにまかせて
ただ 身体が動くままに
僕らは月明かりの下に落ちる影

一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ


ああ 泥のような人生における
ああ 一輪の 君という名の花
ああ みっちり詰めた練習室も
ああ 共に在るならば 楽園に
そう 答えも無かった夢も今は
そう 共感の輪が毎日生まれる
そう 
僕らのリズムは合っているから
ダンスがあったが故の
その 運命的な拍子チャンス
さあ やってみよう
ひとりひとりが作る平和
ウェーブで波打つ感覚
心臓の跳ねる音
一つになる動作
君で知っていく 今の僕の本心
ずっと 続けていきたいことを
ダンスを好きになったように君を
そう、君は僕の愛 僕の愛なんだ
それが 僕の好きなこと


一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ

音楽のリズムにまかせて
ただ 身体が動くままに
僕らは月明かりの下に落ちる影

一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ


感じたよ Baby
瞬間 君と僕 Baby
その全てを足した答えを
公式みたいに一致させるんだ
漠然としたことも Baby
過酷な辛さも Baby
君ひとつで
全てが癒しになるということなんだ

感じたよ Baby
瞬間 君と僕 Baby
その全てを足した答えを
公式みたいに一致させるんだ
荒い呼吸も Baby
流した汗も Baby
君ひとつで
全てが意味になるということなんだ


一緒にいる感じが好き 君と
一緒にするダンスが好き 君と
僕はただ、ただただ 本当に
踊りたいだけなんだ


韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

『Trivia 起 : Just Dance』
作曲・作詞: Hiss noise , j-hope


*******


今回は2018年8月にリリースされたリパッケージアルバム「LOVE YOURSELF結 'Answer'」に収録されているj-hopeのソロ曲 "Trivia 起 : Just Dance" を意訳・考察していこうと思います。

恒例となっているRMによるアルバムレビュー動画では、LOVE YOURSELFシリーズ総括であるリパッケージアルバム「結」において、そこに至るまでの〈起承転〉をラプラ三人で再現しようという試みがあったことが語られています。↓

(18:00~が "Just Dance" の話題)
ここでナムさんは "Just Dance" は「愛のはじまり」の曲として "Euphoria" と共に〈起承転〉の内の〈起〉を担当していると解説し、作業中のホビの様子などを振り返っています。

また、同時期のホビのV LIVEでは、ARMYのコメントに答える形でソロ曲の話題に触れています。↓

(32:06~が該当箇所)
要約してみると、
・ステージのことを考えて作った曲
・ステージでジャンプして楽しみたかった
・誰が起承てんのどれをやるのかラプラで話し合った
・元はユンギが承をやろうとしていた ナムが轉
・でもナムが承に合う曲を早く書けたので承に
・ナムが終わってからホビが起を作業した
・後に残った轉をユンギが担当することに
…とのこと。

ナムさんが言う「愛のはじまり」がこの楽曲のテーマだということを前提にすると、歌詞の中に登場する「君」に、ホビにとってかけがえのない存在である「ダンス」そのものを重ねているのではないか、という気づきから、この考察は始まりました。



1.出会いの瞬間

歌詞の冒頭では正にその「愛のはじまり」とその瞬間の気持ちについて「誰かに尋ねられたらこう説明するだろう」、というその回答になっています。

내게 그 순간을 묻는다면
(僕にその瞬間を聞くとするなら)
환하게 내리쬔 Sunshine
(明るく降り注ぐ陽の光)
그 느낌을 묻는다면
(その気持ちを聞くとするなら)
자연스레 내 눈에 One shot
(自然に僕の目に一撃)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

j-hopeことチョン・ホソク少年がダンスに出会ったきっかけからデビュー前の経歴についてをまとめた、THE FACT(TMAの主催)の記事がありました。↓

「BTSヒストリー」と名打たれたこの記事によると、ホソク少年は小学3年生の時に自分のダンスを周りからほめられたことにより、人前で踊ることに対して興味を持った、とされています。(出典は日本公式ファンクラブの会報とのこと)
小学校で設定されていたダンスの時間で、みんなのお手本として踊ることにまでなったというその才能の「芽」に、彼は自分自身でも気が付いていたようです。

「明るく降り注ぐ太陽の光」のようでもあり、「当然のごとく自分を打ち抜いた一撃」そのものでもあった「出会い」。
後に切っても切れない仲となる「ダンス」との、衝撃的でありながらも実に甘美なその瞬間が "Just Dance" の歌詞には鮮やかに記録されているのではないかと思います。

「愛のはじまり」というキーワードを軸にこの歌詞は多重構造で進み始め、衝撃的な「出会い」を果たした〈僕と君〉、プロを志した〈彼自身とダンス〉、そして〈彼自身とメンバーたち〉の物語がオーバーラップしていくことになります。

그 분위기 속 음악을 틀고
(その雰囲気の中 音楽をかけて)
각자의 스트레칭
(各自のストレッチ)
긴장은 풀려 지금 내 마음을 숨긴다면
(緊張は解れる 今 僕の心を隠すならば)
후회했어 너와의 Sunset ※1
(後悔した 君との終わりを)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

※1 sunset…日暮れ。転じて衰退、終焉(参考
前の段落の「Sunshine」に対して呼応させていると思われる。

小3でダンスに目覚めたホソク少年は、ダンススクールに通うなどして上達のために積極的な行動を重ねていましたが、お父様の反対に合っていたことが "MAMA" の歌詞でも触れられています。
もしこの時、反対を押し切らずに自身の気持ちを隠してしまっていたら、きっと後悔しただろう、という念が見え隠れしているように思えます。

そして、人前でのパフォーマンスの機会を前にして感じている緊張を音楽とストレッチで解す、という景色もこの場面に重ねることができます。
「各々の」という前提からは練習室でのメンバーとのやり取りも思い浮かべられるのではないかと思います。

もっと俯瞰してみると、ある日出会った〈僕と君〉が、始めはぎこちない間柄であったけれど徐々に打ち解けていく様子、もしその想いに蓋をしていたら後悔しただろうというストーリーも読み取ることができるのではないかと思うのです。


2.初心

j-hope/チョン・ホソクという人物について私は「真っすぐ過ぎるが故に一周回って自らの背中に銃口を突き付け続けるタイプ」であるという印象を持っています。バンタンのパフォーマンスレベルを維持し、向上させ、支えることに尽力できるのも、そういった「常にどう見られているかを意識する」能力が非常に高いからなのではと感じています。

自分で自分を修正する力がある人は、時に自分に厳しくなり過ぎる傾向があるのではないかと思います。人が成功する姿は全力で喜べても、上手くいった自分を心から褒め称えることができない。
そして、そんな自分ですらも丸ごと自覚している。
傍から見るとそこまで自分を追い詰めなくても…という姿を、2022年のソロ活動中の記録の中に見ることもありました。

"Just Dance" の歌詞では、愛がはじまった後の気持ちの昂り、緊張の中にも何とか打ち解けたいと願う気持ち、そして、その出会いが自分にとって「合い過ぎる程合っている」という喜びについて綴られていると同時に、「でも君はただの友だち」と、好きだけど思い通りにはならない存在であることを踏まえ、敢えて自ら距離を取るような答えも出しています。

Hey dance with me dance with me
(ねえ 僕と踊って 僕と踊って)
어떤 바운스도 좋아 Dance with me
(どんなバウンスもいい 僕と踊って)
어디서 왔고 왜 춤을 추고
(どこから来て、なぜダンスを踊って、)
자연스러운 대화 Say something
(自然な対話 何か言ってよ)
이상해 너무 잘 맞기에 뭐든지 잘 될 거 같아
(可笑しい 良く合い過ぎてるから 何だろうと上手くできるみたいだ)
But you're my friend yeah my friend
(でも、君は僕の友達 僕の友達)
Just
(ただの)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

上手く事が進んで楽しくて仕方がないけど、我に返り冷静になる瞬間を作る必要性を感じている。

時に「結」がリリースされた2018年と言えば、既に飛ぶ鳥を落とす勢いで世界中を周りライブを開催していた頃。彼の初のミクテ 「Hope World」が3月に発表された一方、年末のMAMA授賞式では辛かった時期を振り返り涙する彼の姿もあり、業界における自身の在り方について一層厳しく自問し続けた時期でもあったのではないかと思います。

何をよすがに「希望」ある姿を体現するべきなのか。
その答えはやはり「ダンス」。その一択でした。

I just wanna wanna wanna
I really wanna wanna wanna
Just dance

https://music.bugs.co.kr/track/31203499

ダンスがしたい。
出会った時のあの衝撃を思い返し、あらためて確認した「初心」がここに刻まれています。

思えば彼がこの「初心」について言及するのはこれが初めてではありません。

一瞬ごとに 自分に誓いを立てるよ
初心を忘れないように
いつも自分らしく
最初の自分に恥じないように
――"Born Singer" 歌詞和訳記事よりj-hopeパートを抜粋

https://note.com/nozomiari/n/n87a9e11a1981

前出の動画でナムさんが「この曲は本当にホソギのような曲。これはホソギにしかできない」と断言していますが、ホビのデビュー前のバックグラウンドや、生業に対する姿勢を知った上でこの楽曲に触れると、本当にそうだなと思います。


3.僕の好きなこと

ここからは〈彼自身とメンバーたち〉の物語について語られていると思われる部分について迫ってみたいと思います。

Uh 진흙 같은 내 삶 속
(泥のような僕の人生の中)
Uh 한 송이 너란 꽃
(一輪の君という花)
Uh 꽉 막힌 연습실도
(ギュッと詰まった練習室も)
Uh 함께라면 낙원으로
(一緒なら楽園に)
Ay 답도 없던 꿈도 이제
(答えもなかった夢も今では)
Ay 공감대 형성이 매일 돼
(共感帯の形成が毎日できる)
Ay 우리의 리듬은 맞기에
(僕たちのリズムは合っているから)
춤이 있었기에 그 운명적인 박
(ダンスがあったから その運命的な拍)
Let's get it on POP ※2
(さあやってみよう ポップミュージック/ひとりひとりが作る平和)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

※2 POP…ここにはふたつの意味が与えられていると思われます。
・そのまま読む→ポップミュージック
Piece Of Peaceの略として読む→一人一人が平和を作るひと欠片である
ミックステープ「Hope World」収録の "P.O.P(Piece Of Peace), Pt.1" がこの時点で既にリリースされていることを踏まえています。

ダンスで身を立てようとはしていたものの、混沌としていた人生。具体的な「デビュー」を目指して練習生としての生活を始めることになった時、それは正に泥の中に華やかに咲いた一輪の花に見惚れるような思いだったのではないでしょうか。

――練習室での辛く濃厚な日々も、同じ目標を持った者たちと一緒であれば楽園のように思えた。答えが出るとは限らなかった「夢(=デビュー)」を手に入れた今では、チームとしての共感を生み出すために、息の合ったメンバーと日々切磋琢磨することができる。
自分にダンスがあったからこそ運命的に合わせることができた「拍子チャンス」を活かして、希望を形成するためのひとつの欠片となろう。――

웨이브로 물결치는 감
(ウェーブで波立つ感覚)
심장의 뜀박 하나 되는 동작
(心臓の鼓動 ひとつになる動作)
너로 알아가는 지금 내 마음
(君で知って行く 今の僕の心)
계속 이어 나가고 싶은 걸
(ずっと続けていきたいことを)
춤을 좋아했듯이 널
(ダンスを好きになったように 君を)
So you're my love yeah my love
(そう 君は僕の愛 僕の愛)
That's what I like
(それが僕の好きなこと)

※引用文につけた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/31203499

――スケジュールに忙殺され、見失いかけていた自分自身。
何のために踊るのか?誰のために歌うのか?
ひと度舞台に上がり、チームのひとりとして踊れば、ひとつになれることへの感動がこみ上げる。
防弾少年団チーム」であることで知って行くことができる「今の自分の本心」。
かつてダンスに魅了された時のように、チームに対しての愛情が深まっていく。
そう、それが「僕の好きなこと」。――

運命的な出会いを果たした〈僕と君〉は、「好きなこと」を通して強い絆で繋がる同志であり、愛情を分かち合う伴侶のようでもあり、自分で自分を信じて闘うための武器でもある。
「ダンス」というホビの人生にとって掛け替えのない要素を軸に何層にも張り巡らされた〈愛のはじまり〉の物語が、この "Just Dance" という楽曲を彩っています。

記事の投稿は一日遅れですが、2/18はホビのお誕生日でした!
홉이 생일 축아해요~!
君と一緒にいる感じが好き。君と一緒に踊るのが好き。
そんな風に「ナチュラルに」口にしながら、時には少し肩の力を抜いて、好きなことをこれからもずっと楽しんで続けていって欲しいなぁと、そう思います。


今回も最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
💃