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V "Blue" 君はまだ憂いの中 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.104

月から一日 借りてきた星々
みんな 君を見つめているよ
でも愛し君はまだ 憂いの中

Blue



終わることなく
いつまでも続く
そして僕の愛は
終わることなく
いつまでも続く
僕ら行けるかな
いつまでも
どこまでも
そして明日へと
終わることなく

僕が君に明らかにして
全てをあらためたなら
どうなるのだろうか?
みどり、きいろ、あか、あお
君にとって良いものだと
思えるものなら何だって

月から一日 借りてきた星々
みんな 君を見つめているよ
でも愛し君はまだ 憂いの中

青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い

(あゝ、終わることなく続く)
(あゝ、終わることなく続く)

このところ度々
いている溜息
僕の気持ちまでも沈んでいく
全て言ってくれ 残らず全部

だから
僕が思うように心を開いてくれ
そして 君の傍にいさせて
世界が変わるのを感じてよ
解き放ち、飛び立て

青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い

青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い、青い
青い

(あゝ、終わることなく続く)
(あゝ、終わることなく続く)



韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

『Blue』
作曲:FRNK , Absent Chronicles , Catharina Stoltenberg , Henriette Motzfeldt
作詞:Catharina Stoltenberg , Henriette Motzfeldt , Gigi
編曲:FRNK , Absent Chronicles


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今回は、2023年9月にリリースされたBTSのVによる1stソロアルバム「Layover」収録曲 "Blue" を意訳・考察していきます。

アルバムに収録されている(ボーナストラックを除く)全5曲は、それぞれにMVの制作も行われるという超人的な試みがなされています。これはテテの作業方針である「イメージ(映像)を思い浮かべられる楽曲作り」をそのまま実現したものであり、本人もそれが叶ったことに対し、ARMYたちがより一層作品を楽しむことができるとして「とても良かった。満足している」と振り返っています。↓

また、"Blue" という楽曲自体について〈Q.どんな種類の楽曲か〉との質問には〈A.少し特別な曲〉だと表現し、青という名の楽曲ではあるけれど「無彩色に近い」イメージを持っている、と語っています。↓

そんな彼の印象を具現化したと言えるであろう楽曲 "Blue" のMVは、テロップのみが青い文字で挿入され、終始モノクロームのまま物語が進行していきます。

では "Blue" という色は、何故この楽曲のタイトルになり得たのでしょうか。




What if I show you ※1
(もし僕が君に見せたらどうなるだろう)
And make it all new
(そして全てを新しくする)
Green, yellow, red, blue

(緑、黄色、赤、青)
Whatever seems good to you
(君にとって良いと思うものならなんでも)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

※1 What if~…もし~したらどうなるか(参考

「show」と言えば「見せる」が主な翻訳結果ですが、「明らかにする」という意味も含んでいます。
ここでは、これまで何らかの理由で飲みこんできた「僕」の本音や事実を「君」明らかにして全てをあらためることができるとしたら、ふたりの関係性はどうなるだろう、という問いが投げかけられているのではないかと思います。

様々な色彩を例に挙げ、「君」が良いとする色(=性格や態度?)なら何でも(実践してあげる)と、「君」のためならどんな自分にでもなるという「僕」の献身的な思いが綴られています。


달에게 하루 ※2
(月に一日)
빌려온 별들
(借りて来た星々)
널 보네 모두
(君を眺めるね みんな)
But baby you're still blue, blue ※3
(でも愛しい君はまだ憂鬱でいる)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

※2 ~에게…~に(参考)※人・動物に対して使用

「달에게 하루(月に一日)」という直訳は、ぱっと見「ひと月につき一日(=one day a month)」であるかのように見えます。
これは「~에게」の対訳が基本「~に」のみであることによるもので、「one day a month」を韓国語にすると「한 달에 하루」となることから、この歌詞の中の「달」は「month」ではなく「moon」であることがわかります。

日本語の格助詞「に」は「から」に置き換えることができる場合があり、今回の「달에게 하루(月に一日)」は「月から一日」と訳すことができます。(MVの和訳も「から」となっている)

「~から」を表す韓国語の中に「~에게」は含まれないので、あくまでも日本語に訳した後の置き換えであることを頭の片隅に置いておきたいと思います。

また、人・動物に対して使用されるはずの「~에게」をmoonに対して使っている点については、詩的な擬人化表現のひとつ(例:お月様)であると捉えて良いのではと思います。


※3 blue…憂鬱で【形容詞・口語表現】(参考

ここでタイトル回収と相成ります。

何らかの理由でふさぎ込んでいる「君」のために夜空の主であるお月様から満点の星々を借り、総出で「君」の心を照らしだそうとしたけれど、それでも「君」の憂鬱は晴らすことができずにいる。

「Blue」という色は「君」が纏っている憂鬱のことであり、「僕」があらゆる色彩や光をもってしても何故かどうすることもできません。

そして、世界はMVが表現しているような無彩色モノクロームに包まれていき、「僕」もまたその渦中に沈んでいきます。

요즘에 자주
(最近 よく)
내쉬는 한숨
(く溜息)
It's sinking me too
(それが僕をもまた沈ませている)
다 말해줘 전부
(全て言ってくれ 全部)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

最近「君」が頻繁に吐くようになった溜息が、「僕」の気持ちをもまた沈ませてしまう。こんな気持ちになるくらいなら、いっそのこと言えずにいる胸の内を全てぶちまけて欲しい。


So swing my way baby ※4
(だから僕の思う方に心を動かしてよ)
And let me close you
(そして君の傍にいさせて)
And feel the world move
(そして世界が変化するのを感じて)
Fly away, fly away
(飛び立て 飛び立て)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

※4 swing one's way…〈one〉の思う方に気持ちを動かす(参考

「君」の憂鬱を晴らそうと八方手を尽くしたけれど、自分も沈んでしまう程のその手ごわい「Blue」を前にして「僕」は懇願します。

どうか自分の言う通りに心を開いて欲しい、寄り添わせてほしい、そうすれば青く染まった世界はきっと変化するから、憂鬱から解き放たれて飛び立ってくれ。

ここまでを踏まえてから冒頭の歌詞を読むと、より一層切なさが募ります。

On and on and on ※5
(延々と)
And my love
(そして僕の愛は)
On and on and on
(延々と)
Can we go
(僕らは行ける)
On and on and on
(延々と)
And tomorrow
(そして明日へ)
On and on and on
(延々と)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/6212527

※5 on and on…延々と(参考

こうして「僕」は、末永く続く「君」への愛を誓うのです。




「僕」から「君」への揺るぎない愛は確かなものである反面、「君」の「僕」に対する態度は残念ながら「僕」の思う通りにはなっていない様子がよくわかる歌詞となっています。

全て「僕」の視点で物語が進行していくので「君」に何が起こったのかまでははっきりわかりませんが、「僕」という存在を疎ましく思ってしまうきっかけになる出来事があったのではないかと想像してしまいます。

「僕」が「君」への変わらぬ愛を誓えば誓う程、ふたりがいる世界は光と色彩を失っていく。
そんな設定でMVをあらためて視聴すると、またあらたな感情が生まれるかもしれません。



今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
💙