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BTS "N.O" 俺たちは俺たちらしく 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.134

皆 さあ叫べNOと!
もう 後回しと言うのではダメだ
もう 他人の夢に閉じ込められて生きるな
俺たちは 俺たちらしく 俺たちなりに

N.O



イイ家、イイ車
そんな事が幸せなんだろうか?
ソウルでSKYに行けば、
両親は本当に幸せになるのか?

夢は失せたね 息つく暇も無くて
学校と家、あるいは
ネカフェが関の山 堂々めぐり
変わり映えのない人生を生きて
一位を強要される学生は
夢とうつつの間の二重スパイ

俺たちを学ぶ機械マシンに仕立てたのは誰?
一位以外は 落伍者扱い
表情かおを作らせたのは、
型に閉じ込めたのは、
大人であることを容易く納得するしかない
難しく考えなくても 弱肉強食の名の元に
親しい友をも踏み台にさせたのは
誰だと思う?なぁ?

大人たちは俺に言うね
苦しいのは今だけだと
もう少し我慢しろと 後でやれと

皆 さあ叫べNOと!
もう 後回しと言うのではダメだ
もう他人の夢に閉じ込められて生きるな
俺たちは 俺たちらしく 俺たちなりに

皆 さあ叫べNOと!
本当に 今じゃなきゃダメなんだ
未だ何もしてみてないじゃないか
俺たちは 俺たちらしく 俺たちなりに
皆 さあ叫べNOと!

イイ家、イイ車
そんな事が幸せなんだろうか?
ソウルでSKYに行けば、
両親は本当に幸せになるのか?

遊んで食っていたい
制服を引き裂きたい
高額収入を得るんだ
すでに偏った人生観
漠然とするだけの通帳、
俺の不幸は限界突破さ
勉強する溜息製造工場、
続けられるその場凌ぎ

大人たちが吐露する
お前らは本当に楽なのだと
身に余る程に幸せなのだと
じゃあこんなにも不幸な俺は何?
勉強以外に話題が無い
外には俺みたいな子が溢れ
寸分違わぬ言いなりの人生
一体 誰が責任取ってくれんの?

大人たちは俺に言うね
苦しいのは今だけだと
もう少し我慢しろと 後でやれと

皆 さあ叫べNOと!
もう 後回しと言うのではダメだ
もう他人の夢に閉じ込められて生きるな
俺たちは 俺たちらしく 俺たちなりに

皆 さあ叫べNOと!
本当に 今じゃなきゃダメなんだ
未だ何もしてみてないじゃないか
俺たちは 俺たちらしく 俺たちなりに
皆 さあ叫べNOと!

皆 さあ叫べNOと!
皆 さあ叫べNOと!
皆 さあ叫べNOと!
皆 さあ叫べNOと!


韓国語歌詞はこちら↓
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

『N.O』
作曲・作詞:Pdogg, “hitman” Bang, Rap Monster, SUGA, Supreme Boi


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今回は、2013年9月にリリースされたBTSのミニアルバム第1集「O!RUL8,2?」に収録された、タイトル曲 "N.O" を意訳・考察していきます。

デビューシングルアルバム「2 COOL 4 SKOOL」の発表から3か月でのカムバックとなったこの「O!RUL8,2?」は、引き続き10代・20代の若者たちの現状に率直な疑問を投げかけることをテーマとした作品群が収められています。

タイトル曲となるこの "N.O" の曲名は、公式のアルバム紹介文と当時の企画映像によるとこのピリオドの位置は意図的なものであり、否定の意である「No」であると共に「No offence(悪気はない)」の略であることから 'N' と 'O' の間にピリオドが入れられている、とのこと。そこには、虚勢を張った意味のない若さ故の無謀な反抗ではなく、正確なメッセージで社会に問いを投げかけたいという彼らの意図が込められているのだとされています。

〈黒〉を基調とした「2 COOL 4 SKOOL」のプロモーション展開に対して「O!RUL8,2?」では真逆の〈白〉をコンセプトカラーに据えており、その対照的なビジュアルにはファンを飽きさせない真新しさがありつつも、楽曲には一貫した主張が息づいていることが一聴にして明らかです。

1.'SKY' に行けば幸せなのか?

冒頭から登場する「SKY」は「空」の意味ではなく、韓国の〈超・学歴社会〉の象徴として知られているキーワードであり、人気を博したドラマの題材にもなっているものです。
まずはこの「SKY」について予習をするための記事をいくつか。↓

"N.O" の歌詞で「SKY」は以下のように登場します。

좋은 집 좋은 차 그런 게 행복일 수 있을까?
(イイ家 イイ車 そんなことが幸せなのか?)
In Seoul to the SKY, 부모님은 정말 행복해질까? ※1
(ソウルでSKYに行けば、両親は本当に幸せになるのか?)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※1 SKY…韓国の三大難関大学の頭文字をとった造語(参考
Seoul=서울대학교(ソウル大学)
Korea=고려대학교(高麗コリョ大学)
Yonsei=연세대학교(延世ヨンセ大学)

韓国における受験戦争の熾烈さは日本の比ではないとしている見解を多く目にします。
誰もが認める「高学歴」を手にすることが出来る有名難関大学は、受験対策をする時点で塾代などにまとまった資金が必要であり、単に本人の学力が高ければ良いという訳にはいかない、という状況は、日本でも同じことが言えると感じます。

韓国では行き過ぎた受験戦争に歯止めをかけるべく理不尽な難問の出題を禁止する動きも出る一方で、学科試験に替わり主流となりつつある「수시모집(随時募集)※総合型選抜(AO入試)に類似」対策として、ポートフォリオの内容を充実させるための費用がかさんでもいるとのこと。

楽曲リリース前年の2012年11月に公開されたネット記事では、ソウル住み富裕層の教育環境に倣うために必要な「私教育費(学校以外に掛かる教育費)」についての調査結果と共に、どんな校外活動を親が子にさせているかが紹介されています。
英語、美術、ピアノ、テコンドー…そういった課外塾に自主的に通わないと「友好関係が途絶える」との声もあります。

我が子が良い大学に入り高収入の職業に就くことを切望し、洗脳まがいの呪いをかけ、周りより少しでも得をするためにはこの道しかない、と他の選択肢を与えない大人たちの存在が、この「超・学歴社会」を作り上げている。
こんな風に言うこともできるのではないかと私は思います。
選択肢を与えられなかった子供たちが、大学進学→企業就職の定型コースを敢えて自ら外れてまでその身一つで食って行こうという心境にはまず至らないでしょう。

そして「教育ビジネス」や「就活ビジネス」が、更にこれらの機運に拍車をかけています。(韓国の「イルタ」と呼ばれる人気塾講師は破格の年収を得ていることでも知られている)
みんな塾やセミナーに通ってますよ、通わないと後れを取りますよと触れ込み、塾生の合格を自分たちの手柄にして更に新たな塾生を獲得するための宣伝をする。

大学は必ず行くものである。「他の誰か」より偏差値の良い大学に。
就職は必ずするものである。「他の誰か」より報酬の良い企業に。
「他の誰か」より少しでも聞こえが良い学歴・職歴を持つこと。
それが幸せであり、それが当然である。

「他の誰か」よりも良い大学・良い企業に入るというノルマからよそ見をさせない大人の下にある子どもたちに、
本当にそれでいいのか?お前らそれで幸せなのか?
と問いを投げかけるところから、"N.O" の主張は始まるのです。


2.変わり映えのない人生は誰のせい

歌詞はその後、学生たちが送る生活の現状を「二重スパイ」と揶揄していきます。

꿈 없어졌지 숨쉴 틈도 없이
(夢が無くなったね 息つく暇もなく)
학교와 집 아니면 피씨방이 다인 쳇바퀴 같은 삶들을 살며
(学校と家 それともネットカフェが全ての回し車のような人生を生きながら)  ※2
일등을 강요 받는 학생은 꿈과 현실 사이의 이중간첩 ※3
(一位を強要される学生は夢と現実の間の二重スパイ)

※引用文に付けた和訳は直訳(意味を通すために改行箇所を操作)
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※2
・다인=다(全て)+이다(である)=다이다の連体形
・쳇바퀴…(ハムスター等が使う)回し車
★例:「다람쥐 쳇바퀴 돌듯」=リスが回し車を回るように→堂々巡りするように(参考
学校と家(あるいはたまにネカフェ)の間を行き来するだけの息つく暇も夢もない日々を「堂々巡り」であると表現している。
※3 이중간첩(二重間諜)…二重スパイ

(「二重スパイ」と聞くとハン・ソッキュ主演の映画を思い出します。私が二重スパイの存在を知るきっかけになった作品でした。)

本来の意思や欲求、夢に蓋をして、学校や親族にいい顔をし続けなければならない生活。
周りの友人を蹴落としトップを目指せと一様に強要され、家と学校・塾(たまにPCバン)を行き来するだけの変わり映えのしない毎日。

"N.O" のMV は、アルバムのビジュアルと連動した '白' を基調とした教室のシーンから始まり、'黒' を纏ったメンバーが似通ったスタイリングで着席し、一糸乱れぬ行動を取る様子が映し出されます。
少しでもよそ見をすれば教師から指摘され、その表情は能面のよう。

夢(自分の意思)と現実(大人の意思)の間で葛藤を続ける彼らは、どちらに対しても「ついている嘘」がばれてはならないという差し迫った状況にあると言えます。
本当は他にやりたいことがあるけれど、大人が希望する進路が自分の志望でもあるとせざるを得ない。二重の嘘をついたまま、息抜きをする暇もなく決められた時間に決められた場所で忠誠心を示さなくてはならない。

そして "N.O" の歌詞は、堂々巡りの毎日・変わり映えのしない生活を送りつつも、自分が置かれている状況の異質さを自覚できていない学生たちに、その状況を作り出したのは誰なのかを気付かせようとしていきます。

우릴 공부하는 기계로 만든 건 누구?
(俺たちを勉強する機械に作り上げたのは誰?)
일등이 아니면 낙오로 구분
(一位でなければ落伍に区分)
짓게 만든 건 틀에 가둔 건 ※4
((表情を)作らせたのは 枠に閉じ込めたのは)
어른이란 걸 쉽게 수긍
(大人だということを簡単に納得)
할 수밖에 단순하게 생각해도 약육강식 아래 ※5
(するしかない 単純に考えても弱肉強食の元)
친한 친구도 밟고 올라서게 만든 게 ※6
(親しい友人も踏んでその上に立たせたのが)
누구라 생각해 what?
(誰だと思う?)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※4
・짓다…(表情を)作る(参考
・~게 만들다…~のようにさせる【使役】(参考
※5
・할 수 밖에 (없다)…~するしかない(参考

「弱肉強食」が世の常であり、友人をも蹴落として上に立つことが自分の意思だと錯覚させられて●●●●●いる。
そして「辛いのは今だけだ」から、勉強に関係のないことは「(受験が終わるまで)もう少し我慢しろ」「(受験が終わった)後でやれ」と言われる。

어른들은 내게 말하지 힘든 건 지금뿐이라고
(大人たちは俺に言うね 辛いのは今だけだと)
조금 더 참으라고 나중에 하라고
(もう少し我慢しろと 後でやれと)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

大人が敷いたレールの上を大人が用意した目的に向かって走らされ、景色を楽しむ余裕も、思い出を分かち合える友もいない、分刻みの過密スケジュールが組まれた「本当にやりたいことは後回し」の孤独な一人旅。

こんな旅は辛くて当たり前なのに「当たり前」の基準が生まれながらにしてずっと大人の領域にあるため、何が自分にとって本当に大切なものなのかを学生たちは見失っている。彼らが二重スパイにならざるを得ないのは他でもない大人のせいなのでは?と、逆らうことが容易ではない身近な「大人」に対して疑念を持つことを後押ししていきます。


3.借'夢'地獄

歌詞は後半に入ると、受験戦争の当事者である学生たちが何をその目に映し、何を原動力としているのかを言い当てていきます。

놀고 먹고 싶어 교복 찢고 싶어
(遊んで食べたい 制服を破りたい)
Make money good money 벌써 삐딱한 시선 ※7
(高収入を得たい 最早偏った視線)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※7 make good money…高収入を得る(参考

自らの意思で決めた進路であれば志望理由にも本人の具体的な意思が反映されるのが自然かと思いますが、いざその動機を問うてみても「不自由なく暮らしたい」「とにかく高収入を得たい」といったぼんやりとしたものでしかありません。

よくよく考えてみると、これらの理由は大人が子供に押し付けたものなのではないかという推測に辿り着きます。「偏った視線」はこの、大人側の意思に明らかに偏ってしまった視点、観点のことなのではないでしょうか。
高学歴を得て収入の良い職に就き、不自由のない生活を送る。
これが「夢」の代わりに親が子に刷り込んだ進学の「目的」なのですから、当人にそれ以上のビジョンが浮かばないのは致し方ないのではと思います。
彼らの目に見えているのは、合格そこまでの世界でしかないとも言えるのです。

それでは、本来前に進むためのエネルギーとなるはずの自身の「夢」を満足に持ち合わせていない学生たちは、一体何を糧にしているのか。

それは「自分ではない誰かの夢」です。
他の誰かを蹴落としてでも合格を掴むために必要なモチベーションを維持するための十分な「夢」が揃わない内は、他人の夢を借り入れることでしか自らの行き先を定め進む力を得ることができない。
そんな状況を歌ったのが後に発表される "낙원(Paradise)" です。

우린 꿈을 남한테서 꿔 (빚처럼)
(僕らは夢を他人から借りる(借金みたいに))
―― "낙원"

https://music.bugs.co.kr/track/31078331

期日までに「夢」が揃わなければその先に進むことが許されないなら、誰かから借り入れてでもそれを用意する必要がある。
自身の「夢」を満足に見い出せないまま親の目的を「夢」として借り入れている状態で、周りに後れを取らないように全力で走り続けることがどれ程過酷であるか、その辛さを表現しているのが "낙원(Paradise)" のモチーフ「フルマラソン」なのです。

そして、借り入れにはそれ相応の担保が必要です。彼らは何を担保に「夢」を借り入れているのか。

막연함뿐인 통장, 내 불행은 한도초과지
(見通しが立たないばかりの通帳、俺の不幸は限度超過だよ)
공부하는 한숨 공장, 계속되는 돌려막기 ※8
(勉強する溜息工場、続けられる一時凌ぎ)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※8 돌려막기…一時凌ぎ(参考
★돌리다(回す)+막다(防ぐ)の合成語。返済期限が迫る借入金を別の借入金で返済し、その場を一時的に凌ぐような場合を指す。

親の目的を達成するため、勉強し続けることによって見通しが立たない未来を無理やり描こうとするが故に止まらない溜息。
足りない「夢」を補填するために、場当たり的に借り入れを重ねて一時凌ぎを続けなければならない。
借り入れの度に「通帳」に刻まれていく「不幸」の値はとっくに「限度超過」。

つまり彼らは、自らの幸福感を担保に「夢」を借り入れていると言えるのではないでしょうか。大人の目的を果たすためには、幸福感を切り崩して「夢」を無理やり補填せざるを得ないのです。

ところが大人の方はそんな〈火の車〉状態の学生たちのことを「楽をしている」と言ってのけます。

어른들이 하는 고백 너넨 참 편한 거래 ※9
(大人たちがする告白 お前たちは本当に楽なのだと)
분에 넘치게 행복한 거래
(身に余るような幸せなことなのだと)
그럼 이렇게도 불행한 나는 뭔데
(じゃあこんなにも不幸な俺は何?)
공부 외엔 대화주제가 없어
(勉強の以外には会話の主題が無い)
밖엔 나 같은 애가 넘쳐 똑같은 꼭두각시 인생
(外には俺みたいな子が溢れて 全く同じ操り人形の人生)
도대체 누가 책임져줘?
(一体誰が責任を負ってくれる?)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※9 ~래…「~라고 해(~と言う)」【間接話法】の短縮形(参考

自分のためにお金を出してくれる大人がいる。衣食住の心配をせずに勉強に専念できる。これらを「楽」と言わずして何と言おうか。そんな潜在意識が大人の側にはあるのだと思います。
しかし、自分たちが過去に経験した苦労を、今を生きる学生たちの現状と単純に比較して、自分の頃に比べたらお前たちは「楽だ」と言い切るには無理があります。
現代を生きる学生には彼らにしかわからない苦労や悩みがあり、それを前にした時、大人の、ましてや一個人の経験値など、あってないようなものなのです。

このような大人と子供の「楽」に対する価値観の違いは、残念ながらおそらくそのほとんどが「子供は大人の言うことに従うもの」という暗黙の了解のもとに無かったことにされ、表情を失くした操り人形と化した子供たちが巷に溢れる原因のひとつとなっているのではないかと感じます。


4.俺たちは俺たちらしく

この理不尽な状況に高らかと「NO」を突き付けよう。
No offence悪気はない」の精神の元、決してわがままに駄々をこねるのではなく正々堂々と自分たちらしく。
そう鼓舞するサビの歌詞は、バンタンをして「전투력 상승 음악(戦闘力上昇音楽)」と言わしめるに値する力強いものとなっています。

Everybody say NO!
(皆 叫べ「NO」と!)
더는 나중이란 말로 안돼
(もう「後で」と言うのはダメだ)
더는 남의 꿈에 갇혀 살지 마
(もう他人の夢に閉じ込められて生きてはならない)
We roll (We roll) We roll (We roll) We roll ※10
(俺たちは俺たちらしく)
Everybody say NO!
(皆 叫べ「NO」と!)

정말 지금이 아니면 안돼
(本当に 今でなければダメだ)
아직 아무것도 해본 게 없잖아
(まだ何もしてみたことがないじゃないか)
We roll (We roll) We roll (We roll) We roll
(俺たちは俺たちらしく)
Everybody say NO!
(皆 叫べ「NO」と!)

※引用文に付けた和訳は直訳
https://music.bugs.co.kr/track/3199567

※10 roll…〜らしくいく(参考

「しろ、と言われるがままにやればいいんだって。大学に行けば全て上手くいくよ」と諭す大人の言葉を鵜呑みにした結果、自らの夢の不在にようやく気付き「やりたいことがない」と挫折感を味わう若者たちの声を拾ったのが Agust Dの "So Far Away" です。

進学・就職が高校・大学卒業のタイミングで一斉に行われ、その機を逃したとたん肩書が「浪人」になってしまうという点で韓国と日本の社会は良く似ています(欧米には浪人という概念が無い)。

韓国では近年青年層の就職難が続き「長期就職浪人」が増えており、大学を卒業して1年経っても就職が決まらない人が3割いるという2024年の調査結果が出ているそうです。↓

受験勉強に生活の全てを注ぎ大卒という肩書を手に入れても、順調に就職を決めることができる人は限られている。
果たして、幸せを担保に借り入れてまで補ってきた彼らの「夢」は一体、何をもってして「叶った」と言うことができるのでしょうか。
そして、そのような状況でも大人たちの目的は「果たされた」と言えるのでしょうか。

進学ビジネスの口車やご近所さんの噂話に左右されない。
学生主体の進路選択が最善と頭ではわかっていても、結局、持たざる者にはなりたくない、させたくない。
という親心という名の見栄やプライドで「とりあえず」大学までは行きなさいと諭す大人がここ日本でもほとんどである、という実感が、現役の中高生保護者としてこの数年を過ごしてきた私の中にはあります。

個人的には、やりたいことが大学でしか叶わないなら大学に行くべき。そうではないなら行く必要はない、と思っています。
何者かになるために必要な知識と経験を身につけることができる時間と場所を得ることができる機関は、大学だけではないのではないかと思うからです。
やりたいことが見つからないまま節目の年を迎えるぐらいなら、勉強する時間なんてもったいないと思っているくらいです。
いい大学に入っていい会社に就職することだけが人として生き延びることができる道だとは全く思いません。

他人の夢を借りる処世術よりも、自分の夢に向き合う勇気を持ってほしい。
「NO」が言える強さを子供たちに授けることは、やはり大人の務めなのではないかと強く思います。



今回も、最後までお付き合い下さりありがとうございました。
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