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たまに人間のふりをすればいい
過去のnoteでもたびたび書いてきたが、私はナマケモノが好きだ。
ナマケモノのぬいぐるみは5匹もいるし、通りすがりの雑貨屋で目にしたときには、両脇をつかんで、目を覗き込み、「きみもうちにくるかい?」と勧誘したりもする。勧誘しておいて難だが、これ以上増えると私の寝床が狭くなるので、連れて帰らない。だから、集めているわけではない。
私が”なまけもの”という言葉を知ったのは、小学生のとき。
学祭かなにかの準備をしていたときに、作業せずに地面に座り込んで遊んでいた男子に向って、女子が「こら、怠け者ども!手伝え!」と言っていたのを聞いて、怠けている人のことを”なまけもの”って言うんだなぁと、新しく知った言葉に感心していた。
数日後の朝、登校時間ぎりぎりなのに、ゆっくり朝ごはんを咀嚼していたら、母に「ナマケモノじゃないんだから、早く食べちゃいなさい」と言われ、怠けているつもりはなかったので、「怠けてないから、”なまけもの”じゃないよ」と返すと、「”なまけもの”っていう動物がいるのよ。今度見つけたら教えてあげるから、早く学校行きなさい」と教えてもらった。
”なまけもの”という名前を付けられるだなんて、なんだか可哀想という気持ちと、飲んだくれのどうしようもないおっちゃんのイメージを想像して、ひとりでくすくす笑いながら登校した。
しばらくの間、”なまけもの”ってどんな動物なんだろうと想像を膨らませて楽しんでいた。
その週末、テレビでBSのネイチャードキュメンタリー番組を見ていた時に、コグマのようなサルが木にぶら下がっている映像が流れた。
あまりのかわいさに、「え!かわいい」と思わずソファから立ち上がった時、近くにいた母が、「あ、それが”なまけもの”よ」と言ったので、「これがあの”なまけもの”か!」と感激した。
想像していたのとは、サイズもカタチも全然違っていたが、実物の方が断然かわいかった。
ときどき、ナレーションでナマケモノの情報が流れて、
「ナマケモノは、1週間、木から降りません」と聞くと、
「え!1週間も木から降りないの!?」と驚き、
「排泄も1週間に1度だけです」と聞くと、
「え!トイレも1週間に1回だけなの!?」と驚いた。
ナレーションの言葉にいちいちオーバーなリアクションを取っていたら、母から「やかましい!」と叱られたが、もうそれどころではなかった。
ナマケモノがモグモグと葉を食べたり、木の上でぼんやりしているところを見ているうちに、「あ、仲間がいる!」と思ったのだ。
同世代の人間を見ても、いままでそういうふうな感情を抱いたことはなかったというのに。
だから、ナマケモノを見ていると落ち着くのかもしれないし、ナマケモノのぬいぐるみに引き寄せられるのかもしれない。
もしも地獄へ落ちずに輪廻転生できるのなら、次は身も心もナマケモノになりたい。
そのために、せめて地獄に落ちないように善い行いをせねばと思う。
嘘をつくだけでも地獄に落ちるそうだから、もしかしたらもう手遅れなのかもしれないけどね…
そう思って、生まれ変わりは少し諦めた。
現世では、人間の皮をかぶっているということにして人間を頑張るが、休日はこころゆくまま、スローに生活するのだ。(たまに人間のふりをしている事を忘れてしまうことがあるけれど。)
自分の好きなペースで生きると、人がたくさんいる街では迷惑になるので、普段は頑張ってキビキビと生きているつもり(ではあるが、友人からは遅いとよく言われる)だ。
でも、家の近くの道を歩くときは、本当に自分のペースで歩く。
ベビーカーを押すお母さんには抜かされるし、杖をつくおばあさんといい勝負をしているけれど。
そうじゃないと、空がこんなに美しいことも、雨が降りそうな匂いも、この間までぽわぽわだった綿毛が飛んでしまったことにも、気が付かないのだから。
何をたらたらと書いているんだろうね。
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