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ブランドのパーパスを伝える、「言葉」より強いもの

東京・表参道の「スパイラル」。ギャラリーやホール、レストランのある複合文化施設です。ゆるやかなスロープに囲まれている1階のカフェは、1980年代の雰囲気を感じさせます。ファッションブランド「ミナ ペルホネン」のショップがこの5階にあると知って、先日初めてエレベーターに乗りました。そこで驚いたことが2つあります。

一つは、エレベーターを降りたらまるで違う世界が広がっていたこと。
このショップ「call」には、服、食器や雑貨、ファブリックが並び、気持ちの良いガーデンテラスがついたカフェも併設されています。
ひと目でミナと分かるコートを着て買い物に来ている人や、満席のカフェの前で静かに待つ人たち。表参道という雑踏の中にあるにもかかわらず、温かな空気が流れていました。

もう一つは、何人か年配のスタッフがいたこと。グレイヘアの女性、個性的な眼鏡をかけた女性……彼女たちはミナ ペルホネンのユニフォームを着てゆったりと、でもてきぱきと接客をしていました。

2017年、「call」をオープンした後のインタビューで、ミナの創業者でデザイナーの皆川明さんはその背景についてこう話しています。

「ファッション産業は人不足ですが、販売職の募集の多くは20歳から35歳までとレンジが狭い。(中略)いろいろなお客様がいらっしゃることを想定した時、幅広い人材で接客するほうが理にかなっていると考えました」(繊研新聞)

募集要項には「100歳大歓迎!」の文字が。皆川さんは、「社会にはこういう働き方があると提示することは、ミナという会社が既成概念とは違う方法でアパレルを営んできた姿勢ともつながる」と同じインタビューの中で言っていました。

ここ数年、例えば人種差別やジェンダーギャップの解消など、社会課題の解決に対して企業が自社のパーパスに基づき行動を起こす「ブランド・アクティビズム」が広まっています。
「せめて100年続くブランド」という皆川さんの言葉は、ブランドサイトの隅の方に書かれているだけで、パーパスとして大きく掲げられているわけではありません。でも、80歳を超えるスタッフが生き生きと働く姿は、どんな言葉よりもブランドのあり方を伝えるものだと感じました。

(2023.4.13)

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