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これを超える映画にはしばらく出合わないかもしれない——『悪は存在しない』

映画を観てきました。この先しばらく、これを超える映画に出合わないかもしれない、と思う作品でした。

濱口竜介監督の『悪は存在しない』です。

それぞれ別の活動をしている知人3人から、「これは観た方がいい」と聞いて予備知識なく映画館に出かけました。後日チェックした公式サイトには「ストーリー」としてこう書かれています。

”長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。”

確かに説明するとこうなるものの、ストーリーを追う映画でもありません。かといって、文芸映画ファンや評論家だけが激賞するような、難解な作品というわけでもない。登場人物の描き方などむしろ分かりやすい映画です。

パンフレットは、通常版と7インチのレコードつきの2種類がありました。

映画館を出た直後の私の感想は、「これは映画じゃないと伝えられない、映画だからこそ伝わる、映画という器はこの作品のためにあるのかもしれない」。

私がそう思ったのは、このコラムも含めてふだんテキストや、動画だとしても言葉を中心にしてメッセージを伝えていることにもあると思います。映画だからこその余白がありました。

映像とともに心に響くのが音楽。音楽家の石橋英子さんから濱口監督に映像制作のオファーがあってこの映画が生まれたと知り、なるほどと思いました。キャストに関しての裏話もあり、主演の男性も俳優ではなくもともと制作部のスタッフなのだとか。

話は尽きません。これから観に行く方のためにこのあたりにします。

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