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コペンハーゲンのスキー場と、わたしたちが未来に遺すもの

寒いのが苦手で、旅行では南へと向かいがち。北海道へ行ったのは数えるほどしかありません。映画『コペンハーゲンに山を』について知ったとき、一度家族で行ったモエレ沼公園(札幌市内)のことが頭に浮かびました。

モエレ沼公園は、一言でいえば廃棄物を埋め立てた後につくられた公園。イサム・ノグチによる設計です。私が行った夏には、芝生の山で地元の人と思しき家族がピクニックをする姿がありました。貯水池としての役割を果たす、雪を蓄えて夏の空調に利用するなど自然環境保全にも配慮されているそうです。

『コペンハーゲンに山を』の主題となっているのは、ゴミ焼却発電所とスキー場を兼ねた世界初の建造物、「コペンヒル」。映画はコペンヒル建設の完成までを追ったドキュメンタリーです。コペンヒルとモエレ沼公園とは似て(そもそも似ていない?)非なるものと分かっていつつ、公開から3週間後にようやく観てきました。

1時間足らずの映画の中で、このプロジェクトを発案した建築家、ビャルケ・インゲルス氏の言葉が心に残っています。
「全ての世代にとってこれが日常になるんです。コペンハーゲンの“人工の山”の頂きから奇想天外なアイデアを生み出すのです」

BI PREMIUMの連載「北欧はなぜ『幸福の国』になれたのか」の著者、井上陽子さんによれば、コペンヒルは市民からとても好意的に受け入れられているとのこと。

インゲルス氏の言葉は、日常の繰り返しで人の認知や記憶がつくられ、記憶が重なることで未来が生まれる、と言い換えることもできそうです。
考えてみれば、本コラムを今iPhoneで書いているこの日常も、20年前にはなかったもの。私たちが次の20年に残せるものは何でしょうか。

(2023.2.9)

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