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「教科書が終わらない」のナゾ

「忙しくて教科書が終わらない」とか「教科書を終わらせる時間が足りない」とか学校あるあるですかこれ。

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最近は、保護者側の方からも「先生が教科書が終わらないって言ってるのを耳にするのですが・・・」という声をいただいたり。

教科書って終わらせなきゃいけないものではないんですよ。使って教えればいいわけで。やらなきゃいけないって決まっているわけではないんですよ。

文部科学省が決めているのは「学習指導要領」に書かれていることでして。保護者のみなさま知っておいてくださいませ(教員のみなさんは知ってますよね・・・)

学習指導要領

文部科学省が告示する初等教育および中等教育における教育課程の基準です。誰でも読むことが可能です。

気をつけないといけないのが、解説を読んでいる教員が多いのです。解説は解説なので、読むべきは「学習指導要領」の方です。学習指導要領では各教科、各学年において、目標・内容・内容の取扱いたとえば、小学校三年生の理科であれば。これぐらいになります。

1 目 標
⑴ 物質・エネルギー
① 物の性質,風とゴムの力の働き,光と音の性質,磁石の性質及び電気の回路についての理解を図り,観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
② 物の性質,風とゴムの力の働き,光と音の性質,磁石の性質及び電気の回路について追究する中で,主に差異点や共通点を基に,問題を見いだす力を養う。
③ 物の性質,風とゴムの力の働き,光と音の性質,磁石の性質及び電気の回路について追究する中で,主体的に問題解決しようとする態度を養う。
⑵ 生命・地球
① 身の回りの生物,太陽と地面の様子についての理解を図り,観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。
② 身の回りの生物,太陽と地面の様子について追究する中で,主に差異点や共通点を基に,問題を見いだす力を養う。
③ 身の回りの生物,太陽と地面の様子について追究する中で,生物を愛護する態度や主体的に問題解決しようとする態度を養う。

2 内 容
A 物質・エネルギー
⑴ 物と重さ
 物の性質について,形や体積に着目して,重さを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 物は,形が変わっても重さは変わらないこと。
(イ) 物は,体積が同じでも重さは違うことがあること。
イ 物の形や体積と重さとの関係について追究する中で,差異点や共通点を基に,物の性質についての問題を見いだし,表現すること。
⑵ 風とゴムの力の働き
 風とゴムの力の働きについて,力と物の動く様子に着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 風の力は,物を動かすことができること。また,風の力の大きさを変えると,物が動く様子も変わること。
(イ) ゴムの力は,物を動かすことができること。また,ゴムの力の大きさを変えると,物が動く様子も変わること。
イ 風とゴムの力で物が動く様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,風とゴムの力の働きについての問題を見いだし,表現すること。
⑶ 光と音の性質
 光と音の性質について,光を当てたときの明るさや暖かさ,音を出したときの震え方に着目して,光の強さや音の大きさを変えたときの違いを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
 電気の回路について,乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子に着目して,電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較
(イ) 物に日光を当てると,物の明るさや暖かさが変わること。
(ウ) 物から音が出たり伝わったりするとき,物は震えていること。また,音の大きさが変わるとき物の震え方が変わること。
イ 光を当てたときの明るさや暖かさの様子,音を出したときの震え方の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,光と音の性質についての問題を見いだし,表現すること。
⑷ 磁石の性質
 磁石の性質について,磁石を身の回りの物に近付けたときの様子に着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があること。また,磁石に近付けると磁石になる物があること。
(イ) 磁石の異極は引き合い,同極は退け合うこと。
イ 磁石を身の回りの物に近付けたときの様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,磁石の性質についての問題を見いだし,表現すること。
⑸ 電気の通り道
 電気の回路について,乾電池と豆電球などのつなぎ方と乾電池につないだ物の様子に着目して,電気を通すときと通さないときのつなぎ方を比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付
けること。
(ア) 電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方があること。
(イ) 電気を通す物と通さない物があること。
⑵ 内容の「A物質・エネルギー」の⑷のアの(ア)については,磁石が物を追究する中で,差異点や共通点を基に,電気の回路についての問題を見いだし,表現すること。
B 生命・地球
⑴ 身の回りの生物
 身の回りの生物について,探したり育てたりする中で,それらの様子や周辺の環境,成長の過程や体のつくりに着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 生物は,色,形,大きさなど,姿に違いがあること。また,周辺の環境と関わって生きていること。
(イ) 昆虫の育ち方には一定の順序があること。また,成虫の体は頭,胸及び腹からできていること。
(ウ) 植物の育ち方には一定の順序があること。また,その体は根,茎及び葉からできていること。
イ 身の回りの生物の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,身の回りの生物と環境との関わり,昆虫や植物の成長のきまりや体のつくりについての問題を見いだし,表現すること。
⑵ 太陽と地面の様子
 太陽と地面の様子との関係について,日なたと日陰の様子に着目して,それらを比較しながら調べる活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア) 日陰は太陽の光を遮るとでき,日陰の位置は太陽の位置の変化によって変わること。
(イ) 地面は太陽によって暖められ,日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあること。
イ 日なたと日陰の様子について追究する中で,差異点や共通点を基に,太陽と地面の様子との関係についての問題を見いだし,表現すること。
3 内容の取扱い
⑴ 内容の「A物質・エネルギー」の指導に当たっては,3種類以上のものづくりを行うものとする。
⑵ 内容の「A物質・エネルギー」の⑷のアの(ア)については,磁石が物を引き付ける力は,磁石と物の距離によって変わることにも触れること。
⑶ 内容の「B生命・地球」の⑴については,次のとおり取り扱うものとす
る。
ア アの(イ)及び(ウ)については,飼育,栽培を通して行うこと。
イ アの(ウ)の「植物の育ち方」については,夏生一年生の双子葉植物を
扱うこと。
⑷ 内容の「B生命・地球」の⑵のアの(ア)の「太陽の位置の変化」については,東から南,西へと変化することを取り扱うものとする。また,太陽の位置を調べるときの方位は東,西,南,北を扱うものとする。

これを1年かけて行うだけです。これが決められていることなんです。

ヒマワリを育てるのは

共通認識のように「ヒマワリを育てた」「観察日記をつけた」のような体験が記憶にある人もいるのでしょうか。ホウセンカやマリーゴールドだった人もいるんでしょうか。まぁ、よく見てください。別に何を育てなさいとは書かれていないわけです。

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書かれているのは「夏生一年生の双子葉植物」を扱うという点です。これに基づく植物が「ヒマワリ」「ホウセンカ」「マリーゴールド」なわけでして。そんだけなんですよね。

どちらかといえば

教科書が終わる・終わらん問題よりも、この「学習指導要領」に書かれていることが、個々人が達成できているのかを確認することが教員のお仕事でございます。達成できてないとよろしくないのですが、教科書終わったら大丈夫みたいになって、お茶を濁してないかと。これって、本当は個人によって進度が違うわけだし、達成できてないと次に進めないのです。そんなわけで、ICTで個人の進度が補われたらいいわけなんですけどね。誰一人取り残さないためのツールですので。

「学習指導要領」の部分が大切なので、保護者の皆様も、ちょっとでいいから興味を持っていただけるとうれしい限りです。

いただいたサポートは、誰でも教員と会って話せる『会いに行けるセンセイ』の活動に利用させていただきます。