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S級美少女をテイムしちゃう低級冒険者 『脱法テイマーの成り上がり冒険譚』

タイトルの”脱法テイマー”とはなにか


 ファンタジー作品で多く見かける呼び名の「テイマー」って何だ?
tame(テイム)”とは主に動物やモンスターなどを飼いならす、手懐けるなどの手段で、自分に従属させたり使役する能力を指す。テイマーはすなわち、テイムの使い手のことだ。

 『脱法テイマーの成り上がり冒険譚~Sランク美少女冒険者が俺の獣魔になっテイマす~』の主人公リントくんは、劣等職と見做されているテイマーのDランク冒険者。もふもふした白い毛皮に包まれたスライムのキュルケが唯一の相棒だ。ある日、町で偶然知り合った猫型亜人のビレナから「私をテイムしない?」と誘われる。瞬光しゅんこうのビレナのふたつ名で有名な彼女は、人間の目では追えない俊敏な動きで、しかも腕の立つSランク冒険者。
前述のようにテイムは基本的に動物相手に行なうものなので、たとえ亜人・獣人であろうとヒトに使うのはご法度なのだが、その脱法行為としてビレナをテイムしちゃうリントくん。
著者のすかいふぁーむ氏はテイマー物のノベルスを多く発表している作家だが、今までありそうでなかった、いや考え付いても実際に書く人が殆どいなかった「人間をテイムする主人公」という着想がユニーク。主従関係を結ぶ相手が美少女なら、当然エッチぃことに発展するよね。
第1巻では、黄土色の土竜・ギルや、蒼い狼の外見をした精霊の炎帝狼えんていろうカゲロウなどを次々とテイムして旅の仲間に加えてゆく様子が描かれる。

▲ 手前の猫型美少女がビレナ、その奥がテイマーのリントくん

「くっころ」があるけど、王道バトルもあるのだよ


 第2巻では、Sランク冒険者にして聖女様という、訳ありの美女リリルナシルことリリィを窮地から救出ついでにテイムしちゃう。さらに”竜殺し”の異名を取る神国の騎士団団長、ダークエルフの女騎士バロンと対決し、戦いに敗れたバロンをテイム…。ここで羞恥プレイを強いられるバロンの「くっころ」(※註)描写がちゃんとあって、すかいふぁーむ氏のサービス心を感じる。おまけに2巻ではバロンが召喚した悪魔ベルも加わって、そりゃもう大騒ぎ(性的な意味でも)。悪魔といっても外見はロリっぽい生意気なメスガキである。

※ 誇り高き女戦士が敵に捕まり、凌辱される前に「くっ…殺せ!!  辱めを受けるぐらいなら ――」とお決まりの台詞を吐くことから、これを縮めて”くっころ”とミーム化された。参考リンク→「くっ、殺せ!」

▲ この聖女様が実は、とんでもないドすけべキャラなのだ

 テイムされた女性キャラとリントくんの性交描写は度々あるものの、全編そればっかりやっているわけでもなく、リントくんのランクを引き上げるために未開の新ダンジョンへ挑むクエスト及びその達成、一国のクーデターに介入して事件を解決、エルフより上位のハイエルフとの戦闘など正統派ファンタジーものの要素もあり、エロスとアクションが交互に訪れる。第3巻では妖精のリアミルと、エルフの若き女王ティエラがパーティーの仲間入り。

▲ エルフの種族は性欲が薄いと言われるが、このティアラは…

エロス+異世界ファンタジーの嚙み合わせの良さ

 2023年12月に発売された最新の第4巻では、長い黒髪を一本に縛ったポニーテールのアオイが仲間に加わる。日本刀のような刀を持ち、侍そっくりの外見をしている女性だが中身は龍だという。邪龍を野放しに出来ない使命を持つアオイは、強力な配下を従えているテイマーの噂を聞きつけ、リントくんに自分をテイムしてもらおうと志願して来るのだ(テイムされるとパワーが上昇するため)。
 レギュラーキャラが増加すると、新キャラクターが受け手側(読者、視聴者)の印象に残らない存在になったり、または新キャラを立たせようとするあまり初期からいるキャラの影が薄くなるという事象が起こりがちだ。しかし『脱法テイマー~』は、リントくんとの絡ませ方にバリエーションをつけているので、その辺の心配がなく、むしろビレナとリリィはずっと強い存在感を放つ。エロはこういう所に強みを発揮するねぇ。
数あるテイマー物のライトノベルの中でも、エロを大きくフィーチャーした内容を執筆した動機について、すかいふぁーむ氏は以下のように書いている。

いやでも一度は思うはずです。
「女の子のこと【テイム】できたら色々やり放題なんじゃないか?」と。
本作はそんな男の夢を詰め込んだやりたい放題の作品(中略)
やっぱりこう、反抗的な子が【テイム】される方が燃えますよね?例えば本編に出てきたあの受付嬢とか……。

第1巻の著者あとがきより抜粋

  以前、noteでレビューを書いたライトノベル『ハブられルーン使いの異世界冒険譚』(GCN文庫)の著者・黄金の黒山羊さんも「世の中には面白いコミック、アニメ、ラノベが溢れているのに、主人公とヒロインが結ばれても濡れ場が省かれがち」という素朴な疑問から「めっちゃ面白く、めっちゃエロいストーリー」を書いたという。美少女をテイムする『脱法テイマー~』もまた、”考える人はいても、実際に書く人がいなかった”掟破りの世界に挑んだラノベと言えるかも。

脱衣ギミックつきの楽しいカバー(電子書籍にはないぞよ)


脱法テイマーの成り上がり冒険譚』をさらに魅力的にしているのが、大熊猫介氏のイラスト。むっちりとした肉感的な女性の描き方には定評があり、これまでにも数多くのライトノベルの挿絵を担当しているイラストレーター。私のお薦めは、テレビアニメ化された『新妹魔王しんまいまおう契約者テスタメント』(角川スニーカー文庫)ですね。
『脱法テイマー~』の紙の書籍は、初版のみカバーに仕掛けがあり、ソフトカバーを外すと大熊氏の表紙差分イラストが楽しめるぞ。服が脱げます…。

▲ これは第2巻の表紙ギミック
▲初版は帯の下に「初回限定 めくると脱げちゃう!?」の表記がある。これがないものは重版。

 昨今、紙の本が売れない。いや、出版業界全般が不振なのだが、特に街の書店はどんどん閉店しているほどヤバい。そんな中、電子書籍では味わえないセールスポイントを紙の書籍版にだけ盛り込んでいる販売元の営業努力に涙が出る思い。こんな記事を書いている自分も、恥ずかしながら3年ほど前から徐々に電子書籍に移行している。(仕事に使う)資料の本で、書庫が圧迫されているためだが……。しかしそんな私でさえ『脱法テイマー~』は、紙の書籍で購入している数少ないシリーズだ。
 ちなみにコミカライズ版も発売中。活字を読むのはかったるい、という漫画派の人はコミカライズから入るのも良いかも。少年誌向けから、成人向け漫画も両方手がけるベテラン作家・真鍋譲治氏による作画なので安心して読める。サクサク進むテンポのよいストーリーに、真鍋氏独自のアレンジで膨らませたエッチな描写も適度に挟まれ、緩急のついた良いコミックですよ。こちらは紙の本も電子書籍も同じ仕様なのでご安心を。

▲ リント君の耳元に「今晩は特別にお尻でさせてあげるね」とビレナが囁く、流石の真鍋アレンジ