見出し画像

殺人鬼の顔を持つ美少女たちの群像劇『サタノファニ』(※エロもあるでよ)

 講談社の「ヤンマガWEB」で連載中の漫画『サタノファニ』。作者の山田恵庸氏は、これまで「少年マガジン」誌上で『エデンの檻』『CHARON』などを発表していたが、『DEATHTOPIA』(2014年)で少年誌の縛りに捕らわれない青年誌に活躍の場を移してから、更にアクセルを強く踏み込んだ印象があり、その後の『サタノファニ』(2017年~)は目下、山田氏の連載作の中では最長の6年目を迎えている。今秋、紙媒体の雑誌「ヤングマガジン」からWEB媒体に移行したせいか、表現の自由度が若干増したようで先が楽しみなのだ。

 平常の自分の人格の他に、歴史上の殺人鬼の人格が現われるメデューサ症候群と呼ばれる特異症例。この症候群で殺人を犯した少女が集められている刑務所に収監された、主人公の女子高生・甘城千歌あまぎ ちか。非人道的な研究でメデューサを人為的に生み出している五菱日本重工は、刑務所内でメデューサ同士を殺し合わせる殺人実験を経て、生き延びた精鋭を暴力団組織や宗教団体の壊滅に向かわせている。五菱重工に支配されている少女たちは、外科手術で頭部に毒薬を埋めこまれて反抗できない。

既刊27巻の展開は(おおまかに分けて) 
■1巻~5巻 殺人実験編・・・・・基本設定の紹介。メインキャラが出揃う
■6巻~10巻 夜の豪華客船編・・・フェリーを舞台に暴力団・天童組と激闘
■11巻~12巻 堂島姉妹編・・・・・主要人物中の姉妹2人が決死の逃避行!!
■13巻~23巻 真聖教団編・・・・・セックス教団に潜入。味方側に被害甚大
■24巻 新メデューサ編・・・千歌たちは自由の身に。後輩の新メンバー登場
■25巻~27巻 劇団編・・・・主要人物・石動美依那いするぎ みいなメインの劇団一座の事件


▲ 最新の第27巻は、裏切りが渦巻く劇団編クライマックス
まるで女性のように美しい外見の女形・冬雪が魅力的

 最も多くの巻数を費やした真聖教団編は、作者の筆が乗っているのを感じさせる怒涛の展開で、プラチナブロンドヘアで巨乳の教祖・零元ぜろげんしぐまの強烈なキャラクターが特に際立つ。教団側の幹部も強敵揃い。続刊にチョイチョイ異常性癖の変態さんがいらっしゃるのもお楽しみポイント。
 随所に出て来る下品な台詞……お上品でない台詞回しも面白く、作者のハイセンスを感じさせて最高なのだ。まさに少年誌のリミッターが外れたからこその名場面も頻発する。自分を犯そうとした男のチンコを斬り刻む少女の「地獄で射精しろ!」なんて、どんな頭の作家なら考えつくのか分からん名台詞だ(※単行本未収録のエピソード)。その一方で第27巻には「汚れちまった雪は もう純白には戻れねえんだぞ」と文学的な台詞も出てくる。


▲ 実は”ふたなり”の教祖しぐま。主人公サイドの何人かが、股間の立派なモノで……
 しかし彼女にも両性具有ならではの悲しい人生があることが明かされる

 ――と色々あって、真聖教団編の終盤で五菱重工を出し抜いて、無事に脱走を果たした主要メンバー。自分たちを散々酷い目に遭わせた連中に復讐すべく、牙を研いでいるのが現在のオハナシ。いよいよ物語が大きく進展しそうな気もするのだが、こんなに面白い漫画が完結したら、あまりの寂しさにどうにかなりそう。とはいえ、ダラダラと結末を先延ばしにした長編漫画&小説は後世でろくな評価を得ていないので、難しいところだ。

 アニメ化希望!…なのですが、1クール程度で殺人実験編を足早にまとめても仕方ないし、そもそも6巻以降は映像化不可の危険な人&危険なシチュエーションが連発されるので(それゆえに最高なのだが)、自分が石油王になってR18+でOVA化するしかないわなー。だいたい、女性の肛門内から飛び出す自立型殺人メカなんて、どうやって映像化するんだ! ってな話で。