王道は好きにならない

 僕は昔から王道なモノを好きにならない。

僕は子供の頃からプロ野球が好きで、好きな選手がたくさんいる。

その選手たちは、みな1年間ずっとレギュラーとして試合に出るような選手ではなく、実力はあるが今ひとつ運に恵まれずあとちょっとでレギュラーを取れるのに、というような人たちである。

好きな芸能人もそうである。

ドラマが好きで、好きな俳優がたくさんいる。

しかし、彼らは全員ドラマの主役を張るようなタイプではなく、演技力があり主役を影から支えるような脇役タイプである。

好きな芸人もそうだ。

子供の頃からお笑いが好きで、好きな芸人がたくさんいる。

彼らはみな、ゴールデンのバラエティにたくさん出るような人たちではなく、深夜帯の番組や深夜ラジオで活躍しているような人たちである。

僕は、子供の頃からクラスの中心人物ではなく教室の隅で気の合う友人と密かに楽しんでいたため、人気者の生活を送ってきていない。

そのため、僕はスーパースターではなく実力はあるがなかなか芽が出ないような人たちを応援してしまう。

そして、彼らの芽が出てスーパースターになれば、応援していた熱が一気に冷めてしまい、別の人に乗り換える。


そんな僕だったが、最近王道を好きになりつつある。

音楽では、まだ芽が出ていないバンドに加えて、菅田将暉やあいみょんなど王道も最近聴く。

芸人では、深夜ラジオで活躍する芸人に加えて、M-1で優勝した霜降り明星という王道も応援している。


では、なぜ最近王道も好きになりつつあるのか?

それは、「王道にハズレはなく、必ず平均値以上取ってくれる」からかもしれない。

例えば、野球において、今まで僕が応援していたタイプの選手は、ミスも多くする。ただ、たまの活躍がたまらない。点数で言えば、0点から40点をとる回数も多いが、たまに100点近い点数を取ってくれたりする。低い点数が多くても、たまに100点近い点数を取ってくれ、それがやめられなくなる。

まるで、焼肉のカルビのようだ。店によってはおいしいものもあるが、脂だらけのカルビも多い。でも、子供の頃は毎回頼んで、たまに絶品のカルビを食べ、カルビがやめられなくなる。

一方、スーパースターというものは毎回60点以上の点数を取ってくれる。

まるで、焼肉のタンのようだ。タンにハズレの店はほぼない。どの店も平均点以上の点数を取ってくる。子供の頃は、あまりタンの魅力には気づいていなかったが、今は毎回平均点以上を出してくれるタンが大好きだ。


子供は怖いもの知らずであらゆることにチャレンジできる。

大人になると怖いものを知っていき、多くのことにチャレンジしづらくなり、安定志向になる。

王道を好きになるというのも一種の安定志向であり、僕が王道を好きになりつつあるのは大人になっていっている証拠なのかもしれない。

ただ、あまりにも安定志向に走るのはとてもつまらない人間になってしまう。

だから、僕の好きなものがすべて王道になってしまったときには僕はとてもつまらない人になっているだろう。



というか、そもそも好きな球団が子供の頃から巨人の時点で、子供の頃から王道が好きだったかもしれないが。

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