banner_神戸からのデジタルヘルスレポート

神戸からのデジタルヘルスレポート #36 (Voiceitt/Twiage/GyroGlove/Count.It/reThinkIt!)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

年度末が近づいてきていますね...レポートは今回第36回!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

==

1. Voiceitt:吃音を抱える方向けコミュニケーションアプリ

画像1

企業名:Voiceitt
URL:http://www.voiceitt.com/
設立年・所在地:2012年・イスラエル
直近ラウンド:Grant(2019年5月)
調達金額:$13.7M(Microsoft, Connecticut Innovations, Amazon Alexa Fund など)

Voiceittは、構音障害(言葉をうまく発することができないこと)を抱える人が円滑にコミュニケーションができるように開発されたアプリケーションです。スマホにインストールして使用するアプリなんですが、使い方は↓を見ていただくのが早いでしょう。

不完全な音声でも認識できる音声認識技術を兼ね備えているため、家族や友人、見知らぬ人ともスマホを通じてリアルタイムのコミュニケーションを可能に。"Voiceitt Helps You Be Understood"の素敵なミッションを体現したプロダクト。

原因は様々ながら、米国と欧州では合わせて1,040万人が言語障害に苦しんでいると言われています。一つの原因とされている妊娠中の合併症や脳性麻痺により、先天的に構音障害を抱える子供もいるとのこと。

画像2

時代背景としてAmazonのAlexaやGoogle Homeが家庭や職場に浸透してきているように、今後は音声UI・検索がより広がってくると予想されています。Voicettの技術がスマホアプリのみならず一般的な音声プラットフォームにも組み込まれていけば、障害を抱える方もよりテクノロジーとの距離が近くなっていくのではないかと。

同社の資金調達には投資家としてAmazon Alexa Fundも参加、2018年5月にMicrosoft VentureのAI関連アワードを受賞するなど、ビッグテックの注目もあついです。さらにイスラエルや欧州の研究機関とチームを組んで研究・実証試験を進めています。注目のスタートアップです。のパートナーとして活動しています。今後も目が離せない企業です!

2. Twiage:救急医療の効率性向上プラットフォーム

画像3

企業名:Twiage
URL:http://www.twiagemed.com/
設立年・所在地:2014年・ニューヨーク
直近ラウンド:Grant(2017年6月)
調達金額:$1.9M(MassChallenge, Red Bear Angels, Healthbox など)

これまでの救急医療は、急患が発生した場合、無線や電話で病院とやり取りし患者の情報共有を行っていました。しかし、音声通話のみで伝えられる情報の種類・量には制約があり、患者が病院に到着してから、やっと処置のための準備を行う、あるいは追加の準備をしなくてはいけなくなった、ということが起こり得ます。一刻をあらそう救急の現場では、1分1秒の遅れも深刻な事態となりえます。状態の患者にとっては深刻な事態となります。

Twiageはそんな救急の現場向けに開発された、搬送先病院と救急車の情報を1つに集約させるプラットフォーム。救急隊員がスマホ端末で取得した画像や動画をそのプラットフォームに投稿すると、その情報が即座に施設に共有されます。患者の態に関する情報の入力は選択肢型でテキスト入力が必要な箇所は少なく、時間が最も希少なリソースである救急隊員のことを考えられた設計になっているのではと感じました。

病院側では、救急隊のTwiage利用端末の移動履歴や現在位置をGPSで追跡可能であるため、病院もあと何分程度で患者が到着するのかを通話などのコミュニケーションなく予想し、対応を進めることができます。

画像4

画像5

なにより無料。ニューヨーク・ロックランド郡ではエリア内にある病院の約半数がTwiageを使用しているとのこと。ヘルスケア系のハッカソンなどをやるとよく出てくるアイディアですが、社会実装のハードルは相当に高そうだな、と思っていました。が、ここまでMake it happenさせているサービスがあるんですね。まだまだこれからサービスも磨き上げられ、どんどんと広がっていきそう。

3. GyroGlove:手の震えを抑えるデバイス

画像6

企業名:GyroGear
URL:http://gyrogear.co/
設立年・所在地:2015年・ロンドン
直近ラウンド:Grant(2018年9月)
調達金額:€4.5M(EU Executive Agency for SMEs, Horizon 2020 など)

これめっちゃいい、と思ったハードウェア。パーキンソン病などの一つの症状である「手の震え」症状を持つ人向けに開発された、安定性を高めるグローブ・GyroGloveです。

上記の動画を是非見てください。
手が震えて刺繍やネイルができない女性が、GyroGloveを付けると、ぴたっと手の震えが止まります。すごい。手の震えを自分自身で制御することは困難で、この状態で様々な日常動作を行うことは想像以上に大きなストレスで、恐怖だろうなと。このグローブがもたらす安心感は相当なものなはず。グローブを付けた後の女性の嬉しそうな顔がすべてを物語ってますね。

開発者である医師Faii Ongは、医学部を卒業後担当した患者が、手の震えがある103歳の女性だったそうです。その女性の震えは深刻で、1杯のスープを飲み干すのに30分かかるほど。治療に有効な薬もなく、その他の治療法もないことにショックを受けたことがGyroGlove開発を目指した経緯だったと。のようです。

このプロダクトはまだロンドンで実証実験中で、リリースはまだ未定とのこと。GyroGloveが世界中の人を救う日が楽しみですね!

4. Count.It:健康経営・社員のフィットネス促進

画像7

企業名:Count it Labs
URL:https://www.countit.com/
設立年・所在地:2015年・ニューヨーク
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

日本でも(ずいぶん長いこと)流行りの「健康経営」という言葉。Count.itは職場の健康問題を解決するために従業員のフィットネスを促進する、健康経営ど真ん中のプラットフォームです。

コンセプトはシンプルで、会社・組織などのコミュニティ内で行った運動やエクササイズについて競い合うことで、良好な運動習慣を築いていこうというもの。各部署でグループを作れるので、各部署で競い合わうこともできます。さらに地方自治体と連携し、会社という枠を超えて地域内で運動量を競い合う機能も実装しています。

画像8

面白いなと思ったのは、Slack連携がサクッとできること。運動の目標や成果を普段のワークコミュニケーションで利用しているSlackにぽんと投稿・共有することで、閲覧・確認のハードルをぐっと下げ、ナッジの効果を最大限活かす設計になっていると感じました。こういうチャット連携いいですね。

10年以上前、ネスレさんが世界中のオフィスで「オフィス間歩数計競争」をしているというお話を伺ったことがあります。さすがネスレ!と思った記憶がありますが、このCount.itを使えばそんな取組をもっと気軽・手軽にはじめ、継続していけそう。

なかなか広がらない、実行されない健康経営に終止符を。

5. reThinkIt!:子供向けのメンタルヘルス改善サービス

画像9

企業名:OneSeventeen Media
URL:https://oneseventeenmedia.com/
設立年・所在地:2008年・テキサス
直近ラウンド:Convertible Note(2017年11月)
調達金額:$515K(Southwest Angel Network)

Count.itの次はreThinkIt!

reThinkIt!は、子供のメンタルヘルスを改善するために設計されたプラットフォーム。子供が抱える処理することができないモヤモヤや感情を、認知行動療法を用いて解決していきます。子供がこのプラットフォーム上で投稿を行うと、経験豊富なカウンセラーとAI(名前は"Minty")が状況の分析や解決に向けたサポートを提供してくれます。reThinkIt!への生徒の投稿は管理者が閲覧することができるので、すぐにどの子供が問題を抱えているのか把握することができます。

対象はUSの10代の子供(3~12年生)。学校単位での導入も進んでおり、reThinkIt!を利用することによる子供個人のメンタルヘルス改善や学校の治安や環境改善にもつながることが証明されてきています。これまで既に2.5万人以上の子供にサービス提供を行ってきたと。学校単位で導入し先生を管理者に指定すれば、子供の課題を教育者が事前に把握し対策を練ることができるので、仮に生徒が問題行動を起こしたとしても慌てず落ちついて対処することができるのでしょう。

画像10

私自身、親が高校の教員なんですが、彼が関わっている生徒のメンタルヘルスの問題は深いんだろうなぁと感じるシーンが多々ありました。
デジタル世界の広がりに合わせて10代のときにできること、見られる世界はとてつもなく大きくなっていますが、合わせて彼・彼女たちのメンタルヘルスイシューも大きくなっていくでしょうね。
いいサービスだ。いいサービス。

==
こんな感じで、第36回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)


応援ありがとうございます!