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神戸からのデジタルヘルスレポート #121(デジタル健康保険)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち18回目、テーマは「デジタル健康保険」を取り上げていきます。


1. Peachy:英国初のデジタル医療保険

企業名:Peachy
URL:https://www.peachy.health/
設立年・所在地:2022年・ハマートン(英国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:£1.5M

Peachyは、英国初のデジタル医療保険を開発・提供している企業です。当社は保険引受会社であるSOMPOインターナショナルや医療提供者を含むさまざまなパートナーと協力し、より多くの人が健康保険を利用できるよう、様々な補填機能を備えています。また、デジタルバンク、クラウド会計、人事/給与プラットフォームといった、広範なフィンテックエコシステムも包有されています。
以下に紹介動画がございます。よろしければ、どうぞ。

<サービス内容>
大手医療保険会社は通常、自社の商品を高齢者や金銭的に余裕のある顧客に向けて提供しており、多くの症状をカバーし、それに応じて価格を設定する保険を提供しています。オプションや超過額を増やし、特定の病院またはコンサルタントによる治療に補償を限定することでコストを削減することは可能ですが、柔軟性が制限されてしまう、という傾向があります。 これに対し、同社のPeachyは、よりオーダーメイドが可能なアプリとして設計されています。 顧客は、どのような健康状態や治療に対して保険を適用したいか、また保険請求が必要な場合にどこでどのように診断や治療を受けるかについて、アプリをとおして選択することができるようになっています。
アプリを使用すると、特典や補償の限度の詳細を確認したり、補償内容を確認したり、請求を行ったり、近くの医療専門家を検索して連絡したりすることができるそうです。 特に最大の差別化ポイントはコストと言われています。通常、個々の見積もりは、保険契約者が選択したオプションと現在の健康状態に応じて大きく異なります。例えば、ある保険会社への補償額の見積もりが月額約45ポンドだったのに対し、一方、Peachyは12.50ポンドと見積もる等、コスト面でのメリットが大きいことが表れています。

出所:https://www.peachy.health/post/about-our-branding

以下の記事では、英国のインシュアテックとしてPeachyが紹介されています。よろしければ、ご覧ください。

同社は、昨年9月に£150万を調達していますBupaChartered Institute of Insuranceといった、民間医療保険業界の元幹部らを含むエンジェル投資家から提供された資金だそうです。保険業界の出身者からも注目・期待が高いことがわかりますね。

2. All Well:個人と企業向けのデジタル健康保険

企業名:All Well
URL:https://all-well.it/
設立年・所在地:2022年・ミラノ(イタリア)
直近ラウンド:Seed
調達金額:€900K

All Wellは、イタリアでデジタル健康保険を開発・提供している、健康分野に特化したインシュアテック企業です。イタリアの医療保険の利用に革命を起こす、を掲げています。本製品は、月額€11.74~(2023年7月時点)プラン選択でき、アプリ上で利用できるため使いやすく、かつ迅速な払い戻し、保障内容の詳細表示、保険請求の事務手続きを可能にすることができます。

<サービス内容>
イタリア人が健康のために自腹で負担している費用は年間€340億と言われているそうです。対して、この領域に費やされている保険は年間わずか€31億に留まり、EU諸国よりも多く支出負担が大きい状態だそうです。(EU平均74%の自己負担に対し、イタリアの医療関連費用の90%は民間貯蓄で賄われているそうです。)
この現状に課題感を抱き、誕生したのがAll Wellです。公的および民間の保険医療システムをよりアクセスしやすいものにすることで、上記自己負担の軽減と、早い段階で医療機関を受診しやすい状態をつくることで重篤な状態を避ける、つまり予防医療的観点からも寄与できるとみているそうです。
現在リリースされている本製品では、顧客は3分以内に保険契約を締結できる上、明確かつ簡単な方法でアプリから直接請求を管理できるようになっています。以下の記事に本製品についての詳細やイタリアの医療保険制度の抱える課題や統計数値等の記載をご確認いただけます。よろしければご覧ください。

また、以下記事によると、イタリアでもデジタル医療保険は大きなチャンス市場だそうです。デロイトによれば、現在わずか 0.13%の医療保険の普及率が、2030年には7%にまで達すると予想されています。将来的には、デジタル健康保険を通じて、遺伝子マッピング サービスやウェアラブルによって検出されたリスクよりアラートするリスク管理システム、献血活動、メンタリングや医薬品の電子商取引サービスまで拡がる可能性があるそうです。

以下は、同社のブログ記事で企業の福利厚生として健康促進(デジタル健康保険の利用促進)をプッシュしているものです。健康状態がサポートされていると感じられた従業員は、病気になって病気休暇をとる可能性が低くなり、健康で生産性の高い状態で労働力として寄与する可能性が高まる、といったことが述べられています。デジタル健康を推し進めるために、企業の福利厚生という面からアプローチする姿勢が見受けられます。

3. Mend:中南米の医療費分割払いサービス

企業名:Mend
URL:https://www.mend.com.mx/
設立年・所在地:2022年・メキシコシティ(メキシコ)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$400K

Mendは、メキシコをはじめとした中南米で医療費を分割払いできるサービスです。例えば、手術費用を最大12か月での分割支払いとすることができ、保険会社が乏しく個人の自己負担の負担が大きいメキシコの患者にとって、支払いの選択肢を増やすことができるようになっています。
尚、同社は、オンライン決済システム会社Stripeと提携しているそうです。

<サービス内容>
Mendのサービス内容はいたってシンプルで、以下の3Stepとなっています。

  1. 受診できる医療機関や医師を選択

  2. クレジット申請

  3. 支払いプランの選択

出所:https://www.mend.com.mx/

同社の記事ではないですが、メキシコ初のデジタル医療保険会社として、Sofíaという企業がございます。以下の記事内では、メキシコには大手の医療保険会社がなく、メキシコはGDPに占める医療支出の割合がOECD諸国内で最も低い国だそうです。人々の個人負担も重たいことから、今回ご紹介しているMendのような医療費支払いサービスや、Sofíaのような医療保険サービスがうまれているそうです。

Mendの目的には、医療の支払いについて負担軽減を促すだけでなく、人々が医療サービスにアクセスしやすくなる状況をつくりだすことも目的としています。その取り組みのひとつとして、がんや皮膚疾患など、様々な疾患のTipsとアクセスできる医療機関や専門医の紹介をSNSで投稿しています。こちらは同社のFacebookです。よろしければご覧ください。

4. Brisk Health Primary Care:定額プライマリケア

企業名:Brisk Health Primary Care
URL:https://www.briskhealthprimarycare.com/
設立年・所在地:2022年・ヘンダーソン(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$500K

Brisk Health Primary Careは、会員制のヘルスケアモデルを提供しています、

<サービス内容>
同社のサービスへの会員加入およびモバイルアプリをダウンロードすることで、タップするだけでケア(主にプライマリケア)をリクエストできるようになっています。他にすでに保険加入している場合でも、もちろん保険加入がない方でも、低額の月額料金でBrisk Health Primary Careに加入することができるそうです。小児科を含むあらゆる年齢の患者にプライマリ ケアサービスを提供できるようになっており、例えば救急医療を受診する必要が生じた際にも、本サービスで救急医療を受領できるので、患者が受信時に躊躇する医療コスト負担の懸念を軽減させることに寄与しています。サービスの紹介について動画がございます。よろしければご覧ください

登録して最初の受診時(サービス利用時)には、以下を受けることができるようになっているそうです。予防医療的観点から、ありがたい内容ですね。

  • 服用している薬へのレビュー 現在服用している薬を見直すことができる。現在かかっている服用価格についても見直し、最適な価格、処方薬の大幅な節約も可能にする。

  • フルパネル血液検査 血液検査によって、特定の臓器の機能、特定の遺伝的疾患、感染症、個人の健康状態など、さまざまな病気を検出する

  • 病歴レビュー 現在および過去の医療記録を確認し、今後の健康履歴を文書化する

  • 人間ドック ユーザーの全身的な健康状態を可視化

Brisk Healthでは、今年(2023年)6月には$2,500万の投資を得ています。追加資本は、会社の成長を加速し、技術インフラをさらに強化するのに役立ち、Brisk Healthがより多くの患者に繋がり、全国的に優れた治療を提供できるようになる一歩となるそうです。本社自体も、ヘルスケアのイノベーションとテクノロジーの活気に満ちた拠点として認識されているデンバー州へ移転する計画のようです。より一層の刺激を得ながら成長・拡大を加速させる姿勢が見受けられますね。

また、こちらのサイトでは、Brisk Healthが開設したクリニックや、プライマリケア部門、モバイル緊急ケアを開始した記事がまとめられています。医療提供のカバー領域を徐々に拡大させてきていることがわかるかと思います。

5. Arlo Health:中小企業向け保険プラン

企業名:Arlo Health
URL:https://www.joinarlo.com/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Arlo Healthは、中小企業向けの保険プランを提供しています。同等の医療プランよりも最大30%お得な保険料で提供しており、本保険プランを利用するデジタル会員は福利厚生の一環として保険を利用した医療提供を受けることができるようになります。

<サービス内容>
米国では、従業員10~200人の中小企業では、補償オプションが限定的な場合が少なくないそうです。このため、中小企業では、従業員が個々に加入する健康保険に委ねる傾向が多いそうですが、同社は中小企業が手頃な保険料を維持しながら、大企業と遜色ない補償カバー領域で、かつ手頃な価格で保険が利用できるよう設計されています。健康プランの特典にアクセスするために、サービスごとにアプリをダウンロードする必要もなく、オンライン診療や救急医療、薬局の給付金、プライマリケア等、様々な医療サービスを、同社のデジタルアプリ1つで利用できるようになっています。コンシェルジュサービスも備えているため、電話やチャットを通じて適切な医師を見つけること、予約をとること、福利厚生に関する質問への応答、といった従業員サポートも充実しているそうです。

例えば、米国の10人に1人が悩まされるMSK(腰痛等の筋骨格系疾患)について、同社のBlog記事では、民間の医療保険に年間 1,500億ドル以上(米国では従業員一人当たり年間 1,000 ドルに相当)の費用がかかるほど膨大なコストを要する現状について述べ、コスト負担の課題と、Arloでは統合されたMSKプログラムを備えた最新のRBP健康プランを従業員15~150人の雇用主に提供していることを紹介しています。

その他、中小企業が大企業のような保険加入プラン(自己資金負担によるカスタマイズ可能)を選択できない現状に対し、Arloが中小企業でも同様の保険、従業員への福利厚生を提供できるよう設計していることを、2022 Employer Health Benefits Surveyも引用しながら述べている記事もあります。米国をとりまく企業雇用主側と保険の関係について理解が深まる内容です。よろしければご覧ください。

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