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神戸からのデジタルヘルスレポート #59 (認知症)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第59回・認知症をテーマに取り上げます。先日↓に参加して以来、人の認知というものに対する関心が高止まりしています。正直、今回「認知症になってしまった人をどう管理するか」系ソリューションばかりになってしまったのはちょっと残念ではありつつも、現状を知るためのファクトとして、お届けできればと思います。

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1. Winterlight:音声による認知機能障害検出

企業名:Winterlight Labs
URL:https://winterlightlabs.com/
設立年・所在地:2015年・トロント/カナダ
直近ラウンド:SeriesA(2019年11月)
調達金額:$4.7m(Pacific Health Ventures , Hikma Ventures)

Winterlightは、患者の発話から認知機能障害の兆候を検出するソリューションを提供しています。従来は紙ベースで行われていた認知症評価と比べて実施の時間・金銭的コストが低いため、経時変化を詳細にトラッキングすることを可能にしています。

使い方は、患者が1分間ほどタブレットに対して話すだけ。保存された音声データは自動で分析され、認知機能低下のリスクが高い患者が特定されます。電子医療記録との統合も可能。

分析は、患者の発話内容や抑揚、語彙の多様性、声の響きなど様々な角度から行われます。精度は?AUCは?感度・特異度は?臨床研究、論文化も相当されてきています。アルツハイマーの検出では、精度82%@2016年とのこと。現在はどれくらいまで成長しているんだろう。

MLconf San Francisco 2019で具体的にどんな仕組みなの?成果は?などの具体を、同社でDirector of Machine Learningを務めるJekaterina Novikovaが語っています。25分ほどの動画で少し長いですが、そもそもから知りたいんや!という方はぜひこちらを。

音声、やっぱりアツいですね。

2. Hestia Caregiver:高齢者の生活追跡プラットフォーム

企業名:Inhabitech, LLC.
URL:https://www.inhabitech.com/
設立年・所在地:2016年・ロングモント/アメリカ
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Hestia Caregiverは、家庭用とウェアラブルのセンサーを用いて、高齢者の行動を追跡し、異常があれば介護者に知らせてくれる統合プラットフォームです。家庭内の様々な場所に設置されたセンサーで高齢者の行動を、ウェアラブルセンサーで高齢者の健康状態や位置を追跡し、普段の行動と大きな差異が合ったり体調に異常が出たときに家族や医療介護従事者に通知を届けます。認知症の方特有の、徘徊行動検知などにも役立ちそうです。

本来のターゲットは1人暮らしの高齢者ですが、現状では介護施設などで展開されている模様。実際に1人暮らし世帯に導入するためには、生活行動解析の精度向上やウェアラブルデバイスのUX改善など、まだまだ課題がありそうですね。

今後、1人暮らしの高齢者は世界的に増加していく中で、どのようにサービスを展開・磨き上げていくのか、注目&期待です。

3. CarePredict:高齢者の生活を追跡するウェアラブルデバイス

企業名:CarePredict, Inc.
URL:https://www.carepredict.com/
設立年・所在地:2013年・プランテーション/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2019年1月)
調達金額:$19.7m(Secocha Ventures等)

高齢者見守りサービスをもう一つ紹介。CarePredictは、センサーを用いて高齢者の行動や位置を追跡してくれる、手首に装着するウェアラブルデバイスです。使い方動画いい感じ。

このデバイス、食事や活動量、睡眠の質まで追跡することができます。さらに何か問題が起きた時は、中央にあるボタンを押すことで介護者にアラートが送信されます。Wi-Fiに接続されていれば音声通話も可能です。多機能。

また、アプリケーションでは家族や介護者を含めたグループを作成することができます。グループ内での会話も可能で、スケジュール調整やコミュニケーションを容易に行うことができます。@Homeでのパッケージングも素敵。

危険のないように高齢者の生活を制限するのではなく、その人らしい生活を支援しながら見守るという姿勢大事。どこまでも、人の人生を。

4. Life360:家族の位置情報共有アプリケーション

企業名:Life360, Inc.
URL:https://www.life360.com/intl/
設立年・所在地:2008年・サンフランシスコ/アメリカ
直近ラウンド:Series D(2018年10月)
調達金額:$123.6m(Sunstone Management, Regal Funds Management)

Life360は家族や大切な人がどこにいるかをスマホでいつでも確認できるアプリ。子供の安全管理や災害時に利用されることが多いですが、認知症を発症した、あるいは疑いのある高齢者の見守りにも役に立ちそうです。

スマホベースでの位置情報共有から特定の場所から離れたときのアラートまで、シンプルながら位置情報をベースにした有用機能を網羅。利用は無料。2020年7月時点で13か国の言語にも対応しており、全世界に2500万人以上のユーザーがいます。

スマホ保持前提ですが、Mamorio的な何かと組み合わせると可能性はぐっと広がりそうだなと。

5. 2Gether Music:音楽を使った認知症治療

企業名:2gether Music Ltd
URL:https://www.2gether.fun/
設立年・所在地:2018年・テルアビブ/イスラエル
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

2Gether Musicは、音楽による認知症治療に取り組むスタートアップ。表情による感情解析と、その解析結果に基づく音楽提供を事業のコアにおいています。昨年、この会社のピッチを直接聞いたこともあり、改めてご紹介です。

治療は4つのステップがあります。
1. 認知症患者と介護者にとって的確な音楽を選択する
2. 音楽を聴きながら思い出した記憶や音楽を聴いている時の患者の状態などを録音、写真で撮影したりコメントで残す
3. 音楽を聴いている時の動画や写真などを共有する
4. 専門家のアドバイスやフィードバックを得る

2gether Musicはイスラエル発のスタートアップですが、日本をエントリー市場としてターゲティングしています。高齢化社会に伴う認知症患者の増加や介護者の減少に悩む日本。2019年には、京都市の学研都市病院で臨床試験を開始しています。

こういうポジティブな向き合い方、有効かどうかももちろん大事なんですが、応援したいという信条。
(タイのドラマで2getherというタイトルがあり、なんというか、同社のSEOが心配...)

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こんな感じで、第59回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)

応援ありがとうございます!