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神戸からのデジタルヘルスレポート #122(医療データ)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち19回目、テーマは「医療データ」を取り上げていきます。


1. DRCLICK:ブラジル最大の医療データ管理システム

企業名:DRCLICK
URL:https://drclick.com.br/
設立年・所在地:2022年・ベレン(ブラジル)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:R$200K

DrClickとは、クリニック向けのソフトウェアを開発・提供している企業です。このソフトウェアは、電子カルテの役割だけでなく、財務管理や予約管理、診療報酬請求についても網羅的にカバーしています。これらにより、業務を効率化させ、システム導入から6か月で収益が300%増加したケースも誕生しているそうです。ブラジル国内では、医療管理プラットフォームとして主要なポジションを得ているそうです。

<サービス内容>
本製品では、以下を3本の柱としてサービス提供しています。

  • 業務効率化 医療従事者の業務効率化を図るため、以下のような機能を備え、提供

    • 医師のスケジュールをもとにしたスタッフや患者来院等のスケジュール管理

    • 予約管理

    • 検査室等の空室管理

    • 診療に関連する在庫管理

    • スタッフの生産性管理

  • 財務管理 クリニックの収入と支出を正確に把握し、収益を上げる体制に整えるため、以下を提供

    • 医療費の支払いの仕組みに沿った請求管理(診療報酬請求)

    • クレジットやデビットカード等様々な支払方法への対応

    • クリニックにおけるPL/BS管理

    • キャッシュフロー管理

  • 電子カルテ 医療情報、患者情報を一元管理するための機能を提供

    • 医療記録管理の電子化

    • 処方箋の発行、管理

    • 医療文書の電子管理および発行

本製品を利用することによって、以下の効果が出ている例もあるそうです。 遠方の患者様で予約している場合のキャンセルの削減率:55%
もれなく請求、正しいデータに基づく請求管理の増加:35%
60日語に複数の専門家や検査をしっかり受診する患者の増加率:15%

ブラジルでの電子化、ソフトウエア活用を推進すりためか、同社ではBlog記事にて、「医療管理システム」の必要性について述べています。よろしければご覧ください。

2. Health Chain:ブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム

企業名:Health Chain
URL:https://health-chain.io/
設立年・所在地:2022年・プラノ(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Health Chainは、ブロックチェーン技術を用いた、支払者(保険者)向けの医療データプラットフォームを構築・提供している企業です。複数のソースからの医療記録をすべて1 か所に集約することで、支払者、患者、プロバイダーのエコシステム間のデータの相互運用性の課題に対処できるよう設計されています。

<サービス内容>

  • Centaur API Platform

保険者が支払い対象である患者のデータを取り込んだり、過去の病歴等のデータを統合して一元管理、分析ができるように支援するデータプラットフォームです。CSV、XML、CCDA、FHIRなどのさまざまなファイル タイプを取り込むことができ、複雑なデータ統合やデータロードに用いる時間の短縮、APIセキュリティ管理による安全なデータアクセスなど、保険者がスムーズに支払い作業を行えるよう設計されています。
また、米国のトップ100の医療プランに接続して、メンバーの臨床データを取得することができます。支払者間 (P2P) ハブ(支払者が他の支払者を見つけて接続し、臨床データのポイントツーポイント共有を促進するための単一プラットフォーム)としての機能も備えているそうです。

出所:https://health-chain.io/centaur/
  • Omega患者アクセスアプリ

患者が自身の医療記録を、独自アプリを通して一元管理・閲覧できるサービスです。保証内容と請求についても参照できるので、保険者との情報ギャップを埋めることができます。

出所:https://health-chain.io/omega-patient-access-app/
  • Predixion Insights

AI を活用したメディケア会員獲得および維持プラットフォームであり、メディケアを拡大させるため、メディケアプランを販売する営業会社のマーケティング・営業支援として活用されています。
メディケアプランは、価格競争、商品のコモディティ化、解約、生涯保険料収入の減少により、顧客生涯価値(LTV)で年間90億ドルを失っているという現状があります。Predixion Insightsは、低コスト、拡張性、広範性を備えながら、販売とマーケティングの両方の目標に対応できるように構築されていますPredixion Insightsにより、対象となるメディケア会員の電子メール ID、電話番号、住所を含むメディケアのリード顧客に即座にアクセスできるようになります。プラットフォームは、独自の州全体の人口統計データを取得するだけでなく、複数のソースからリードデータを取り込むことができます。

以下の紹介動画もございます。よろしければご覧ください。

また、同社は、CancerX,の創設メンバーのひとつとして、がん克服のためのデータ活用促進の取り組みを行っています。がんは米国の死因第2位と言われており、腫瘍学分野において、一連の治療全体にわたるデジタル革新の可能性を行うことが期待されているそうです。

3. Vineleaf Technologies:AIプライマリヘルスケア

企業名:Vineleaf Technologies
URL:https://www.vineleaf.co.uk/
設立年・所在地:2022年・ロンドン(英国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Vineleaf Technologiesは、AIによるプライマリヘルスケアを促進するため、プライマリ ヘルスケア サービスの提供に人工知能テクノロジーを統合するデータサービスを開発・提供している企業です。患者の転帰を改善し、医療サービスのコストを削減し、一次医療の全体的な効率を高めるための AIアルゴリズムと機械学習技術の使用を浸透させることを目指しています。

<サービス内容>
製品紹介について動画もあります。LinkedIn内のものですが、どうぞ。

同社のAIデータシステムは、以下の3種類の提供となっています。患者のデータ管理だけでなく、教育面でも使えるもの、治療前後でのフォロー等、カバー領域は多岐にわたります。

  • vFast

健康管理分析ソフトウェア
医療提供者の空き状況に基づいて予約を自動的にスケジュールする。患者はオンラインまたはモバイルアプリを通じて予約を行うことができる。 患者の転帰や再入院・入院リスク、併存疾患、社会的要因等の嬢王に基づき、患者の診療オーダーに関するレコメンドや有害転帰のリスクのある患者をランク付けする等ができる。

  • vBot

AI対応の健康応答および学習ボット
ユーザーからの健康状態に関する質問に対し、自然言語処理 (NLP) アルゴリズムを利用して適切な回答を得られるもの。遠隔医療での活用や、医師の教育に活用できる。

  • vTreat

ライフスタイルのパーソナライゼーションとレコメンデーション
AIを活用したパーソナライゼーション。Wellnessの考え方に近い。人工知能を活用して個人の好み、健康状態、身体活動レベルに基づいて個人のライフスタイルをパーソナライズする最先端のテクノロジーシステム。治療前・治療後の食事、運動、睡眠、その他のライフスタイル習慣についてベストな選択肢を得ることができる。

4. Abstractive Health:臨床ノートの要約

企業名:Abstractive Health
URL:https://www.abstractivehealth.com/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$100K

Abstractive Healthは、機械学習と自然言語処理を使用して患者のカルテからデータを抽出し、合理化および自動化された概要を医師に提供します。「医師は、患者の完全な記録からすべてのデータを精査する必要がなく、自動化された要約を即座に読み、その患者が誰であるかを理解することができます。本企業は、ジェイコブズ テクニオン - コーネル研究所のヘルス テックハブの学生による創業だそうです。

<サービス内容>
2019年、医療従事者に対するAIの潜在的な影響に関する研究が発表されたようですが、その中身では、「デジタル技術の普及が進むにつれ、自動的に送信されるデータの洪水が医療従事者を圧倒するリスクがある」と示唆されていたそうです。同社の製品は、AIを応用して患者の概要を生成することができるようになっており、指摘されているこの問題に対して、臨床的に有用な解決策を提供する可能性があるとされています。

このツールは、HL7のFHIR相互運用性標準を使用して患者記録を取得。このデータストリームを使用すると、患者が病院や診療所を受診するたびに利用できる最新の概要を自動的にトリガーして作成できるようになっており、ブラインド評価では、自動要約の62%が標準治療を満たしている、と2人の認定医師により評価されています。これは、この方法が臨床的に有用である可能性があることを示唆していると考えられています。
膨大な臨床データを要約して現場医師に提供することの重要性、活用余地について、インタビュー形式で説明している動画がございます。よろしければご覧ください。

同社は、米国のStartup Awardも受賞しています。

5. Auxa Health:医療計画管理ツール

企業名:Auxa Health
URL:https://www.auxahealth.com/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Venture-Series Unkown
調達金額:$1M

Auxa Healthは医療支払者と医療提供者向けに分析ベースのデータプラットフォーム、医療健康計画管理ツール(医療計画の最適化を支援するソフトウェア))を構築および提供しています。

<サービス内容>
このデータプラットフォームは、患者の健康情報管理、データキュレーション、データ分析、会員満足度などの機能を備えており、”Social Care Orchestration` Platform"と呼ばれています。 どのようなモデルの医療計画を選択すればよいか、提供ベンダーの比較や管理ができるようになっており、提供されるケアを調整したり実際に提供を受けたりできるようになっています。効果的で包括的な意思決定を促す医療計画を受領できるようになるそうです。
*Orchestration(オーケストレーション) IT用語では、システムやソフトウェア、サービスなどの構築、運用管理を自動化することを指す。 仮想化環境において、仮想サーバーやアプリケーションの設定を統合的に行う、あるいは運用を自動化するといった意味で用いられることが多い。

出所:https://www.medigy.com/offering/auxa-health/

同社を紹介する動画(Submission for PharmaStars Accelerator Program 2023)がございます。よろしければ、どうぞ。

同社は昨年2022年の5月に、有望な初期段階の企業の育成と投資の両方を行う企業AlleyCorpが主導するベンチャーラウンドの終了を発表しています。この資金調達によって、上記プラットフォームの構築及び拡張を進めていく方向だそうです。この資金調達が進んだ背景に、急速に高齢化が進む人口のニーズに対応するため、Social determinants of health(SDH)*がメディケアプランを取り巻く環境下で緊急の優先事項となってることが影響しているそうです。以下記事では、SDOHサービスには、実用的なデータと洞察が不足しているため、非効率かつコストがかかり、多くの場合非効果的なサービス提供が継続的に行われている実情があったそうです。Auxa Healthの提供するサービスは、初の医療企業向け”Social Care Orchestration Platform" (Auxa SCOPE) として期待がなされているそうです。
*Social determinants of health(SDH) :健康の社会的決定要因。人々の健康や病気は、社会的、経済的、政治的、環境的な条件によって影響を受けるという考え方。

昨年2022年12月には、 CB Insightsが選出する、2022年に最も有望な民間デジタルヘルス企業150社に、同社が選出されています。よろしければ、以下記事をご参照ください。

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