神戸からのデジタルヘルスレポート#135(医療現場支援2/2)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。
今回は12回目です。「医療現場支援2/2」をテーマに取り上げていきます。
1. MedDX:転帰予測
医学的転帰*を予測するために、信頼に足る学術情報源から得られた機械学習計算機を活用するように設計されているアプリを開発・提供しています。 *転帰:治療が終了した時点の状態、結果 医療における予後予測、リスク層別化の効率を最適化し、最終的には医療チームの全体的なパフォーマンスを向上させることを目的としています。搭載されている査読済みジャーナルから得た機械学習計算機を活用することで、医療従事者が医療結果を予測するのを支援するように設計されています。
今年の2月(2024年2月)には3.0バージョンがリリースされており、消化器・内分泌・一般外科といった新たに追加した領域を含む200以上の医療転帰に関する情報機能が搭載されているそうです。今後より開発を進め、様々な病態のケースに対応できるようになりそうですね。
同社の以下の2つのブログで述べられているのは、転機予測の背景にあるのは、個別化・パーソナライズ医療の実現に欠かせない要素であること、機械学習が医療用計算機を革新的な計算と臨床専門知識の融合へ変貌させ、診断および治療の意思決定プロセスを支援することができるようになったことを述べています。
https://meddxapp.com/beyond-numbers/
2. Ascinta:AI画像診断
Ascintaは、研究、臨床試験、臨床治療における医療画像解析のための、使いやすく適応性の高いAI対応ソフトウェアを開発しています。
医療画像の領域においては、医療画像処理、定量化、線量測定とそれぞれセグメントがあり、それぞれアプリケーションが異なるのですが、この製品はそれらのアプリケーションをサポートするスケーラブルなWebベースのプラットフォームとなっています。
<機能と性能>
高速AI支援画像定量化 患者の転帰を改善することが証明されている画像ベースのバイオマーカーを計算(腫瘍の直径や総代謝腫瘍体積、総病変解糖など)
数回のクリックで高品質のPDFレポートが作成可 臨床試験の報告を迅速化および標準化し、変動性を低減(自動腫瘍測定フォーム、ラジオミクス定量表、カスタムレポート作成)
独自かつ最新のAIモデル 独自のAIモジュールを共同作業者と共有 臨床医向け:さまざまなモダリティと条件に対応する複数の最先端のAIモデルを低コストで試すことが可能) 開発者向け:複数のサイトやデータセットにわたってモデルを簡単にテストでき、AIの検証、公開、採用の簡素化が可能
パイプラインによるワークフロー自動化 高度な研究プロジェクトにおける画像処理、分析、定量化を加速
2024年6月時点では資金調達情報はまだ確認できませんが、同社のLikeInでは投資家の方とのコンタクトのようにみられるアクションが確認できるので、今後資金調達し開発を進めていく可能性がありそうです。放射線医療のパーソナライズにおいて当該企業の影響度は高そうなので、今後の動向が気になるところです。
3. Bunsen Health:AIデータ変換
Bunsen Healthは、医療現場における様々なデータ変換作業をAIによって自動化・サポートし、データマッピング、テスト作成、その他の手動タスクの負担を軽減させるSaaSプラットフォームを開発・提供しています。このプラットフォームは、ほぼすべての医療データの種類、形式、またはインターフェース間でのヘルスケア データのスムーズな移動を自動化するように設計されています。
医療現場には様々な臨床場面が発生するため、その場面によってデータ形式も様々です。(画像データ、検査データ、カウンセリングデータ、看護データなど)
これらのデータ統合の負担を軽減させていく、というのが当該企業の目的となります。
<機能と特徴>
多くのソリューションでは初期費用と継続費用が高額であるが、データを統合する際に組織が直面する課題である高コストを解決。
医療機関はデータ統合によるメリットを実感するまでに1年以上かかることがよくあるが、シームレスに素早く統合できる状態にする。
複雑で手動のワークフローをなくす。インテリジェントプラットフォームがデータを最初に処理するためAIにより効率化・簡素化。
プライベートなセルフホスティングのコストを負担し、データプライバシーを保護
リリースは2024年4月です。SpecAIを使用すると、データ分析を数週間から数秒に短縮できると記載されています。導入や開発・改良はこれからだと思いますが、現場における分析スピードおよび精度にどの程度インパクトを与えていくか、今後に期待です。
4. Global Diagnostics Technologies LLC:ラストマイルヘルスケア
Global Diagnostics Technologies LLCは、遠隔医療から、診断検査や医療機器の遠隔トレーニングまで、真に便利な遠隔医療の実現のためのソフトウェアプラットフォーム(SaaS)を開発・提供しています。 同社は「ラストワンマイルヘルスケア」というキーワードを掲げており、Covid19で遠隔医療の可能性は認知されたものの、治療を完了するには診断検査や医療機器のトレーニングを受けるために研究室や病院に行く必要があるなど、真の意味での遠隔医療の実現は不完全な状態であることに課題を持ち、臨床環境外でのさまざまなヘルスケアの提供をサポートできるようなサービス開発を行っています。
リモート診断支援コンサルティングサービス
遠隔診断の実現可能性の診断
戦略計画、予算編成、実装、および継続的な実行サポート
リモート診断ビジネスの導入に必要な文書化
ソフトウェアのセットアップ、統合
電子商取引ビジネスコンサルティングサービス
消費者直販(DTC)Eコマースと、雇用主/グループおよび特典ベースのEコマースソリューションの両方の専門家が対応
オンライン競合分析から価格分析、マーケティング戦略まで、実現可能性と戦略に関するコンサルティング
テクノロジーを活用した教育クリエイティブサービス
製品のセットアップや継続的な使用に関する教育資料を再開発
チームが更新や最適化を実行するために必要な教育コンサルティングを提供
上記のように、単に遠隔医療のツールを開発するのではなく、遠隔医療の実現のために必要なコンサルティングサービスを臨床現場の患者のみならず、医療従事者の教育や環境整備までカバーしています。リモートでの診療をCovid19時だけの一時的なものではなく、今後より発展させていこうという意思がみられますね。今後の発展が楽しみです。