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神戸からのデジタルヘルスレポート #119(デバイス・AI・医療機器②)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち16回目、テーマは「デバイス・AI・医療機器②」を取り上げていきます。


1. NIQS Tech:非侵襲な糖尿病管理センサデバイス

企業名:NIQS Tech
URL:https://www.niqstech.com/
設立年・所在地:2022年・リーズ(英国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:£725K

NIQS Techはリーズ大学からスピンアウトした、針や血液を使わない糖尿病管理(グルコースモニタリング)テクノロジーを開発・提供している企業です。グルコースと同様の光学特性を持つナノ加工ガラスを使用して、グルコースレベルを継続的に監視することができるようになっているそうです。これにより、血液採取を行わなくとも、糖尿病患者がグルコースを管理できるようになります。皮膚表面を傷つけることなく、リアルタイムでモニタリングできるというのがとても画期的です。

<サービス内容>
糖尿病患者は2021年は20人に1人、2045年には10人に1人にものぼるといわれています。糖尿病患者にとって、血糖値管理(グルコース管理)は不可欠な要素です。しかし、現在の血糖コントロールにおいては、血液採取が必須となっているため、医療機関での採決や検査キットを用いての血液採取は避けて通れません。同社の製品は、血液ではなく光相互作用と呼ばれる光特性を用いて、接地面からのセンシングにより血糖値を測定します。以下の動画で、同社および同社開発製品についての説明がございます。5~6分ほどの動画です。よろしければ、ご覧ください。

最初の製品は、デバイスに指を置くだけで数秒で測定できるハンドヘルドの「タッチ式」センサーだったそうです。その後、スマートウォッチと同様の設置面積を持つウェアラブルな連続センサーで、24時間血糖値を監視することができる製品を開発するに至っているそうです。医療機関や検査キットを用いて血液を採取する、といった手間がなく、かつ侵襲性もなく血糖値を測ることができるようになります。最終的に、糖尿病患者のような医療現場の利用だけでなく、薬物やアルコール依存症などのモニタリングやスポーツにおける乳酸モニタリングなど、より広範囲で利用できるバイオマーカーの検出まで発展させる展望だそうです。

同社の製品技術は、DCB Open Innovation Challenge 2022の「糖尿病機器トップ20」にも選出されています。非侵襲性の技術と、今後拡大が予想される用途およびマーケット規模から、高い期待を寄せられていることがうかがえます。

2. Sensawear:褥瘡防止のためのモニタリングセンサ

企業名:Sensawear
URL:https://www.sensawear.ch/
設立年・所在地:2022年・ベルン(スイス)
直近ラウンド:Grant
調達金額:CHF150K

Sensaweaは、近赤外分光法を用いた褥瘡防止のためのモニタリングセンサーを開発・提供しています。本製品のセンサーは 1回限りの使い捨てとなっており、24~72時間、継続的に装着できます。通気性、防水性に優れた肌に優しいセンサーでして、摩擦や湿気による肌への刺激を与えることなく装着できます。痛みを伴う危険な褥瘡や褥瘡の形成を防止し、術後病棟や外傷病棟で継続的なモニタリングを提供して外科的回復を改善します。

<サービス内容>
寝たきりなど、動けない患者に関して、圧迫により皮膚や組織に十分な酸素が供給されなくなると、圧迫による損傷が発生することがあります。これがいわゆる「褥瘡(じょくそう)」と呼ばれるものです。このような危険な怪我は背中のような床地の接着面に発生することが多く、一度褥瘡ができてしまうと、治癒するまでに数か月、場合によっては数年かかります。このため、褥瘡を防ぐ唯一の方法は、患者を動かし、組織の灌流を回復させること、となっており、看護師や介護士が定期的に皮膚上に褥瘡が生じていないかチェックし、その防止に努める格好に現状はなっています。しかし、人により目検には限界があり、気づいたときには褥瘡が進行していたり、看護師や介護士のスタッフの負担を増やすことにもなっています。

出所:https://www.sensawear.ch/

同社の製品では、光ファイバーの薄型ウェアラブル粘着センサーにより、ユーザーは組織の酸素飽和度と皮膚への圧力に関するリアルタイムのフィードバックを得ることができる繊維センサーシステムとなっています。このセンサーは近赤外線を使用して組織内の酸素含有量を継続的に測定が可能、高圧点によって引き起こされる低酸素状態に気づくことができるため、褥瘡の発生する市すくのある箇所はどこなのか(体位移動の必要のある個所はどこなのか)を示すことができます。最小限の体位変更で的を絞った介入を可能にすることで、痛みを伴う危険な褥瘡/褥瘡の形成を防止するそうです。これにより、看護師や介護士などのスタッフに負担の多かった褥瘡管理が、より防止しやすくケアしやすくなりまし。薄くて着け心地が良く、粘着性があり、防水性のある使い捨てセンサーであることも利点です。

昨年2022年の8月に、スイスフラン150Kを調達しています。このスタートアップの共同創設者兼CEOであるOliver Kress氏は、物理学のバックグラウンドがあり、また、共同創業者兼CMO、取締役会長であるUrsula Wolf氏は、近赤外線技術の専門家で数十年にわたる臨床および医学研究の経験を持っているそうです。様々な専門分野のスペシャリストが集まったチームで本製品は開発されているのですね。

3. μ-Pump:スマートインスリンポンプ

企業名:μ-Pump
URL:https://u-pump.com/
設立年・所在地:2022年・ヒューストン(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

μ-Pumpは、スマートフォンとスマートウォッチ制御を備えた最先端のインスリンポンプ*を開発し提供しています。
*インスリンポンプ=インスリンを持続的に注入するポンプ

<サービス内容>
インスリンを持続的に注入するためのインスリンポンプであり、スマートフォンまたはスマートウォッチで制御される自動インスリン投与ができるデバイスとなっています。ユーザーの自己管理、自己判断にゆだねる格好ではなく、スマートフォンもしくはスマートウォッチから理想(目標)の血糖値に応じて設定された制御装置で投与されるため、ユーザー自身の血糖値管理および状態を良い状態に導きやすくなります。合併症のリスクを軽減できるように設計もなされているんだとか。

▼特徴

  • 人間工学に基づいた点滴のような外観で、外部チューブなし

  • 従来のインスリン ポンプよりも小さく、快適に装着できる

  • 高精度な電源管理を備えており、最大72時間稼働

  • 自動インジェクターシステムが含まれている(スマートフォンもしくはスマートウォッチから投与制御可能)

出所:https://www.linkedin.com/company/μ-pump/

まだ公開されている情報は少ないですが、ショートデモ動画があります。よろしければ、どうぞ。(腕に装着される本製品がみえます。ほんと、小型です。)

<糖尿病とインスリンポンプの市場について>
以下の記事では、次世代インスリンポンプの市場需要に関して触れています。その中で、外部カニューレを使用する従来型のインスリンポンプとは異なり、μ-Pumpは独自のOneMoveシステムを使用して、1回の動作で簡単に迅速に、そして痛みのない取り付けを実現できる、と紹介されています。また、同社製品は、リモート接続されたインスリン注入管理と使い捨て設計がなされている、という点でも従来型の欠点を解消できており、ユーザーにとっての明らかなメリットに繋がっている、と述べられています。

▼インスリンポンプの市場について

  • 国際糖尿病連盟によると、2019年には世界中で約4億6,300万人が糖尿病を抱えており、その数は2030年までに5億7,800万人に増加すると予測

  • インスリンポンプの市場は2020年に39億4,000万米ドルと評価されており、2026年までに8.24%のCAGRで成長し、64億7,000万米ドルに達すると予測

  • 世界的な糖尿病の有病率の増加、より高度で便利な治療オプションの必要性などの背景から、次世代インスリンポンプの市場需要が高まる予測

4. Pillbie(Medpack):薬の飲み忘れ防止デジタル薬箱

企業名:Pillbie(Medpack)
URL:https://pillbie.me/
設立年・所在地:2022年・ポドゴリツァ(モテネグロ)
直近ラウンド:Praivate
調達金額:N/A

Pillbieは、薬の飲み忘れを防ぐためのデジタル薬箱を開発・提供しています。スマートフォンアプリとも接続されており、薬剤を服用したかどうかの記録も蓄積されます。また、適切なタイミングで適切な量を服用しているのか、薬の服用タイミングでは、本薬箱が光と音でリマインダーするような機能設定がなされています。また、薬箱内自体に薬の仕切りが設けられており、取り違えを防止するようなアナログ設計もなされています。

出所:https://pillbie.me/

※なお、同社は、2022年末~2023年初めにかけて、社名をMedpackからPillbieに変更しています。

出所:https://me.linkedin.com/company/pillbie

以下記事では、患者の40~80%が医師の処方したスケジュールに従って薬を服用していない問題を指摘しています。慢性疾患患者では、30~50%が正しい服用を行っておらず、米国だけで年間最大12万5,000人が死亡する要因のひとつともなっているそうです。 本製品では、様々な種類の薬用に設計された4~8つのモジュール式セクションに分かれており(薬の取り間違え防止)、各コンパートメントには独自の照明があり、薬を服用する必要があるときに点灯するような仕様となっているそうです。

本サービスを紹介しているピッチ動画がございます。よろしければ、どうぞ。(英語ではないので、翻訳機能は必須です。)


5. Sleepagotchi:睡眠で稼ぐアプリ

企業名:Sleepagotchi
URL:https://www.sleepagotchi.com/
設立年・所在地:2022年・ケンブリッジ(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$3.5M

Sleepagotchiは、ユーザーの睡眠習慣の改善を支援するゲームアプリを開発・提供しています。睡眠目標を達成したユーザーに、NFTの仮想通貨による報酬を与える格好となっています。健康のためにしっかり寝る、ということを達成することで報酬も得られるなんて、面白いですね。

<サービス内容>

  • ユーザーが設定した睡眠目標を達成すると、シープと呼ばれるデジタル品やトークンでの報酬がもらえる

  • ユーザーは目標とする就寝時間と起床時間を入力し、実際の就寝時刻と起床時刻が目標に近づいた分、レベル別に報酬を獲得

  • 就寝時刻と起床時刻は、iPhoneではiOSのAppleHealth(AppleWatchも可)AndroidではHealthConnectと接続し、モニタリングされる

  • 上記の他、WHOOPFitbitOuraリングといった睡眠をトラッキングするウェアラブルデバイスとの接続も可

以下のSleepagotchi Whitepaperでは、アプリと報酬の仕組み等、本サービスについて詳細が記載されています。よろしければ、どうぞ。

日本国内でもユーザー数が一定いるようで、企業HP自体の言語設定にもENの他、JAがあるほどです(珍しいですね)。投資している日本企業がいるため、以下のような「Web3睡眠アプリ「Sleepagotchi」に投資した理由」を述べるnote記事もありました。よろしければ、ご参照ください。

同社は、今年(2023年)1月に350万米ドルを調達しています。記事内では、2022年に日本、韓国、台湾といったアジアでアクティブユーザーを獲得し、アジアで人気を博していることも述べられています。


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