banner_神戸からのデジタルヘルスレポート

神戸からのデジタルヘルスレポート #30 (Sitka/Ava/Goodsomnia/Raccoon.Recovery/YuScale)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第30回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

==

1. Sitka:臨床医診断支援の専門家ネットワーク

画像1

企業名:Sitka
URL:https://www.trustsitka.com/
設立年・所在地:2017年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年4月)
調達金額:$3.2m(Lifeforce Capital)

医療現場でもAIや機械学習の活用が叫ばれている昨今ですが、このSitkaは2017年と比較的最近創業したスタートアップながら、ピュアなD2D連携です。具体的には、臨床医が診察の際に患者の状態をより理解できるように支援する専門家ネットワークおよびプラットフォーム。臨床医が日常の診察の中でわからないことを他の専門家に質問したり、診断・治療に関する情報をそのプラットフォームから得ることが出来ます。

ユーザーである医療者は、病院で撮影した医療データや画像データをアップロードし、他の専門家からフィードバックや解釈、メモを受け取ることが出来ます。相談できる疾患は整形疾患から呼吸器疾患、神経疾患、リウマチ疾患と幅広く、かつデバイスに縛られることもないと。
(撮影データの管理とかどうやって院内ネットワークから抽出するんだろう...気になる...)

画像2

日本だとアルムさんのJoinが有名ですね!
19年12月に、急性虚血性脳卒中患者の救急時を対象にJoinを用いた遠隔支援を実施したケースについての論文が出ていました。Join実装前後の比較にはなってしまいますが、病院到着から治療開始までの時間が大幅に短縮されたとのこと。素晴らしい...!! アルムさんのリリースがこちら

Validation of a Smartphone Application in the Evaluation and Treatment of Acute Stroke in a Comprehensive Stroke Center

ちょうど最近参加したがん治療のイベントで、オプシーボやヤーボイなどを用いたがん免疫療法では副作用が多岐にわたるため、安定した治療の継続のためには様々な疾患領域に専門性を持つ医療者の連携が必須、というお話を伺ってきました。
技術が進めば進むほど、これまで想定されていなかった範囲にも営業が及ぶようになり、いっそう人と人との連携が必要になる、というのは、業界問わず一般的なストーリー・構造なのかもしれないと最近思います。

2. Ava:難聴者の会話補助アプリ

画像3

企業名:Ava
URL:https://www.ava.me/
設立年・所在地:2014年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Seed(2018年4月)
調達金額:$1.8m(The Index Project、SV Angelsなど)

現在世界には、400万人を超える難聴/耳の不自由な方がいるといわれています。そのような方々の、日常生活の中での会話をより充実にするために開発されたのが、サンフランシスコベースのavaというサービス。
"Communicate Beyond Barriers"のミッション、めちゃかっこいいです。

画像4

Avaが使っているのは音声認識の技術で、1m以内にいる人の会話であれば95%以上の精度で発話者と発言内容を即座に文字起こししています。これがパワフルなのは、グループでの会議や会話のシーン。それぞれのスマートフォンにAvaアプリを入れればすべてが時系列に文字として出力され、難聴の方でも内容をフォローしやすくなります。↓のようなかんじ。

動画に出てくる方々もみなさんユーザー。
同社Webにもユーザーの声が溢れていて、ユーザーを中心としてサービスデザインしている姿勢が最大値振り切れていてめっちゃ素敵でした。

画像5

このサービスにより、筆談やメモで伝えようとする際のストレスや手間から解放されます。インクルーシブ感あふれる、大好きなサービスです。

3. Goodsomnia:いびき検出ソリューション

画像6

企業名:Goodsomnia
URL:https://goodsomnia.com/
設立年・所在地:2016年・ストックホルム
直近ラウンド:Seed(2018年7月)
調達金額:€375k(startupbootcamp)

睡眠中のいびきは、自身の体とパートナーにストレスを与え、深刻化すると死をもたらす可能性もあるものです。いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)で苦しんでいる人の割合は世界人口の30%とも言われており、さらにOSAは高血圧、糖尿病、心疾患、脳卒中また仕事中・運転中の事故と一定の関連があることが報告されています。

画像8

Goodsominiaは、いびき/OSAの検出・分析、更には治療の方向性を伝えるアプリに加えて、様々なデバイスも提供しています。全体像を掴むための動画が↓です。

デバイス連携の中心にあるアプリは取得したデータの記録や分析、その内容のかかりつけ医(耳鼻科医and/or歯科医)への共有を行ってくれます。

連携するデバイスの1つ目は胸部センサーパッド。睡眠中の心電図、心拍数、体の動きを追跡してくれます。心臓の状態を経時的に追跡することができるため、潜在的な心臓の問題を発見する手助けになるかもしれません。

さらに睡眠中のいびきを止める/緩和するための非侵襲的デバイスも提供しています。デバイスの先についている振動するシリコンボールをいびきの原因となる筋肉にあてることで、筋肉を刺激し調子を整えてくれるとのこと。1日わずか30秒、10〜20日間続けて使用することで一定の効果が見られると、発売前に行われた実験で報告されています。(どれくらい効果があるんじゃろうか...)

画像8

人口の30%だとすると、日本でも4千万人規模。発売が待ち遠しい...!!

4. Raccoon.Recovery:神経疾患患者向けゲーミフィケーションリハビリツール

画像9

企業名:Raccoon.World
URL:https://raccoon.world/
設立年・所在地:2016年・ベルリン
直近ラウンド:Seed(2019年7月)
調達金額:$516(Startupbootcamp Digital health Berlinなど)

Raccoon.Recoveryは、ビデオゲームをもとにした手指のけが後や神経疾患患者のためのリハビリテーションツール。The Hardwareなのでまずは動画を!

これらの製品の良さは、ビデオゲームベースのため治療が長続きしやすいこと。Pokemon Goしかり、運動には楽しさ必須。リハビリの評価・治療を理学療法士ではなく自動で行えること、自宅でリハビリが完結すること、理学療法士もリモートフォローアップができることなど、その他にも利点が多い。

神経疾患患者さんの治療では、手や腕の動きのトレーニングは治療の重要な一部。リハビリ大切。介護度上げる前に、どんどんリハビリを。

5. YuScale:外食時の栄養計算ソリューション

画像10

企業名:Yuscale
URL:https://yuscale.com/
設立年・所在地:N/A・ドイツ/ビールフェルト
直近ラウンド:Grant(2018年5月)
調達金額:€171k(Open Data Incubator for Europeなど)

多くの糖尿病患者は取ってはいけない栄養素があり、特定の食物をどれだけ食べたかを計算しておくことが安定した治療の実施や体調管理の上で重要です。しかし、外食・昼食の場合、食物の量やそれに紐づく栄養素の種類・量を個別に測ることはほぼ不可能で、それ故に注入するインスリンの量を最適化しコントロールすることのハードルは相当に高いです。

そんな問題を解決するための製品をしようと始まったのがYuScale project。このプロジェクトは「Yuscale G」、「Yuscale Button」、「Yuscale App」の3つを製品/サービスとしてリリースしています。
キーとなっているのは、画像解析と秤の軽量化。

・Yuscale Go/Button:小型の秤。Yuscale Goはスマホケースの背面に付ける商品。Buttonはポケットに入れて持ち運ぶよう
・Yuscale App:撮影画像から食材・材料を推定

上記のそれぞれを組み合わせ、食事前と食事後の食材・材料/重さを比較することで、摂取した栄養素を自動計算する。そんな使い方です。

食べる前に写真を撮って重さを測る、食べた後にも写真を撮って重さを測る。少し手間がかかりますが、このプロセスを通じて、誤った栄養素・食材摂取リスクを最小化することができます。
まずはツールの小型化から。これからのさらなるイノベーションに期待!

==
こんな感じで、第30回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)


応援ありがとうございます!