神戸からのデジタルヘルスレポート #114(臨床支援③)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!
今回は全20回のうち11回目、テーマは「臨床支援③」を取り上げていきます。
1. RAYDIAX:低侵襲の治療支援CTシステム
RAYDIAXは、術後合併症のリスクが低く、入院期間と回復時間が短い、低侵襲がん治療として、コンピューター断層撮影 (CT) に焦点を当てた治療用画像システムを開発している企業です。従来は診断のみにも散られるコンピューター断層撮影 (CT) をナビゲーションシステムと2Dおよび3DのX線ライブ イメージングを組み合わせて使用することで、医師が安全で直観的かつ効率的ながん治療手順を実行できるようにします。
<サービス内容>
低侵襲癌手術用に特別に開発されたコンピューター断層撮影装置(CT)は世界中にまだ存在していないため、これが開発・実用化されると「世界初」となるそうです。
このサービスについて紹介動画がございます。よろしければご覧ください。
CT制御下での治療では、たとえば、カテーテルや針を体内に正確に配置できるため、従来の「開腹」手術と比較して合併症のリスクが軽減されます。その間、CTチューブ内でも低侵襲介入が行えます。しかしながら、現行のCTでは、あくまで撮影(診断用)に設計されているため、手術(治療用)に設計されていません。そのため、手術(治療用)のためには、従来とは異なる開発が必要となるそうです。例えば、放射線量の低減や非常に高速なイメージング技術、外科医が腫瘍に正確に到達できるナビゲーション システムの統合など、手術をサポートする特別な機能の開発が含まれます。 現在開発段階の同社システムですが、実際の現場からはすでに肯定的な反応を得られているそうです。
手術ロボット「ダヴィンチ」と比べて、さらに小型の器具で済む
全身麻酔を必要とせずに手術が可能
最も細い針は、腫瘍組織を破壊的な 60~90度まで正確に加熱可能であり、サイズが 2 センチメートルまでの腫瘍の治療において最適な結果を示せる
緩和医療では、この技術を使用して腫瘍を縮小し、痛みを軽減することができる可能性がある
2. S10.AI:AIロボット音声認識医療筆記者
S10.AIは、人工知能と自然言語処理を利用して臨床文書を合理化するロボット医療筆記会社です。同社のロボットサービスを用いることで、医師はオンライン上に事務サポート(秘書、医師事務のような)を受けることができるようになります。マウスやキーボードの操作を不要とし、音声認識でカルテへの自動記載や患者の臨床プロセスの管理、医療文書の自動作成等、手間がかかる事務処理を簡素化および効率化できます。これにより、医師にとって負担となっていた事務処理を減らし、医師の燃え尽き症候群を防止する狙いがあります。
<サービス内容>
同社のロボット機器は、以下にような高度な自動化ソリューションを医療従事者へ提供します。
患者との面談を正確に文字に起こす(音声認識による書き起こし機能)
重要な情報を収集し、包括的な臨床メモを作成
AIの力を活用して医療文書を最適化、EHRへ管理
キーボードやマウスの操作は不要
本ロボットサービスの機能のひとつである「医療文書作成ソフトウェア」について、どのような点で役立つのか、紹介している記事が同社のブログとしてございます。よろしければこちらもご参照ください。
また、同社では、ケーススタディと称して、実際に同社ロボットサービスを利用して、どの程度ROIを改善することができたのか、を概説しています。
3. Tracie Healthcare Solutions:検体のデジタル管理
Tracie Healthcare Solutionsは、採取した検体(サンプル)のプロセスをデジタル化することにより、誤診の70%を削減できるデジタルサービスを開発している企業です。
以下の動画でもサービス内容を紹介しています。よろしければご覧ください。
<サービス内容>
Tracieを使用すると、サンプル(採取した検体)の収集プロセス全体がデジタル化され、従来のヒューマンエラーを排除し、患者にとって最良の診断を保証できるようになります。例えば、以下のエラーを防ぐことができるようになります。
患者識別:患者のリストバンドを使用したスキャンにより、各患者を確実に識別
検体の適切な管理:必要なサンプル材料の量と特定の要件を明確化し、正確に管理
チューブラベルの間違い防止:(事前) バーコード付きチューブの助けにより、サンプルへの不便な手作業によるラベル付けやタグ付けが不要となる
<ラボ(検査室、研究室)のデジタル化>
以下の記事では、同社のサービスについて紹介するとともに、同社とGreiner Bio-Oneが「研究室のデジタル化 – その方法とその理由」をテーマにしたワークショップを主催したことが述べられています。病院検査室、民間検査室といったそれぞれの観点からも、検体(サンプル)のデジタル化は重要な取り組みだそうです。
4. SmartMED:ドライブスルー型診療所
SmartMEDは、患者が自家用車で訪れるだけで、車から降りることなく、迅速かつ便利に受診できるサービス(ドライブスルー型診療所)を提供しています。本サービスについて紹介している動画がございます。よろしければご覧ください。
<サービス内容>
同社のサービスでは、臨床検査 (抗原と PCR の両方) は現場で即時に実行され、患者に迅速かつ正確な診断が提供されます。ご希望の薬局に処方箋をお送りすることができるそうです。また、すぐに症状を緩和したい場合は、その場で薬を処方できる上、市販薬についても販売しているそうです。
予約不要で来院可能
待ち時間は5分未満
平均的な受診時間は10分以内
患者は車で到着し、医療スタッフが出迎え、3分以内に患者登録が完了
検査が必要な場合はサンプル採取を行い、患者は帰宅後1時間以内に検査結果および診断、治療計画のフォローアップを電話でもらえる
また、以下の動画では、インタビュー形式で同社の創設者がドライブスルー型診療所のコンセプトがどのように生まれたのか、その利便性とケアについて語っています。こちらもよろしければご覧ください。
<創業の背景>
SmartMEDのアイディアは、Covid-19が大きく影響しています。従来柄の受診方法では課題があるとして、21,000人以上の新型コロナウイルス検査を実施した医療チームらの経験から、現行のサービス形態の構想に至りました。パンデミックだけでなく、今後発生し得る感染症やその他疾患に対し対応できるよう、ドライブスルー型という新たな形態を創り上げています。
5. Knowtex:医療音声書き起こし&文書作成自動化
スタンフォード大学よりスピンオフしたKnowtexは、AIを用いて医師と患者の会話を書き起こし、医療文書(保険償還申請の証憑となる医療事務書類)作成を自動で行うDX SaaSを開発・提供しています。Knowtexのサービスを活用し、病院内のレセプト業務などの医療事務を一気通貫で自動化・デジタル化することで、医師や医療事務スタッフの業務時間削減が期待できるそうです。
<サービス内容>
医師や医療従事者と患者間の会話を自動認識、書き起こし
上記で認識し書き起こした内容を要約し、電子カルテに記録
必要に応じて、診療書類を作成
事務作業に費やしていた時間を1日あたり2~3時間削減
自動コーディングサポート機能により、診療報酬計算も適切化
医師は電子カルテの入力の手間が省けるので、診療に集中できる
尚、同社は国内のベンチャーキャピタル「DG Daiwa Ventures」も出資しています。
同社は、世界最大の医療技術アクセラレーターMedTech Innovator*において、2023年コホート61社に選出されています。
*MedTech Innovator:患者ケアを改善するための革新的なツールを開発するヘルスケアスタートアップ企業を特定。コンペティションの勝者に非希薄化資金としてさらに 80 万ドルを授与している