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神戸からのデジタルヘルスレポート #120(デバイス・AI・医療機器③)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち17回目、テーマは「デバイス・AI・医療機器③」を取り上げていきます。


1. Companion Spine:脊椎埋込型デバイス

企業名:Olahealth
URL:https://ola-health.com/
設立年・所在地:2022年・ニューヨーク(米国)
直近ラウンド:Series A
調達金額:$60M

Companion Spineは、椎間板変性疾患および腰部脊柱管狭窄症の治療のための低侵襲診断および治療ソリューションを開発・提供している企業です。

<サービス内容>
代表製品として、腰痛等の腰の疾患に対する"DIAMインプラント"があります。脊椎に配置することで椎間板の負担を分散させることができます。説明動画があります。1分ちょっとなので、よろしければどうぞ。

このアプローチは、脊椎に関わる各病状の発症初期に適用できる画期的なものだそうです。これまでは外科的な解決策である脊椎固定術が主流でしたが、このインプラントを利用することで外科的処置が不要となるそうです。(参考:以下記事_2022年2月)

また、同社は今年2023年1月に、フランスボルドーに拠点を置くBackbone SASを買収しています。Backbone SASは、主要製品" LISAインプラント"をはじめとした、脊椎疾患治療用の埋込型デバイスの設計、開発および製造を行っている企業で、Companion Spineはより幅広い脊椎疾患に対応できるよう、さらなる強化を目的として買収したものと見られます。
以下記事も、よろしければご参照ください。

今年2023年3月にはSeries Aでさらなる資金調達を行っています。脊椎固定術を必要とせずに腰部脊柱管狭窄症(LSS)や椎間板変性疾患(DDD)を治療する未来は、そう遠くないかもしれません。

2. Nourica:汗のバイオマーカーデバイス

企業名:Nourica
URL:https://www.kosmedhealthcare.com/cpap-machine/
設立年・所在地:2022年・ヴロツワフ(ポーランド)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$250K

Nouricaは、人の汗で検査する、汗をバイオマーカーとしてウェアラブルデバイスを通して計測し、健康状態をモニタリングできる機器を開発している企業です。最先端の分光技術を使用して人間の汗からバイオマーカーを抽出して分析し、スクリーニング、健康状態のモニタリングを可能とします。汗ですと、採血や放射線等の侵襲性がなく、かなり画期的な検査デバイスといえそうです。

<サービス内容>
靴サイズのデバイスを装着するだけで、皮膚から汗サンプルを収集し、測定できるようになっています。同社は「肌に触れるだけで健康情報をダウンロードできる」といいます。

出所:https://www.linkedin.com/company/nourica

汗に含まれるバイオマーカーは、代謝異常、がん、感染症などの幅広い健康状態に関する情報が含まれているそうです。
例:グルコース、乳酸塩、コルチゾール、様々な電解質
汗のバイオマーカーの最も大きな利点は「非侵襲性」だそうで、採血に拒否感や恐怖感を抱く方や子供や高齢者にとってもメリットが大きいです。また、人の血糖値は1日を通しての血糖値を正確に反映していない可能性があるそうで、汗中のグルコースレベルを測定することは経時的なグルコース レベルをより正確に把握できるようになるのだそうです。汗のバイオマーカーについて、同社のBlogで詳細を紹介しています。よろしければどうぞ。

とても画期的な汗のバイオマーカーですが、まだまだ課題は山積しているそうです。そのうち大きいのが標準化と感度、だそうです。標準化については、汗のバイオマーカーを収集および分析する方法がまだ標準化されきっていない研究途中段階であるため、臨床現場にリリースするにあたっての客観的な比較を可能とする状態にはまだ至っていないそうです。
もう一方の感度については、一部の汗の成分が非常に低濃度で存在し、安定して検出するには至っていないこと、だそうです。これらを克服するためにも、より研究と開発を進める必要があり、資金調達も昨年2022年12月に実施しています。今年2023年にヴロツワフで注目するスタートアップとしても注目されています。今後の動向に注目ですね。

3. UniSophy:深呼吸デバイス

企業名:UniSophy
URL:https://unisophy.co.jp/
設立年・所在地:2022年・東京(日本)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

UniSophyは、「WellTechの推進で、不必要なストレスから解放される世界を。」を掲げ、CBDとAIを活用した深呼吸デバイス「MUZE」を開発・提供しています。
また、同社は、ピル・ED薬の処方と定期購入が可能なオンラインクリニックも運営しています。
*WellTech=Wellness + Technology

<サービス内容>
"深呼吸がもたらす人体への作用と心の働き"に着目し、ヘルシーでスマートにQOLを高めるプロダクトとして開発されたデバイスです。 QOL向上に欠かせないと言われる深呼吸ですが、81%の人が普段、呼吸を意識していない状況だそうです。この毎日きちんと意識して行うのが難しい深呼吸を、日常の中で実施できるようサポートするのがこのデバイスの目的です。身長や体重、日々の悩み等、7つの質問に答えると独自開発のAI搭載のレコメンドエンジンが自分に合った最適なCBD濃度やフレーバーを診断・提案する仕様となっています。パーソナライズされたデバイスを用いて呼吸をすることで、普段意識できていない深呼吸を実施できるようになるそうです。

出所:https://www.wantedly.com/portfolio/projects/67180

以下の記事で詳細をご紹介しています。よろしければどうぞ。

4. Huinno Aim:「AI」ベースのCDSS

企業名:Huinno Aim
URL:https://www.huinnoaim.com
設立年・所在地:2022年・ソンスドン(韓国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:₩4B

Huinno Aimは、「AI」ベースのCDSS*を開発しており、ICUやER(救急)の患者の生体信号データを即座に分析し、疾患の診断と予測を行える製品として提供しています。これにより、集中治療に発生するさまざまな状況に迅速に対応でき、現場の医療従事者の意思決定をサポートします。
*CDSS:医療者が個々の患者さんに対し何らかの意思決定を行う際、役立つ情報を迅速に提供できるようデザインしたコンピューターシステム
尚、同社は、韓国で初めてウェアラブルデバイス機器承認を受け、遠隔医療市場をリードしている(株)HUINNOが100%出資する子会社です。(株)HUINNOが開発し販売している「MEMO」は小型のパッチ形式で心電図測定が可能なデバイス機器であり、心電図補助診断やAIベースの不整脈分析技術、ECGレポート、チャットボットが搭載されています。よろしければ、以下の製品ページより、どうぞ。

<サービス内容>
血圧(BP)、酸素飽和度(SpO2)、呼吸(RR)、体温(BT)、心電図(EKG)など、生体信号を継続的にモニタリング&分析するAIソリューションです。多様なバイタルサインをAIを用いて分析することで、常に患者対応に追われ、迅速な意思決定を求められるICUやER(救急)現場の医療従事者をサポートしていくことを目的としています。
(例)

  • ER(救急)でのリアルタイム生体信号伝送とモニタリング

  • ICU(集中治療室)でのAIによる患者容体予測精度、ECGデータを分析しての不整脈検出

  • OR(手術室)でのリアルタイム生体信号分析

同社は、昨年2022年の8月には、40億ウォン規模のSeed調達を行っています。人工知能(AI)ベースの臨床医決定システム(CDSS、Clinical Decision Support System)の開発をより促進し、医療従事者がICUの患者の治療により集中&緊急事態にも迅速に対応できる環境をつくっていくそうです。

5. CogXR Labs:ヘルスケア4.0(AI×XR)

企業名:CogXR Labs
URL:https://cogxrlabs.com/
設立年・所在地:2022年・ルールキー(インド)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

CogXR LabsはAIとXRのテクノロジーを用いたヘルスケアソリューションを開発している企業です。「ヘルスケア4.0」を構築する、と掲げており、現在開発中のものが多いようですが、口腔がんモバイルスクリーニングツール"Oncarea"やCovid、結核、肺炎などを検査するモバイル アプリ"DigiXCare"といったAIやXRを活用した製品を開発しています。

<サービス内容>
Oncarea
本製品は口腔がんのモバイルスクリーニングツール"Oncarea"です。インドは世界の口腔がんの中心地とみなされており、世界の口腔がん罹患率の33%以上を占めています。この口腔がんの罹患率を少しでも解消、予防するために開発されたツールです。

利用方法はシンプルで、スマホで口腔内の写真を撮るだけ、です。この口腔内の画像を専門家(医師)へ連携し、ユーザーがアクセスできる範囲内での医療機関をレコメンドし、医師の紹介、予約の設定、薬の記録等、様々な手続きまでサポートします。こちらに動画もございます。よろしければどうぞ。

DigiXCare
X線画像に基づいて新型コロナウイルス、結核、肺炎などをスクリーニングするモバイルアプリです。iHUB DivyaSampark(インド政府科学技術省 (DST) とインド工科大学 (IIT Roorkee) の共同機関)と協力して開発・提供したものになります。本製品は、インドにおける医療従事者の深刻な不足を解決させる技術AIの認知度を高めることも目的のひとつとして、無料で提供されたそうです。(まだAIへの信頼が不足している、AIへの恐怖のようなものがある現状から、少しでも啓蒙になれば、といった意図もあったようです。)

CxNeuro
現在開発中でリリースは近日中らしいのですが、脳波と最先端のAIを活用し、患者さんだけでなく日常のユーザーをサポートすることを目指しているものだそうです。本製品では、人間の脳に直接働きかけることを目的としており、認知状態評価者(対象者)の精神状態を分析し、脳がリラックスした状態でパフォーマンスを向上させるためのフィードバックを提供するそうです。

出所:https://cogxrlabs.com/#about-us

同社は、Youtubeでも、XRのイメージやAI/XRについて学ぶコミュニティ等の動画を紹介しています。よろしければ。ご覧ください。

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