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神戸からのデジタルヘルスレポート #63 (デジタル治療DTx・後半)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第63回、デジタル治療の後編です!元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Limbix Spark:DTx for 思春期うつ病患者

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企業名:Limbix Health Inc.
URL:https://www.limbix.com/
設立年・所在地:2016年・サンフランシスコ/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2020年5月)
調達金額:$16m(Storm Ventures, GSR Ventures)

Limbix Sparkは、思春期のうつ病患者に対するデジタル治療を提供するアプリです。医師から処方される、という意味でまさにデジタル治療サポートソリューション事業部で、部分的にVRもプログラムに組み込んでいます。まずは動画を。

このアプリでは、数週間の認知行動療法に基づくプログラムが提供されます。10代という若い世代でもモチベーションを保てるように設計されており、VRもその手段の一つとして、という位置づけ。

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アプリの有効性を検証する研究は現在も進行中で、ホームページで被験者の募集を行っていました。研究開発が進み、うつ病に悩む若者に早く届けばいいなと願うばかりです。FDAに承認された場合、若年層のうつ病患者をサポートする最初の処方デジタル治療法となる見込み。

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2. CT-152:うつ病に対するデジタル治療アプリ

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企業名:Click Therapeutics, Inc.
URL:https://www.clicktherapeutics.com/
設立年・所在地:2012年・ニューヨーク/アメリカ
直近ラウンド:Venture Round(2018年10月)
調達金額:$27.4m(Sanofi Ventures, Hikma Ventures)

続いて、うつ病に対するデジタル治療アプリももう一つ紹介。Click Therapeuticsが開発中の「CT-152」は、うつ病に対するデジタル治療アプリです。紹介動画が↓。

このアプリでは、処方された薬物療法と組み合わせてエビデンスに基づいた認知行動療法を提供します。特に、ワーキングメモリ(短期記憶)に対してアプローチすることでうつ病症状の改善を目指すと。どういう機序なんだろう。。実際に6週間のパイロット研究では、うつ病の指標であるHAM-Dスコアに改善が認められたとのことで、2019年1月には大塚製薬との提携を発表しています。開発費などを含めた3億ドルの資金を大塚製薬から獲得していて、現在はFDA承認取得に向けての準備が進められています。

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同社は禁煙向けのサービスは既に開発・リリース済み。さらに、2020年9月にはべーリンガーインゲルハイムと統合失調症向けのデジタル治療法の開発・商業化において提携することを発表しており、5億ドル以上の契約となっています。

チーム構成を見ても、経営層から技術分野、研究分野、臨床分野、ビジネス分野でそれぞれ強いメンバーがそろっていて、隙なし、、、、、今後デジタル治療の業界を席巻していきそうな予感がしますね。かなり注目です!

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3. Sword Health:デジタルリハビリ治療

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企業名:Sword Health Technologies, Inc.
URL:https://swordhealth.com/
設立年・所在地:2015年・ニューヨーク/アメリカ
直近ラウンド:Series A(2020年2月)
調達金額:$24.5m(Khosla Ventures, Founders Fund)

Sword Healthは、整形疾患を抱える患者を対象としたオンラインリハビリプラットフォームです。タブレットを介したデジタルサービスと、プロフェッショナル人材を掛け合わせたハイブリッドサービスを提供しています。

このプラットフォームでは、患者が専用のウェアラブルセンサーを装着してリハビリを行うことで、デジタルセラピストがリアルタイムにフィードバックしてくれます。さらに、必要に応じてセラピストや医師がオンラインで介入することも可能なので、家にいながら質の高いリハビリを受けることができます。

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センサーによって収集された情報はプラットフォーム上に集約されるので、セラピストは進捗状況や患者の状態をオンラインで確認することができます。

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治療アドヒアランスや患者満足度も非常に高く、治療成績も良好みたいですね。痛みが74%も減少しているというのは、なかなかのインパクト。

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今回のコロナウイルスの影響で、外来患者の病院でのリハビリが行いにくくなっています。そういった部分も追い風となって、今後はリハビリテーションもデジタル化が進んでいきそうですね。

4. AppliedVR:VRを用いた痛み治療

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企業名:AppliedVR
URL:https://appliedvr.io/
設立年・所在地:2015年・ロサンゼルス/アメリカ
直近ラウンド:Seed(2016年3月)
調達金額:N/A(Techstars, UnitedHealthcare Accelerator Powered by Techstars)

AppliedVRは、VRを使って痛みに対するデジタル治療を提供しています。出産時の陣痛から火傷の痛みなどあらゆる痛みを対象としています。実際のVR空間はどのようなものなのか。まずは、動画をどうぞ!

VRを使ったプログラムではエビデンスに基づく認知行動療法が提供され、痛みを自ら管理できるようになることを目指します。同製品の効果を検証した研究では、疼痛強度や痛みに関連するストレスの減少が臨床的に認められています。

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装着にあたって全身を動かす必要はないため、術後すぐの患者さんにも使用可能です。幅広い患者に対応できるというのも、VRの利点ですね。これまでに、200を超える施設や病院で3万人以上の患者さんに使用されています。今後は在宅医療にも出て行くようで。すげぇぞ。

5. Dig Rush video game:弱視のためのデジタル治療

企業名:Amblyotech
URL:https://www.crunchbase.com/organization/amblyotech 
設立年・所在地:2013年・アトランタ/アメリカ
直近ラウンド:M&A by Novartis
調達金額:$602.2k(買収前)

弱視に対する現在の治療は点眼などの薬物療法が主ですが、治療のアドヒアランスや効果の低さが問題となってきました。そんな中で、Amblyotechは両目が一緒に動くように訓練するゲーム/視聴ソフトウェアと3次元メガネによる弱視治療を開発してきました。2020年4月にNovartis社に買収されたようです。

このソフトウェアは3Dメガネを用いてゲームを行うことで、両目が連携して機能するように訓練します。実際に、標準的な治療に比べて子供と成人において視力の改善が報告されています。

今後は、NovartisがUbisoft・McGill Universityと協力してソフトウェア開発を継続し、2020年後半にはPoCとしてヒトを対象とした製品の効果検証実験を予定しています。さらに、弱視だけでなく複視など他の目の障害にも適応できるように発展させていくとのこと。

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こんな感じで、第63回、デジタル治療回の後編でした。
次の第64回でいったんの区切りとする予定です。過去取り上げてきた100社以上のデジタルヘルス事例がまとまっているマガジンも、ぜひ見てみてくださいー!



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