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神戸からのデジタルヘルスレポート #54 (痛みケア)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第54回、痛みを取り上げます!元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Axial Healthcare:疼痛管理プラットフォーム

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企業名:Axial Healthcare, Inc.
URL:https://www.axialhealthcare.com/
設立年・所在地:2012年・ナッシュビル/アメリカ
直近ラウンド:Series C(2020年2月)
調達金額:$41.3m(Sandbox Industries, Oak HC/FTなど)

現在、痛みのケアにはオピオイドを含めた鎮痛薬による薬物療法が選択されることが多くあり、そのためオピオイドの使用は過去10年間で400%増加しています。オピオイドには依存性があり、米国では毎日100人を超える人がオピオイド鎮痛薬の過量投与で命を落とすなど、オピオイドの不適切使用が社会問題となっています。

日本緩和医療学会ニューズレター:オピオイドクライシスを正しく理解する

Axial Healthcareは臨床データを監視・追跡し、痛みの治療に関する解決策を提示してくれるプラットフォーム。オピオイドの過剰使用防止や医療費削減につなげることを目的としています。

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主な機能は以下の通りで、これらを自動で行ってくれます。

・薬の処方のモニタリング
・薬の処方が過剰になるリスクが高い患者の特定
・高リスクの患者に対する治療、アプローチの提示
・患者同士のサポートネットワークの構築
・処方後の経過追跡

患者が薬を過剰に使用する状態になるのを防ぎ、チームやコミュニティによるアプローチなど薬物療法以外の治療方法を提示してくれます。

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米国公衆衛生上の非常事態宣言が宣言されるなど、オピオイドにまつわる問題は2019年以降メディアでも大きく取り上げられてきました。この社会不安が高まる時節、こういうスタートアップにも注目が高まってほしい。

2. Remedee:疼痛管理e-Drug

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企業名:Remedee Labs
URL:https://remedeelabs.com/
設立年・所在地:2016年・グレノーブル/フランス
直近ラウンド:Series A(2019年11月)
調達金額:$12m(Hardware Club, C4 Venturesなど)

次は、オピオイドに代わる新しい鎮痛薬、しかも電子薬を開発したフランスのスタートアップを紹介します。

人間には、ストレスなどの侵害刺激により脳内で産生されるエンドロフィンという鎮痛ホルモンがあります。その鎮痛効果は、モルヒネの6.5倍といわれています。Remedeeは、ミリ波(30~300GHzの電波)を使用することでエンドロフィンの放出を高め、疼痛を緩和する非侵襲的な電子鎮痛薬を開発しました。

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上の写真がRemedeeに組み込まれている小型ミリ波発射モジュールです。ボールペンの芯よりも小さいこの大きさ。これまで病院などにドカンと設置されるような機器だったのが、チップ・ハードウェア技術の進歩でここまで小型化。使い方は、手や腕などの末梢にミリ波を照射するだけなのでかなり簡単です。いつでもどこでも使用できるので、外出先でも迅速に痛みを緩和できます。

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現在は、有効性・安全性を検証するための臨床試験を進めているようです。痛みを薬で抑えるという時代は終わりを迎えそう、リリースが楽しみ!

3. Karuna:VRを用いた痛みリハビリ

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企業名:Karuna Labs
URL:https://karunalabs.com/
設立年・所在地:2016年・サンフランシスコ/アメリカ
直近ラウンド:Seed(2019年9月)
調達金額:$3m(Baseline Ventures, Hustle Fundなど)

VRを使った疼痛対策に取り組むスタートアップも出てきています。それがKaruna。↑のサムネがそのままなんですが、動画もどうぞ!

KarunaはVRテクノロジーを利用したエクササイズだけでなく、関節がどれくらい動いているかという評価もVR空間で行うことができます。対象部位は首・肩や腰の痛みで、肉体労働者の方々が初期的な想定ユーザーの様子。仕組み自体はオフィスワーカーでも使えそう。

エクササイズは、30〜45分のセッションを4~12週間行うという感じで、症状に応じて個別に提供されるようです。体の動きがVR空間でも再現されるので、自分がどのくらい動かせているのか確認することができます。製品の効果検証に関する論文や発表も多くあり、単にユーザーの満足度を図るのではなく研究・論文を通じてエビデンスを積み上げていく姿勢が素敵だなぁと感じます。

現在の提供チャネルは導入済みのクリニック経由がメインですが、今年2020年には自宅でも同様の治療を受けることができる「Karuna Home」をリリース。場所に縛られないテクノロジー利用と薬に頼らない疼痛管理を。

4. XR Haelth:痛みに対するVR行動療法

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企業名:XR Health
URL:https://www.xr.health/
設立年・所在地:2016年・ブルックリン/アメリカ
直近ラウンド:Grant(2020年5月)
調達金額:$15.5m(Israel Innovation Authority)

せっかくVR×疼痛管理のスタートアップを取り上げたので、もう一つ。今度は東海岸・ニューヨークを拠点にしているXR Haelthです。まずは利用動画を。

機能としては、Karunaとかなり近いですね。VRテクノロジーを使った体の動きの評価やエクササイズの提供してくれます。エクササイズも症状に応じて個別に提供されるようです。保険がきけば、最安値は月30ドル負担。

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VR空間を使ったエクササイズは、ゲーム性が高くて楽しいという感情が先行するので、痛みのある部分を動かすことへの抵抗が少なくなるんですよね。だから、痛くて動かすことが怖いっていう人にもすごく有用なんです。やっぱりVRと疼痛管理は親和性高いなぁと感じます。

Karunaとの違いは、医師やセラピストとリモートでコミュニケーションをとることができるため、治療計画や進捗の確認も行うことができるところ。上の動画のタイトルも”VR Telehealth Kit”となっていて、疼痛管理に限らずより広く自社サービスを捉えていることが伺えます。

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XR Haelthは痛みに対する治療だけでなく、メンタルヘルスや脳卒中のリハビリなども行っています。総合的なリモートヘルスケアとして、様々な疾患や問題に対して診察から治療まで提供できるのは一つの強みだと思います。

5. Sana:痛みを抱える人に良質な睡眠をもたらすデバイス

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企業名:Sana Health Inc.
URL:https://www.sana.io/
設立年・所在地:2015年・ラファイエット/アメリカ
直近ラウンド:Convertible Note(2020年1月)
調達金額:$1.8m(SOSV, HAX)

Sanaは、視聴覚刺激を利用して、痛みやストレスに依る睡眠障害を持つ人でも良質な睡眠を撮ることを可能にするデバイスです。Sanaを装着すると、光と音のパルスが放射されユーザーを深いリラックス状態に導きます。睡眠と痛みの相互関係を利用した疼痛管理にも利用可能です。

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さらに、日々の睡眠の質、痛み、気分を記録するアプリもあわせて提供されます。毎日利用することで週次・月次単位での変化を知ることができるという簡単なものですが、最低限の情報でもユーザーの気づき・行動変容につながるのであれば余計なものはいらない、ということなんでしょうね。

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もう既に一般向けに販売は始まっていますが、SanaはFDA承認に向けた臨床試験も実施しています。承認が取れれば治療デバイスとして扱われることになるんでしょうか。結果は、果たして。

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こんな感じで、第54回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)

応援ありがとうございます!