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神戸からのデジタルヘルスレポート#126(医療従事者)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は全15回で昨年2023年(一部2024年含む)に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。

今回は3回目です。「医療従事者」をテーマに取り上げていきます。


1. Kabilah:看護師業務支援

企業名:Alys Pharmaceuticals
URL:https://www.kabilah.com/
設立年・所在地:2024年・スタンフォード(英国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:N/A

Kabilahは、入院患者の看護師の引継ぎ引継ぎについて効率かつシンプルなワークフローを提供しています。医療過誤の80%は患者の引継ぎの際に発生しているそうです。これを防ぐため、従来の紙のレポートでの引継ぎをAI活用したワークフローで改善させていくことが同社の狙いだそうです。

Y Combinatorが出資しているそうで、同社が掲載されています。

Y Combinatorのサイト、LinkedInの記載によると、具体的に以下のようなサービスのようです。

  • 現在の患者に関する関連情報のみを表示できる(オプションでEHRから自動入力)

  • 患者の病歴/入院コースを自動生成しEHRデータに記録・保管

  • 対話型チャットで看護師は数秒以内に患者の病歴に関する最新情報を入手できる

  • 各シフトの終わりに、数回クリックするだけで、退勤する看護師は自動生成された患者引継ぎメモを送信できる

創業者であるUmar氏は、自身ががんサバイバーであり、数か月を入院治療で過ごした経験から、断片的な引継ぎが患者の転帰に及ぼす影響についてよく知っているそうです。そして共同創業者であるSarah氏は、家族に医療従事者がいることから、同様の背景について理解しており、スタンフォードCSの卒業後、本サービスの開発に取り組み始めたそうです。 まだサイト内で具体的なサービス情報は開示されていませんが、80%もの影響があるこの課題を改善できるとインパクトが大きそうです。今後が期待されますね。

2. Fownd Inc.:理学療法士の事務負担削減

企業名:Fownd Inc.
URL:https://www.fownd.care/
設立年・所在地:2023年・ミドルタウン(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Fownd Inc.は、理学療法士(PT)のリハビリセッション中の事務負担軽減を実現するためのAIサービスを開発・提供しています。
自然言語処理を使用してリハビリセッションを文字起こし、セッションの終了時にSOAPノート*を自動生成し、ドキュメント作成を合理化します。また、AI/機械学習テクノロジーを使用して、コンピュータービジョン支援の ROM 測定と機能評価を提供し、それらの値をノートに自動的にアップロードすることも今後実装していく計画だそうです。 このサービスで得られるのはPTの負担軽減に加え、属人的になりがちなリハビリの評価(測定)の標準化も可能になることだそうで、エラー率の減少にも寄与すると期待されています。
+医療看護の分野において、対象者の経過をカルテなどに記録するときの記入方法のひとつ。「S(subjective):主観的情報」「O(objective): 客観的情報」「A(assessment): 評価」「P(plan): 計画(治療)」の4つの項目にそって記載していくもの。

  • 15分以内に自分自身のリハビリビジネスを立ち上げられる(資本もスペースも事業計画も必要なし)

  • 患者がリクエストできるプロフィールを、数回タップするだけで作成でき、ソーシャルチャネルやマーケティングチャネルに接続できる

  • AI主導のワークフローにより文書入力・作成作業が大幅に削減。請求効率を向上させられる

  • 患者とのスケジュール管理、マッチング管理もシンプルで手間いらず

出所:https://www.fownd.care/

同社のビジネスモデルとサービスデモについて、それぞれ以下のサイト内に動画がございます。よろしければどうぞ!

▼ビジネスモデル

▼サービスデモ

3. Linear Health:精神保健専門家の業務支援

企業名:Linear Health
URL:https://linear.health/
設立年・所在地:2024年・オースティン(米国)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Linear Health は、精神保健専門家向けの患者エンゲージメントプラットフォームです。このプラットフォームを利用することで、患者コミュニケーション、臨床評価、データ主導型でのケアを一元管理できるようになります。また、小規模な診療所や組織向けにすぐに使える SaaSソリューションとして使用したり、APIやHL7 インターフェイスを介して他の独自のプラットフォームやEHRなどに統合することもできるそうです。

  • 会話型メッセージング

    • ケアチーム(医療従事者)、請求スタッフ、患者、患者家族といった関係者全員が、1つのチャットでつながることができる

    • キャンセル等の予定の調整の簡素化を実現

    • ケアチームからの応答率の向上を可能とする

    • ケアチームは電話で追いかける、といったスタッフの負担を軽減

  • 測定ベースでのケアの実現

    • 標準化された評価を使用して治療を評価・測定

    • 治療の価値を実証しながら、転帰、臨床的決定、医療提供者と患者のコミュニケーションを強化

    • 患者の転帰の改善(症状の改善42%)

    • 治療効果を実証(治療成功の透明性のある証拠を提供し、信頼構築)

    • コストを最適化し、収益を向上(患者の関与、治療遵守を促進し、入院を減らすことでコストを削減)

    • 患者の行動変革の可能性3.5倍アップ、キャンセル率40%低下

    • より良い臨床上の意思決定(臨床医がデータに基づいた意思決定を行えるようにし、個別化されたケアを提供)

  • 集団健康管理

    • ケアの提供を合理化(統合された患者コミュニケーション システムにより、ケア プロセスを最適化し、管理タスクを軽減し、ワークフローの効率を高める)

    • コホートによる患者のセグメント化、健康格差の減少

    • 積極的な健康管理を促進(自動メンタルヘルス スクリーニング機能を利用して、メンタルヘルスのリスクを早期に検出し、重篤なエピソードを防ぐために迅速に介入)

  • 事務負担の軽減

    • フォームビルダーと電子署名ソリューションを使用して、患者の登録と受付のプロセス、その他の事務処理をデジタル化

    • 業務効率の向上(事務処理の煩雑さと時間を削減し、事務手続きのミスを減らし、ケアに集中)

    • マクロ/テンプレート(スタッフが管理作業に溺れるのを防ぎ、時間を節約し苦情を軽減)

    • データセキュリティの向上(電子署名とフォーム用の高度な暗号化およびコンプライアンス ツールを使用して、機密の患者情報を保護)

4. EvidenceHunt:研究アシスタント

企業名:EvidenceHunt
URL:https://evidencehunt.com/
設立年・所在地:2023年・アムステルダム
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

EvidenceHuntは、医療エビデンスの収集、分析、活用のプロセスを合理化するAI搭載のリサーチプラットフォームを開発し提供しています。このプラットフォームは、研究をシンプルで効果的かつ信頼性の高いものにするために開発されたもので、一流大学、病院、製薬会社などの医療の専門家に利用されているそうです。
2分程度のものですが、デモ動画があります。無料版とPro版(有料版)があるようですが、利用方法の概観は以下をご参照いただければ幸いです。

医師は従来、GoogleやPubMed を介して医療情報を見つけるのに多くの時間を費やす傾向があります。AIアプリケーション EvidenceHunt は、このために大幅な時間を節約することができるもので、AIと独自のトレーニングデータおよびモデルを組み合わせたアルゴリズムを使用し、これまでに PubMedで公開されたすべての医学論文を検索できるようになっています。 当初はRCT Alertという名称だったそうですが、今のEvidensHuntに変わったそうで。以下の記事では開発者の一人である精神科医Christiaan Vinkers氏が当該製品を開発した背景について述べています。(オランダ語の記事なので自動翻訳等でご覧ください。)

5. MedVantage:インドの認定医療EdTech

企業名:MedVantage
URL:https://www.medvantage.co.in/
設立年・所在地:2023年・ノイダ(インド)
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

MedVantageはインド最大の認定医療EdTech企業です。医療専門家向けに、学習・習得のためのオンライン上の医療フェローシップおよび認定コースを提供しています。
具体的にはMBBS(医学学位)後の医師の卵が対象となっており、専門的なトレーニングプログラムやスキル強化のための知識、学術的なコラボレーションの機会、などが提供されます。これによって、医師が国際的に認定されたコースで継続的に学習できるようになります。

サイト上をご覧いただくと、以下の画像のように「糖尿病フェローシップ」や「救命救急フェローシップ」、「小児科フェローシップ」等様々なフェローシップがラインナップされていることがわかります。

出所:https://www.medvantage.co.in/

同社のブログでは、オンラインでの医療フェローシップおよび認定コースの必要性について触れています。医師は臨床ローテーションや研究活動等常に多忙でありながら、常に新しい医学情報(医学の発展情報)を追いかけ学ぶ必要があること、世界中のどこからでもコースワークに自由にアクセスできることで忙しい生活に教育をシームレスに組み込むことができるようになること、が述べられています。場所等での格差なく、世界中の医師が学べる機会を得られるというのはとても大きいですね。

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