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神戸からのデジタルヘルスレポート #118(デバイス・AI・医療機器①)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今年は年末まで全20回で、昨年2022年に創業したデジタルヘルススタートアップを取り上げていきます。毎週木曜日朝配信予定です!

今回は全20回のうち15回目、テーマは「デバイス・AI・医療機器①」を取り上げていきます。


1. Wellcore:家庭用ホルモン最適化プログラム

企業名:Wellcore
URL:https://www.teamwellcore.com/
設立年・所在地:2022年・オースティン(米国)
直近ラウンド:Debt Finacing
調達金額:$350K

wellcoreは、侵襲性の低い在宅(家庭用)ホルモン療法サービスを提供しています。
同社サイト内にあるように、ホルモンバランス低下が健康に影響しており、事実、男性の場合、テストステロンは加齢とともに減少することが明らかになっているそうです。臓器の機能、代謝、体温、空腹、喉の渇き、有性生殖、モチベーション、気分、認知等、身体に影響を与えるホルモンを最適化しよう、というのが本サービスの目的です。

<サービス内容>
同社のデバイスを使用して血液採取、およびホルモン注射管理が可能となっております。血液採取した診断結果はビデオチャットで臨床医よりレビューを受けることができるようになっており、どのようなホルモン療法が最適なのか、アドバイスいただけます。
そして、3か月分のホルモン治療と、実質的に痛みのない自己投与型の自動注射装置が含まれたキットが届き、在宅でホルモン療法および管理を行うことができるようになります。8~10週間後、その後4~6月ごとに継続して臨床チームによるモニタリングも行われるため、最適なホルモンバランスとするための管理方法についても知ることができるようになります。
以下、それぞれのフェーズについて動画で説明されています。よろしければ、どうぞ。

尚、2022年には男性用、2023年には女性用がリリースされています。

▼男性用ホルモン補充療法_2022年12月リリース

▼女性用ホルモン補充療法(HRT)_2023年6月

「40歳以上の男性の40%が低テストステロンに苦しんでいます」として、「父の日」のプレゼントに同社の『在宅ホルモン検査キット』を推奨するキャンペーンまであったそうです。粋ですね。

2. PONS:AI搭載モバイル超音波

企業名:PONS
URL:https://www.ponstech.co/
設立年・所在地:2022年・ジャージー・シティ(米国)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:$530K

PONSは、一般消費者向け(toC)のモバイル超音波システム(ポイントオブケア超音波 (Point of Care Ultrasound: POCUS))を開発しています。AIを活用した同社のモバイル超音波システムは、超音波に関するトレーニングを受けていなくても、超音波による画像を撮影、管理することができます。AIを活用したナビゲーションと特許取得済みの画像強調機能により、健康状態のリスク評価を自律的に実行することが可能であり、また、結果を医師に報告することができます。医療機関へ行かずとも、遠隔で画像診断が可能となります。

以下画像は、同社サイト内にある画像診断の変遷イメージです。よりコンパクトで手軽、どこでも可能なものへと発展していくイメージが伝わります。

出所:https://www.ponstech.co/

以下の記事では、放射線科のハイテク機器に限定されるものではなく、手のひらで高解像度のリアルタイム画像処理にアクセスできるようになる、と述べています。 少々逸れますが、記事内で「人工知能 (AI) を活用した医療の未来へのジェット コースターに乗っているので、シートベルトを締めてしっかりと踏ん張ってください。」との表現があり、秀逸だなと思いました。

同社は、2023 Best Tech Startups in Jersey City(2023年のニュージャージー州ジャージーシティの最高のテクノロジー関連スタートアップ)に選出されています。

同社のTwitterでは、上記記事含め、AI搭載の画像診断システムについての同社の活動やサービスの紹介がなされています。よろしければ、ご覧ください。

3. Symetrify:筋骨格系機能不全のためのデジタルヘルス

企業名:Symetrify
URL:https://www.skelekinetics.com/
設立年・所在地:2022年・テルアビブ(イスラエル)
直近ラウンド:PreSeed
調達金額:$1M

Symetrifyは、慢性腰痛 (LBP)に関する脊椎運動機能障害を評価、治療、予防するための神経機械的ウェアラブルデバイスを開発、提供している企業です。同社のデバイスは、神経筋骨格系の機能障害に対する非侵襲性のソリューションであり、痛みや障害の症状に対し、人間の骨格の構造的な動きを改善させ、患者が痛みを伴う治療や療法を受けることなく治療を受けられるようにします。

<ペイン、対象疾患>
慢性腰痛 (LBP) 約70~80% の人が生涯に少なくとも 1回は腰痛症状を経験するといわれています。事実、米国の成人の約4分の1が過去3か月以内にLBPを経験したと報告しています。このような統計は、臨床ガイドラインに準拠した治療を通じてLBP患者の生活の質を改善する必要性があることを示しています。臨床ガイドラインでは、運動療法、時間療法、および理学療法やカイロプラクティックケアなどの非侵襲的療法を第一選択として推奨し、理学療法やカイロプラクティックケアの使用を控えています。 しかし、そのうちの腰痛に対するオピオイドの処方が増加しており、近年、これが問題となっております オピオイド使用の合併症には依存症や過剰摂取に関連した死亡率が含まれており、これらは処方率と並行して上昇。1日あたり46人、または年間ほぼ17,000人が、慢性鎮痛性オピオイド薬の過剰摂取により死亡しています。

出所:https://www.skelekinetics.com/the-pain

<サービス内容>
同社では、腰部脊椎構造への正しい負荷を回復することで機能的な根本原因をターゲットにし、痛みと筋骨格変性を軽減し、長期的な予防を実現するL-PACTテクノロジー を用いたデバイスで、正しい姿勢の動的バランスを達成させます。ウェアラブル デバイスとして、歩行セッション中に正しい姿勢にガイドすることで、痛み止め(オピオイドのような)を服用せずに、腰痛改善を図ります。(参考

4. Kardi AI:在宅用心臓モニタリングシステム

企業名:Kardi AI
URL:https://www.kardi-ai.com/
設立年・所在地:2022年・オロモウツ(チェコ)
直近ラウンド:Pre-Seed
調達金額:€350K

KARDI AIは、いつでもどこでも心拍リズムをモニタリングできる、AIを活用した心臓モニタリングデバイスシステムを開発、提供している企業です。

<サービス内容>

  • 医師の処方により、本デバイスを処方いただく

  • チェストベルトで装着し、心拍センサーをオン

  • アプリをダウンロードし、接続。いつでも心拍を測定し、心臓の状態をモニタリングできる

  • 医師は、デバイスからデータを随時取得し、次回の診察時に測定結果の正確なデータを入手

出所:https://www.kardi-ai.com/mykardi

本サービスは、心臓専門医のトーマス・スカラ氏と連続起業家であるスカラ氏が、大型の装置を使って年1回行う心電図検査に不便さを感じていることを話したことがきっかけに誕生したそうです。現在、自宅で行える心電図検査でさえ、大型の装置を使って行う必要があり、受診の予約と医療機関への返却、医師の診断を待つ、といった負担が生じるそうです。より手軽にモニタリングでき、患者の状態を医師と接続できるほうが理想的ではないか、と考え、本サービスを開発するに至ったそうです。
同社は、2022年5月に€35万ものPreSeedラウンドを終了しています。よろしければ以下記事もご覧ください。

5. Smart MS3:筋肉活動のリアルタイムデータ追跡

企業名:Smart MS3
URL:https://www.smartms3.com/
設立年・所在地:2022年・ロビンズビル(米国)
直近ラウンド:Seed
調達金額:$120K

Smart MS3は、肩、膝、背中、首、およびその他の繰り返しの整形外科的損傷の周囲に装着することで、筋肉の活動レベルを監視できるデバイスを開発しています。このデバイスを用いて、筋肉の回復プロセスをパーソナライズ化し、理学療法士(PT)より患者の回復に役立つトレーニングを運動プログラムとして提供しています。モニタリングするだけでなく、理学療法士と接続することで、運動器の回復につなげることができるサービスです。様々な身体に関する情報を測定するセンサーデバイスは開発されていますが、理学療法の世界にはまだまだ存在していません。その意味で、本サービスは画期的といえるかもしれません。診断だけでなく、リハビリという分野でも遠隔でモニタリングできる世界が近づいているようです。

<サービス内容>

  1. 目的の筋肉箇所(整形外科的損傷の周囲等)にデバイスを装着 小型のウェアラブルになっており、Bluetooth接続、最小の筋肉群も測定することができる

  2. アプリをダウンロードし、記録ボタンをスタート

  3. 筋肉がどのように機能しているか測定が開始され、理学療法士にデータが連携される

  4. 理学療法士が生体認証フィードバックを参照しながら、実施するというトレーニングを提案 ユーザーが実施したトレーニングの状況をモニタリングし、状態をみながらガイドしていく

※リハビリが必要な患者前提で上記記載していますが、自身の筋肉状態をモニタリングしながらトレーニングしたいアスリートにも最適なサービスです。

サービス内容、利用方法について動画もございます。よろしければどうぞ。

本サービスの開発のきっかけは、創業者ランダワ氏の祖母が脳卒中で左半身麻痺になったこと、それを最先端テクノロジーで可能な限り最高の治療を受けられないか、と考えたことだそうです。実際、脳卒中から2年が経った今も作業療法を受けている祖母に対しても、本サービスが役立つか試してみたりしているそうです。


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