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神戸からのデジタルヘルスレポート #27 (Jessie/Sopris/HemoLink/Moving Analytics/InsightRX)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第27回です!
元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)

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1. Jessie:Femtech/女性の健康支援デジタルクリニック

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企業名:Jessie
URL:https://www.hellojessie.com/
設立年・所在地:2018年・ウェストハリウッド
直近ラウンド:Pre-Seed(2018年7月)
調達金額:$120k(Techstarts、The Cedars-Sinai Accelerator)

「Jessie」は、女性向けの健康問題の解決を支援するためのオンライン上のデジタルクリニックです。栄養や肌、性、心など女性に関する様々な問題に対して、処方箋の入手、開業医とのビデオチャットのスケジュール、自宅での検査器具の注文など、様々なヘルスケアニーズに対応して必要なケアを提供してくれます。
また、いくつかの簡単な質問に答えることで、あなたにぴったりのデジタルヘルスサービスを提案してくれます。

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創業者2人とも女性、"femtech"を強く打ち出しています。彼女たちは書いたブログの中で、

・家庭医療支出の80%は女性によるものであるにも関わらず、その医療ニーズは十分に満たされていない
・女性は歴史的に臨床研究から除外されてきた
・ヘルスケアの研究開発資金のわずか4%しか女性の健康製品とサービスに割り当てられていない

として、これからの時代には"女性"に焦点をあてたサービスやテクノロジー、つまり "femtech" が必要であると述べています。

これまでこのマガジンでも、多くのfemtechサービスを紹介してきました。これからどんどん増えていくといいなぁと願いつつ。

2. Sopris:臨床業務のデジタルアシスタント

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企業名:Sopris Health
URL:https://www.soprishealth.com/
設立年・所在地:2017年・デンバー
直近ラウンド:Venture Round(2019年3月)
調達金額:$3.4m(Access Venture Capital、Dreamit Venturesなど)

Soprisは、医療従事者を対象とした、日常の臨床業務を補佐するためのデジタルアプリケーションです。独自AIを活用して、カルテ記入の基本となるSOAP(Subjective, Objective, Assessment, Plan:問題志向型記録の叙述的経過記録方式)の形で患者の状態や受診理由などを聞き出し、要約してくれます。チャットスタイルで診察の前に把握しておくべき情報を提供してくれます。

Soprisのサービスを利用することで、医療従事者はデータの記入・入力などの臨床業務を効率化することができ、患者との問診や診察の時間をより本質的なコミュニケーションに時間を割くことにつながります。実際の導入先では事務作業の80%の時間が削減できたとの実績も。

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同社は、医師として実務経験のある方が医療部門のチーフとして勤務しています。実際に臨床業務をこなすうえで、感じたものや思いが同社のプロダクトに反映されているんでしょう。

オフィスワークの現場ではどんどん自動化・効率化が進んでいます。
医療の現場でもどんどん広がっていくといいなぁと願いつつ。

3. HemoLink:家庭でも簡単にできる安全な採血デバイス

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企業名:Tasso, Inc.
URL:https://www.tassoinc.com/
設立年・所在地:2011年・シアトル
直近ラウンド:Series A(2019年3月)
調達金額:$18.6m(Vertical Venture Partners、Cedar Sinai Medical Centerなど)

Tassoが開発したHemoLinkは、家庭でも安全かつ簡単に血液を自己収集することができるデバイスです。↑の写真にあるようなパッチ型のデバイスを腕に装着し、ボタンを1回押すだけで自動的に採血を行ってくれます。採血が完了するとそのままデバイスの一部を取り出して解析してくれるところに遅れる形に。

今までの採血というと、クリニックに行かないといけない、注射に対する恐怖感、採血後のfeedbackの不足などの理由から、対象者から敬遠されていたと思います。同製品は、自宅に郵送でキットが届き、操作・つけ方ガイドが充実しているため、安心して装着することが出来、痛みなしに採血をしてくれます。採血したサンプルは、郵送で送り、そのフィードバックを受け取ることができます。ぜんぜん違うUX。下がBefore/After比較ですが、とてもいい。

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Websiteには”User Experience Matters”の言葉。まさにそのとおり。
血液データは、様々な体の状態を教えてくれます。その情報をより簡単にかつ痛みも少なく、家にいながら知ることが出来るということはすばらしいことだなと。何回か前に採血自動化ロボットを紹介しましたが、個人的にはこちらのほうが採血嫌いの私としてはありがたいな。。

4. Moving Analytics:心疾患患者の退院後管理プラットフォーム

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企業名:Moving Analytics
URL:https://www.movinganalytics.com/
設立年・所在地:2013年・ロサンゼルス
直近ラウンド:Seed(2019年4月)
調達金額:$2.5m(OCA Ventures、HealthX Ventures、Stanford Universityなど)

Moving Analyticsは、心疾患患者の在宅での急性期後ケア管理プログラムの実施を支援するプラットフォームです。どんなプロダクトなのか、ひとまず同社が取り上げられたニュースを見てみましょう。

アプリやウェアラブルやワークブックなどを用いて患者の理想的な運動を誘発し、リマインダーの提示や症状管理をしていくと。
(やっぱり血圧計はオムロンか...)

最初は患者と対面で退院後のプランを作り、各種機器を患者に渡しつつ、それ以降はデジタル上で医療者-患者のコミュニケーションを行っていく。もし血圧に大きな変動があったり体重が変わったりしたら医療者から介入をし、逆に理想的な方向に動いていればポジティブなフィードバックを行うことで、継続を促します。

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実際に、同製品を使用した患者の78%は機能が上昇し、80.5%はアドヒアランスを保つことが出来たと報告されています。患者が自ら在宅で課題に取り組むため、リハビリなどの通院もする必要がなく、医療従事者側・患者側の負担も軽減されますね。めっちゃいいやん。

日本では、遠隔で患者を診ていくという形がまだ受け入れられていないように思います。まずは、遠隔でも安全に機能回復をはかれるというエビデンスが必要、ということでしょうか。

5. InsightRX:ポイントオブケア・処方提案

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企業名:InsightRX, Inc.
URL:https://insight-rx.com/
設立年・所在地:2015年・サンフランシスコ
直近ラウンド:Series A(2019年9月)
調達金額:$12.8m(HealthX Ventures、Greatpoint Venturesなど)

InsightRXは、臨床医が処方周りの意思決定を支援するクラウドベースおプラットフォームです。いくつものプロダクトをかけ合わせで提供していますが、どれも電カルっぽいUIで、スタンドアローンでもEHR連携でも稼働します。

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各患者への薬剤投与量やレジメンの管理、パフォーマンスの測定・評価、レポーティングなども一貫して行います。さらには観察者がメモを残して臨床チームに共有することでチーム医療も推進。もう一歩進んで、個々の患者のデータデータを統合してAIの学習にかけて全体の予測を改善するところまで。

いま病院で行われているようなレジメン選択・監査の作業がぐっと楽になりそうだなと感じました。けっこう大きい病院でもExcelでレジメン管理をしているところもあると聞きます。既存のレジメン管理ソフトもありますが、InsightRXはそこから何歩も前に進んでいる感じがします。

InsightRXのCEOは薬理学バックグラウンド。専門家の目線からビッグデータを活用して、薬剤処方を効率的に正確に行うための、プラットフォームを作成するだけでなく、ユーザーのことまで考え抜かれているところが素晴らしい...!!

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こんな感じで、第27回でした。
noteマガジンにもしてみたので、もしよかったらフォローしてください:-)

応援ありがとうございます!