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中国・天津 現地タクシー運転手に風俗店として連れていってもらった店が超普通のマッサージ店だった話

ネタに満ちた青島を後にした僕が次に向かったのは天津であった。

日本では天津甘栗、天津飯を通じてその名を轟かせている天津。

しかし実際の天津にこれらの品目は存在しない。

天津甘栗と天津飯のない天津に何があるのか。

中国古来の街並みと多くの屋台が特徴の古文化街。

イタリア式の美しい建築が特徴の意风区。

何も無いと思われがちな天津でも、この程度の情報は軽くネットを調べればすぐに現れる。

しかし僕が求めているのは実際に訪れたからこそ得られる情報と独自のストーリーだ。

僕は天津に訪れるにあたってある興味深いブログを発見していた。

このブログは中国で数多くの風俗街を発見してきた日本人が当時の様子を綴ったものである。


彼のブログはこれまで知り得なかった貴重な情報で溢れていた。


・中国語で風俗街は「红灯区」。

・中国の大都市は大抵「红灯区」が存在する。

・ 最初に検索エンジンや微博などで「都市名 +红灯区」で検索する。

・ 出てきた情報を通じておおよその場所を把握する。

・把握した場所付近で現地タクシーを捕まえて、実際の红灯区に連れていってもらう。

これらの情報は「キャッチに騙されないようにするため風俗情報は必ずネットで調べる」という僕の考えとは一線を画す斬新な方法であった。

現地の情報に一番詳しいのは間違いなく現地人だ。

特に仕事柄多くの場所に精通しているタクシー運転手は男たちの精通ができる場所にも精通しているに違いない。

安全なネット環境に依存しきっていた僕はこんな簡単な理屈を見逃していた。

彼のブログに直接天津に関する記述は無かったものも、中国直轄市の一つである天津にもそのような街がある可能性は高い。

まだ見ぬ新情報に僕の胸は高鳴った。

僕はすぐさまいくつかの検索エンジンで「天津 红灯区」と調べた。

すると中国版twitterの微博にこんな投稿があった。



この投稿によると天津南大付近に「红灯区」 があるらしい。

他にも「红灯区」に関する投稿はいくつかあったが、場所を明記しているのはこの投稿だけだった。

人から聞いた噂と微博の情報がどこまで信頼できるかは定かではないが、今回は「現地タクシーに聞く」という必殺技がある。

タクシーで行ける範囲のざっくりとした場所さえ分かれば良い。

僕は「天津南大付近」というすがる藁にもなれないような情報にすがり、大学が集中するエリアに足を運んだ。

駅前には駅から寮に向かう学生たちを待つタクシー運転手たちがたむろしていた。

僕は彼らなら何か情報を持っているだろうと踏んで声をかけた。


僕 「红灯区に行きたい」

運転手 「そんな場所は知らない。」

僕 「红灯区に行きたい (ガチ発音)」

運転手 「そんな場所は無い。お前はどこの人 間だ?」

僕 「北京から来た留学生だ」

運転手 「じゃあ北京まで行けば良いのか?」

といった流れで僕は情報を聞き出せないどころか、危うく北京に連れていかれそうになってしまった。

やはりあの情報はデマだったのか。

僕は思わぬ反応に大きく落胆した。

しかし次いつ天津に来れるのかは分からない。

僕が天津に来た足跡を残すうえでも何とかして红灯区を見つけ出したい。

僕は再び駅から大通りのほうに向かってタクシーを探し始めた。

数台のタクシーと辛い待ち時間が通りすぎた後、目の前に一台のタクシーが止まった。

中にいたのは若い運転手だった。


僕 「红灯区に行きたい」

運転手 「とりあえず乗れ(合図)」

(言われるがままにタクシーに乗り込む)

運転手 「予算はいくらだ?」

僕 「100元~200元」

一連のやり取りを終えた後、タクシーは走り始めた。

「マジであるのか」

僕は自分の心拍数が急に上がっているのを感じた。

僕は自らの高ぶりを抑えるために、必死に平静を装ってドライバーとの会話を試みた。


彼によると数年前までは街の至る所に風俗街があったのだが、今年の中国建国70周年式典に先駆けて大規模な摘発が行われ、現在ではだいぶ数を減らしてしまったとのことであった。

そうした裏事情会話に花を咲かせていると、タクシーは目的地らしき場所に到着した。


!?

僕はてっきり「红灯区」だから赤いライトに照らされた店を想像していたのだが、この店には赤どころかライトすらない。

僕はドライバーに確認をしたが、彼は「大丈夫だ」の一点張りでその場を後にしてしまった。

疑念を感じた僕はこの建物が何かの店なのか確認するために地図アプリを開いた。

地図アプリには「○○○会館」と書かれていた。

少なくとも何かの店であることは間違いない。

こうして僕が店の前で躊躇していると、暗がりの中から1人の男が現れた。

男 「マッサージか? 」


海外でいきなり話しかけてくる奴についていくのはご法度であるが、本当に危険な場所は地図アプリには出てこないはずなので、僕はこの鉄則を破り、彼についていくことにした。

「電灯が壊れているんだ」そう語る彼についてエレベーターに乗った先には金をモチーフした豪華で明るい受付と紳士服を来た数人の従業員がいた。

彼らは僕の姿を見るなり、すぐさま個室へ案内しコースの説明を始めた。

コースの違いはよく分からなかったが、一番安いコースにして損をするのは嫌だったので財布との兼ね合いの結果、2番目に高いコースを選択した。

僕はこれから何が始まるのかというワクワク感とどこかで見たことのある展開に対する若干の疑念に挟まれていた。



しばらくすると正統派マッサージ師にふさわしい格好をした女性が現れた。

僕の中の疑念が少しずつワクワクを飲み込もうとしていた。

彼女は無言なのが嫌なのか部屋に入るとすぐに映画を観るように促してきた。

僕は仕方なくリモコンを手に取り、適当に最初に表示された映画を観ることにした。

その映画はコメディ映画だった。

僕のワクワク感は疑念、そしてある種の確信へと変わった。


笑いの起きる気配の無いコメディ映画と筋肉をほぐす気配の無いマッサージが空間を支配した。

僕は「必ず最後に何かある 必ず最後に何かある」と自分に何度も言い聞かせ、必死にワクワク感を保とうとした。

しかしそんな僕の願いも虚しく彼女は所定の時間を終えると、そそくさと部屋を離れていった。

終わった。

僕は現地タクシーを頼ってまでこんな結果しか得られなかったという事実を受け入れられず、しばらくの間部屋で伏していた。

時刻は夜中の2時を回っていた。

永遠にこの部屋にいれるはずもなく、僕は会計を済まし店を出た。

冷たい北風が吹き荒れていた夜だった。

僕は最後の活力を振り絞りシェアサイクルに腰を掛けた。







































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